処理水問題最終調整 原発行政議論の前進に期待
東京電力福島第1原発の処理水を海洋放出する問題をめぐり、菅義偉首相と全国漁業協同組合連合会(全漁連)の岸宏会長らの面会が7日、実現した。全漁連側は「反対という考えはいささかも変わるものではない」との姿勢を改めて強調したが、菅首相は専門家の提言などを踏まえ近日中に判断する考えを示した。両者の面会により、廃炉問題の進展が期待さる。また、原発の新増設を含め、先送りされているエネルギー政策議論が加速するかも注目される。
面会に同席した梶山弘志経済産業相は会見で、最終判断までの時間はそう残されていないとしたうえで、「今回の意見に対し、しっかり対応をしていきたい。引き続き丁寧な説明、説得が必要だ」と述べた。
これまで、第1原発では、燃料デブリを冷やすための注水などで発生した汚染水に伴う処理水が増え続け、東電によれば、処理水の保管タンクの容量が令和4年秋には満杯になるとしている。放出が決定しても、設備工事や原子力規制委員会の審査などを経て、放出開始まで2年程度を要するため、もう先延ばしできないところまできている。
原発をめぐっては、東電柏崎刈羽原発の社員による不正ID使用問題や、核物質防護不備問題などで原発に対する国民の不信感を高める事案が多く発生するなど、取り巻く環境は厳しいものがある。
次期エネルギー基本計画に盛り込む原発政策の議論を推進するためにも、放出に向けた決断にあたっては、政府による丁寧な説明が求められる。(那須慎一、森田晶宏)