枝野氏、中途半端な対決姿勢 首相追及も「現状で内閣不信任案出せず」
立憲民主党の枝野幸男代表は10日の衆院予算委員会を菅義偉首相と次期衆院選前に直接対決する場と位置付け、新型コロナウイルス対策は失敗だとして追及した。一方、首相にNOを突き付ける最大手段の内閣不信任決議案は、感染拡大を理由に「現状では出せない」と明言。政権選択選挙を控えた野党第一党の党首としての対決姿勢に中途半端な印象はぬぐえない。
「遅すぎた2度目の緊急事態宣言と、早すぎる(3月の)解除。根拠なき楽観論で対応が遅れて、同じ失敗を繰り返してきた」
枝野氏は予算委で首相の政治判断をこう批判した。首相が「専門家の意見をいただいた中で私どもが判断している」と答弁すると、「何でも専門家に責任を転嫁するのは本当におやめになった方がいい」と語り、首相の資質を疑問視した。
次期衆院選では、首相と自身のどちらがコロナ禍のリーダーにふさわしいかを争点にしたい考えで、10日の予算委終了後には、記者団に「(首相には)リーダーとして危機を乗り切るという覚悟と危機感がなく残念」と述べた。
対立軸を打ち出すためにも、6月16日の国会会期末近くに、コロナ対応など「菅内閣の失政の総括」と位置付けて内閣不信任案の提出を模索している。会期末まで感染状況をにらみながら最終判断する考えだが、公の場では対決姿勢を打ち出しきれない。10日、記者団にはこう述べるにとどめた。
「現状は衆院解散できる状況ではない。提出したら解散すると(与党幹部らが)明言しており、提出はできないと思っている」
衆院解散か内閣総辞職を求める内閣不信任案を緊急事態宣言発令中に提出すれば「野党は政治空白を生じさせるのか」と批判を浴びかねない-。慎重な言い回しには、こうした苦しい立場に置かれた枝野氏の思いもにじむ。共産党の小池晃書記局長は記者会見で枝野氏の発言に同調した。
ただ、政権交代を実現するには衆院選で勝たなければならず、その最大のカードを自ら否定する発言は異例で、自身を縛ってしまう余計な発言ともいえる。国民民主党の玉木雄一郎代表は記者団に苦言を呈した。
「提出は常に検討すべきだし、それが不十分なコロナ対策の変更を促すことにもつながっていく。最初から出さないと決めつける必要はない」
枝野氏は10日の予算委で夏の東京五輪・パラリンピックに関し「国民の生命、暮らしを守ることと、五輪開催を両立させることは、不可能と言ってもいいのではないかと残念ながら言わざるを得ない」とも語った。
立民の泉健太政調会長が7日の衆院議院運営委員会で「残念だが、延期か中止し、ワクチン接種と治療、国民の命と健康を優先させようと提案したい」と述べていただけに、トーンダウンした感も否めない。立民内や他の野党からは「覚悟を決めて与党と対決したほうがいい」との意見も出ている。(田中一世)