北ミサイル開発は中露のおかげ それなのに批判する習、プーチン両氏は出会い系バーで「貧困調査」と同じ無理スジだ

野口裕之の軍事情勢
7月4日、モスクワの大統領府で中国の習近平国家主席(左)との会談を終え共同発表に臨むロシアのプーチン大統領(ロイター)

 米国のドナルド・トランプ大統領は5日、ツイッターで《第1四半期の中国と北朝鮮の貿易は4割近く伸びた。中国がわれわれに協力するって言っても、『こんなもの』か。でも『やるだけやって』みなきゃならなかったから!》とコメントした。そうです。核・ミサイル開発に猛進する北説得を米国に要求された中国のヤル気とは『こんなもの』なのです。

(※7月10日にアップした記事を再掲載しています)

 そのトランプ大統領の「暴言」や「振る舞い」が民主党好きの大手メディアの槍玉にあがっているが、真に狡猾な独裁者ならば「暴言」など吐かず、「振る舞い」も“紳士的”だ。けれども、善人ヅラが度を超すと、不愉快を突き抜けて愉快へと至る。訪露中だった習近平・国家主席とウラジミール・プーチン大統領の中露首脳会談に際して発出された共同声明(4日)など、もはや人気お笑い芸人級の芸域に達していた。

 共同声明は、北朝鮮の大陸間弾道ミサイル《ICBM=火星14型》の発射を受け、「深刻な懸念」であり「容認できない」と訴えていた。核・通常兵器をはじめ経済・エネルギー支援を続けてきた中露両国が言っても「???」、まるで説得力を持たない。プーチン大統領は「『力の支配を押しつけ』る限り、『北朝鮮のような問題』が起きる」と公言するが、プーチン大統領こそロシア国民に『力の支配を押しつけ』ている。

 そもそも『北朝鮮のような問題』が起きたのは、ロシアにも大きな責任がある。後述するが、火星14型だけ取り上げても、ロシアのミサイル技術満載なのだ。中国の劉結一・国連大使にしても3日、国連本部における記者会見で「『緊張状態』が高まり続ければ、北朝鮮は遅かれ早かれ『制御不能』になる」と懸念を示した。しかし、『緊張状態』を高め、北朝鮮を『制御不能』へと導いた責任の一端は中国にある。

 安倍晋三首相は「『ドリルの刃』となってあらゆる岩盤規制を打ち破っていく」と決意を語ったが、ロシアの独裁政権や中国共産党のツラの皮を前にしては、『ドリルの刃』など全く役に立たない。トランプ大統領も『やるだけやって』みて、中露の「品の悪さ」を感じ始めていることだろう。

 米国防情報・弾道ミサイル分析委員会が浮き彫りにした中露の品性

 中露の「品の悪さ」は、最新の米国防情報・弾道ミサイル分析委員会(DIBMAC)の報告書《弾道・巡航ミサイルの脅威》の中にも認める。報告書は米空軍の国家航空宇宙情報センター(NASIC)が作成、米国防総省の国防情報局(DIA)など幾つもの情報機関の検証を受け、DIBMACが内容を確定して米議会に上申した。DIBMACの「品位」分析力には定評がある。

 DIBMACの報告書によれば、北朝鮮は計13種類の弾道ミサイルを保有する。13種類中、射程5500キロ以上のICBMはテポドン2号、KN-08(火星13型)に加え、4日に発射したKN-14(火星14型)の3種類。

 日米韓の専門家は、DIBMACの報告書でも《未詳》とされる火星14型の搭載可能な弾頭数の分析を急いでいる。火星14型は設計過程で、ロシアの多弾頭ミサイルをコピーした可能性が高い。火星14型の原形は、ソ連が1978年に実戦配備した潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)のR-29R。R-29Rの弾頭部には多弾頭が詰まり、一部専門家は火星14型にも多弾頭を載せられるスペースがあると見る。

 また、火星14型の弾頭部は、DIBMACの報告書で《単弾頭》と記載される火星13型に比べ、直径が長く先が太いため、搭載スペースも容量が大きめ。一部専門家の間に、火星14型を多弾頭方式と観測する傍証の一つが、この搭載スペースの差だ。 

 ただ、小欄が《多弾頭》と表記している点には理由がある。

 本来、米国・ロシア・中国・フランス・英国の5大核保有国(国連常任理事国)の間で多弾頭といえばMIRV(マーヴ=個別誘導複数目標弾頭)を意味する。MIRVは、1つの弾道ミサイルに複数の弾頭(多くは核弾頭)を装備し、おのおの違う目標に攻撃ができる弾道ミサイルの弾頭搭載方式だ。 

