張本勲さんも〝参戦〟プロ野球の試合は誰のものか? 疑問を掘り起こした青木宣親外野手の投手起用

スポーツ異聞

 米大リーグ、アストロズの青木宣親外野手(のりちか、35)が6月30日、米国テキサス州ヒューストンのミニッツ・メイドパークで開催されたヤンキース戦で、メジャー初登板を果たしたことが、物議をかもしている。“快挙”と報じられる一方で、一部評論家らからは「草野球じゃないんだから」などと批判が出ている。プロ野球の“興行”としてのあり方が問われている。

 青木がグラブを手にマウンドに上がったのはヤンキース戦の九回。4―10と大きくリードを許した場面で、6番手の投手として登板した。いわば、敗戦処理の役割だ。

 宮崎・日向高時代は投手としてプレーした青木だが、早大からは外野手に専念。プロ野球ヤクルト時代を含めても投手経験はなく、メジャーを舞台にいきなりの“大役”だった。

 さすがに“急造”の投手は難しい。最初はストライクが入らない。2者連続で四球を与えてしまい、9番カーターに左中間への適時二塁打を浴びた。続く打者には犠飛を打たれ、2点目。さらには内野ゴロの間に3点目を失った。そんな中でも見せ場をつくった。2死走者なしで強打者ジャッジを迎えた場面。126キロの球で空振りさせると、中飛に仕留めた。

 もともと投手だった青木は、投手にも興味があったようだ。元ヤクルト関係者は「青木は研究熱心で、投手による練習にも参加し、投げ方を学んでいた」と証言する。

 大リーグでは大量リードされている場面で、野手を投手起用するケースを珍しいことではなく、日本人野手では2015年10月にイチロー外野手(マーリンズ)が登板している。背景には「肩は消耗品」という考え方が根強い米国では、球数はきっちりと管理されており、投手の無駄遣いはしない。 

 ところが、“物言い”をつけたのは野球評論家で、通算3085安打のプロ野球記録を持つ張本勲氏(77)だ。7月2日に放映されたTBS系の「サンデーモーニング」で「青木を起用した監督、青木にも喝。草野球じゃない。アメリカ野球にもがっかりした。こんな野球をやっちゃ駄目だね」と語った。

 司会の関口宏氏から「捨て試合でしょ」と指摘されたが、張本氏は「関係ない。入場料を払っているんだから、全部返還した方がいい。青木も断らなきゃ」と持論を展開した。

 以前から日本国内では野手が投手を務めるたびに論議を呼んできた。1996年のオールスターゲーム第2戦(東京ドーム)ではセの外野手、松井秀喜(当時巨人)の打順でパの仰木彬監督(当時オリックス)は投手に外野手だったイチロー(当時オリックス)を起用した。仰木監督流の演出だった。

 これに対し、セの野村克也監督(当時ヤクルト監督)が“待った”をかけたのだ。松井と話をした上で、代打に投手の高津臣吾(当時ヤクルト)を送った。“夢の対決”は実現しなかった。このケースも、どちらが正しいではない。野球の考え方の違いが分かれたケースだ。

 かつて、巨人監督だった長嶋茂雄氏(現巨人終身名誉監督)は「捨てゲームはつくりません。見に来てくれるファンは毎日、違いますから」と語った。数千円もの入場料をもらっている以上、プロのプレーを見せなければいけない。そんなプライドが昔の監督にはあった。

 半面、投手が“分業制”となった現在では、中継ぎ、抑えなど救援の投手が登板過多で疲弊しているのは事実。だが、張本氏が言うように、最後まで逆転を信じて声援を送ってくれるファンがいるのも紛れもない事実だ。「最後の最後まで最善を尽くすべき」という声にも説得力がある。

 野球の試合は誰のものか。米リーグ機構か。オーナーのものか。監督、選手のものか。ファンのものなのか。いろいろ推察はされる。ただ、今回の青木“投手”は新たな問いを投げかけた気がする。