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【主張】コロナと店名公表 私刑誘発の姑息な悪手だ

緊急事態宣言発令から2日目の週末を迎えた東京・渋谷のスクランブル交差点=10日午後、東京都渋谷区(宮崎瑞穂撮影)
緊急事態宣言発令から2日目の週末を迎えた東京・渋谷のスクランブル交差点=10日午後、東京都渋谷区(宮崎瑞穂撮影)

 新型コロナウイルスの感染抑制を目指し、政府は緊急事態宣言を発令した。難敵に立ち向かうためには国民が一丸となる必要があり、協力は惜しまない。

 そのためにも政府や自治体のトップには、政策に疑念を持たれることがないよう求めたい。

 一例を挙げれば、時短要請に応じない飲食店の店名公表の問題がある。

 根拠法の新型インフルエンザ等対策特別措置法による施設名の公表対象は、学校やデパート、ホテル、パチンコ店などに限定されていた。このため公表対象に飲食店を含めるよう、臨時閣議で政令を改正した。

 そもそも特措法に罰則規定はなく、公表の趣旨は感染防止のためその施設に行かないよう周知するためのものである。

 だが加藤勝信官房長官は政令改正の趣旨を「感染リスクの軽減をより実効的なものにするため」と説明し、東京都の小池百合子知事は「店舗名公表を検討せざるを得なくなることがないようにまずは協力いただきたい」と述べた。

 実効力とは公表による懲罰の代用であり、私刑の可能性で脅しているようなものだろう。

 本来は、特措法改正で補償や罰則規定を設けるのが筋である。

 政府は昨年来、法改正の必要性を認めながら「議論は感染の収束後」との姿勢を崩さず、機を逸し続けてきた。その不作為を政令改正による店名公表で埋めようというなら、姑息(こそく)に過ぎる。国民に権利制限や義務を課すことができるのは国会で成立した法律だけだ。政令にその効力はない。

 緊急事態宣言の発令に期待するのは、国民が危機感を共有するための強いメッセージである。時短の要請に応じない店名の公表は、私刑の容認や奨励と受け取られかねない。これが密告や「自粛警察」の横行を呼び、国民を分断させるような事態を招いては、感染収束への道などほど遠い。

 昨年4月の宣言発令時には休業指示に従わないとして一部のパチンコ店の店名が公表された。名前が公表されたパチンコ店には多くの客が集まり、「宣伝になっただけだ」との批判もあった。同様のケースは飲食店でもあり得る。

 政府・与党は罰則による強制力を付した特措法の改正を急ぎ、店名公表で店舗を従わせるような悪手は取り下げるべきだ。

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