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原発訴訟判断分かれ、エネルギー政策の不確実性浮き彫り 冷静な議論阻害も

 原子力発電所の運転の可否をめぐり、18日に水戸地裁と広島高裁が下した判断が分かれたことは、日本のエネルギー政策をめぐる不確実性の大きさを浮き彫りにした。判決のたびに原発の危険性ばかりが強調される悪循環が続けば、冷静な議論を阻害し、脱炭素化や電力の安定供給に向けたエネルギー政策を誤らせることにもなりかねない。

 「到底承服できない。説明に最善を尽くしてきており、むしろ驚いている」

 日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)運転差し止め訴訟で、水戸地裁が18日に出した運転を認めない判決について、同社担当者はこう述べた。

 原子力規制委員会が安全性を認めた東海第2原発に対する水戸地裁の判断は再稼働を目指す電力各社にとって厳しい判断だ。こうした訴訟の影響が他の原発をめぐる訴訟に拡大していく可能性は否定できない。

 もっとも、福島第1原発事故後、事業者や国に運転差し止めを命じた判決や仮処分は7件あるが、このうち5件は高裁などで判断が覆り、確定したものはない。広島高裁が18日に伊方原発について示した判断はその一例だ。

 政府は、菅義偉首相が表明した2050年に温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標の達成に向け、二酸化炭素(CO2)を排出しない原発を最大限活用し、再稼働を加速したい考え。仮に50年に現行の原発が全て稼働できたとしても全体の電力量の1割程度しか賄えないとの試算もあることから、今夏にも改定する次期エネルギー基本計画などで新増設や建て替えを政府方針として打ち出せるかが焦点の一つだ。

 しかし、各地での運転差し止め判決などの影響で、再稼働すらままならない状況が続けば、国は足元の原発政策を見直さざるを得なくなる。エネルギー政策に詳しい日本総合研究所創発戦略センターの滝口信一郎シニアスペシャリストは「一連の判決で稼働に致命的な影響がすぐにあるわけではないが、次期エネルギー基本計画の議論自体に影響を与える可能性がある」と指摘する。

 安全面などで地域住民をはじめとする国民との信頼醸成が最優先されるのはいうまでもない。しかし裁判の頻発を防ぐためにも中長期的な視野に立った国としての原発ビジョンを一層明確化し、発信する必要がありそうだ。(那須慎一)

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