 だが、MIRVは高度な開発技術を要求され、実戦段階のMIRVを完備できているのは5大核保有国+αに限定される。従って、北朝鮮の火星14型が有する「多弾頭」とはMIRVではなく、複数の弾頭が一つの標的を一斉に攻撃する「多弾頭」だとの多数説に、筆者は賛同している。そうだとしても、「火星14型多弾頭」の迎撃は、単弾頭の火星13型より格段に困難になる。ソ連→ロシアは北朝鮮の国際法違反に手を貸したのである。

 ロシア国防省は4日、「独自の防衛システムで(火星14型)ミサイルを捕捉したが、国内に何の『被害』もなかった」と発表した。が、自らが育て上げた北朝鮮の核・ミサイル技術で『被害』を被っても自業自得ではないのか。

 ソ連は1965年、北朝鮮との間で原子力研究協定を締結し、発電容量2メガワット級の実験用原子炉1基を北に提供した。北朝鮮は1974年、ソ連製原子炉の8メガワット級への拡充に成功。1985年には、両国の間で1500メガワットの高出力原子力発電所建設協定が結ばれた。

 北朝鮮は金日成総合大学と金策工業大学に原子力工学部を設け、相当数にのぼる留学生をソ連に派遣し、核科学者を育て上げた。ソ連崩壊(1991年末)に伴う独立直後のウクライナに所在した核融合研究所で、数百人が研修を受けていたとの関係者証言もある。かくして現在でも、北朝鮮内の核開発指導部は、ソ連やウクライナへの留学組で占められる。

 ソ連崩壊で失業した軍や研究機関の核科学者・技術者も高い報酬・待遇でリクルートされ、北朝鮮に大挙(一説には200人規模)して押し寄せた。

 トランプ大統領がつぶやいた中国への不満に隠された対北攻撃への決意

 では、米国が北朝鮮への説得を要求している中国はどうか。

 北朝鮮がIAEA(国際原子力機関)の査察を拒否し→プルトニウム抽出につながる燃料棒取り出しを強行し→NPT(核兵器不拡散条約)脱退を一方的に宣言した第一次朝鮮半島危機(1993~94年)。当時、クリントン政権で米国務次官補を務めたロード・ウィンストン氏は1994年5月、米上院外交委員会アジア・太平洋小委員会で断言している。

 「もし中国の支援がなかったら、北朝鮮の核開発は今よりも遅れていただろう」

 実のところ、米トランプ政権も、説得が間違いなく『こんなもの』(トランプ大統領のツイート)で終わる確信を抱いていた。『でも、やるだけやってみなきゃならなかった』(同)のにはワケがある。小欄で過去何度も繰り返してきたが、絶対に核・ミサイル開発を放棄しない北朝鮮に、最後の最後まで放棄するよう努力してきた軌跡=証拠が米トランプ政権には必要なのだ。努力を積み上げなければ、対北攻撃には踏み切れぬからだ。

 ソ連→ロシア同様、中国の対北援助の実例も、列挙するのに苦労しない。例えば-

 火星13型の発射台(TEL)車両が、中国国防省系国有企業・中国航天科工集団の子会社・湖北三江航天万山特殊車両有限公司が開発したWS51200に似過ぎており、今では「中国製」説が定着している。

 米国議会調査局がまとめた報告書《米国にとっての北朝鮮弾道ミサイルの脅威》によると、テポドン2号の一段目の推進体が中国の中距離弾道ミサイルのCSS-2(東風3号)やCSS-3(東風4号)に酷似する。

 西側の専門家の間では、北朝鮮の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の北極星-1は、中国のSLBM巨浪1(JL1)と「ウリ二つ以上の関係」だと考えられている。

 米国の調査で、中朝国境の最大都市・遼寧省丹東市に本拠を構える丹東鴻祥実業発展有限公司が核・ミサイル開発に必要な酸化アルミニウムなど4種類の金属を北朝鮮に輸出していた事実も発覚した。

 中国の対北技術支援はモノだけでなく当然、ヒトにも及ぶ。特に1990年代中盤以降、北朝鮮のミサイル関係者200人が訪中。中朝科学技術交流協定も締結された。

 北朝鮮の核・ミサイル開発のお手伝いをしてきた中国の習国家主席やロシアのプーチン大統領が、北ミサイルは「深刻な懸念」であり「容認できない」と無理なく、無理スジの“論理”を繰り広げる不思議な世界。はて? どこかで見たような…。

 「女性の貧困について、実地の視察調査の意味合いがあった」

 そういえば、出会い系バーに通っていた理由に関して、無理なく、無理スジの“論理”を繰り広げる不思議な文部科学省事務次官経験者がいた。