支え合う社会「枝野政権」構想 新著で強調
立憲民主党の枝野幸男代表が次期衆院選での政権奪取に向け、目指す社会像を示した新著「枝野ビジョン 支え合う日本」(文春新書)が20日、出版される。自民党政権は新自由主義的な路線だと指摘し、対抗する理念として「支え合う社会」を提唱した。枝野氏の政権構想ともいえるが、党内には有権者に伝わりにくいとの懸念もある。
「菅義偉首相か枝野か、選択肢として認めてもらえるよう準備する」と語ってきた枝野氏は、同著で「菅総理は就任以来『自助』の必要性を強調している」と問題視。「過度な自己責任社会から『支え合い、分かち合う』社会に転換する」と訴えた。
また、「『支え合い』こそが最大の経済対策」と強調。支え合いを担う看護師、保育士、介護職員らの賃金を底上げし、非正規から正規雇用への転換を進めて「分厚い中間層を取り戻す」と主張した。「所得の低い人を下支えして所得を押し上げることは、低迷する国内消費を拡大させ、景気を回復させるための必要条件」と説いた。
著書に具体的な政策論は少なく、主に理念を説く。19日の記者会見では、新型コロナウイルス禍で社会が転換点にある中、「この国、社会のあり方について国民に(衆院選で)選択をしていただく」と語った。
「支え合い」は持論で、党内では共通理解になっている。ただ、幹部の一人は「首相は自助ばかり強調しているわけではなく、分かりにくい。『子ども手当』のような国民に響く政策も必要だ」と疑問を持つ。
旧民主党は政権交代を遂げた平成21年の衆院選前、「コンクリートから人へ」のスローガンや、子ども手当、高速道路無料化といった耳目を集める政策を掲げ、自民党支持が多い業界団体なども回って支持を訴えた。自民党は政権を奪還した24年、景気低迷の中で「アベノミクス」と呼ばれるデフレからの脱却や円高是正などが注目された。