詩織さんを国会で取り上げたものの…民進党、元TBS記者の「レイプ」疑惑に四苦八苦

野党ウオッチ
元TBS記者でジャーナリストの山口敬之氏に酒を飲まされ乱暴されたとして、会見する詩織さん(中央)=5月29日、東京・霞が関の司法記者クラブ

 性犯罪を厳罰化する刑法改正案が6月8日、衆院本会議で全会一致により可決、衆院を通過した。民進党は法案審議で、元TBS記者でジャーナリストの山口敬之氏(51)の性的暴行疑惑を取り上げているものの、被害を受けたとされる詩織さん(28)への配慮などから慎重な物言いに終始。それでもインターネット上では「詩織さんの記者会見は民進党の仕込みでは」などと疑いの目が向けられており、国会審議での取り扱いに苦慮している。

 「管轄の警察署をこえて警視庁幹部が(逮捕状執行を止めると)判断したことには、元警察関係者からも疑問の声が挙がっている。この事件は警視庁の刑事部長が判断を下す特別な捜査本部体制が最初から敷かれていたのか」

 民進党の井出庸生(ようせい、39)氏は刑法改正案が審議入りした6月2日の衆院本会議で、詩織さんの被害届提出を受けて発付された準強姦容疑の逮捕状の執行が、当時の警視庁刑事部長によって止められたと報じられたことに言及。松本純国家公安委員長(67)に事実関係をただすとともに、「捜査のいきさつを検証し、説明する責任がある」と迫った。

 松本氏は「警察署が行っている捜査に関して警察本部が適正捜査の観点から指導等を行うのは通常のことであり、お尋ねのような特別な捜査本部体制がなければ指導などができないものではない」と説明した。

 検証については「警視庁において必要な捜査が尽くされ、また検察庁で不起訴処分となっていることを踏まえ、検証を行うことは考えていない」と否定し、これまでの捜査や処分に問題はないとの認識を示した。その瞬間、本会議場が「ええーっ」とどよめいた。

 井出氏の質問には、さまざまな配慮がにじんでいた。当事者の具体的な名前は一切挙げず、山口氏を「著名なジャーナリスト」、詩織さんを「女性」などと呼ぶにとどめた。山口氏は安倍晋三政権などについて記した『総理』などの著書があり、安倍首相(62)に近いとされていることや、当時の警視庁部長が菅義偉官房長官(68)の秘書官を務めたことにもふれなかった。

 民進党が国会での取り扱いに慎重なのは、さまざまな事情が背景にある。

 第一に、詩織さんに対するセカンドレイプへの憂慮だ。詩織さんが5月29月、東京・霞が関の司法記者クラブで「私は2年前、レイプの被害に遭いました」と異例の顔出し会見を開いてから、ネット上には励ましの声とともに「売名行為」「シャツの胸元が開きすぎだ」などのバッシングがあふれている。

 これには井出氏も質問で「事件と無関係の批判もみられる。性暴力や性犯罪の被害者支援は社会をあげて取り組むべきものだ」と懸念を表明。野田佳彦幹事長(60)も6月5日の記者会見で「勇気ある告白に対して、心ない中傷のような言論が随分ネットなどには流れているようだ。これはセカンドレイプではないか。心が痛む」と述べている。

 また、週刊誌などで報じられた内容は国会で取り上げるにはあまりに生々しい。首相に近いとされる人物の醜聞とはいえ、「政治とカネ」などの問題とは異なり、単純に国会に持ち込んで政権を揺さぶるのに利用するのは不謹慎だ。

 さらに、ネット上で「詩織さんの会見は民進党が仕掛けたのではないか」となぜか疑いの目が向けられていることも、慎重にならざるを得ない理由となっている。

 刑法改正案について政府・与党は今国会での成立を目指しており、これに民進党も異論はない。それだけに、民進党幹部は「われわれがスキャンダラスに取り上げることが、改正案の早期成立を願う詩織さんにとりプラスになるとは思えない。全く言及しなくても『なぜ逃げるのか』との批判を招く。あれぐらいの触れ方が精いっぱいだ」と苦しい胸の内を吐露した。

(政治部 豊田真由美)