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【論壇時評】10月号 新首相誕生と最長政権の功罪 文化部・磨井慎吾

 対照的な誌面構成なのが中央公論で、安倍前首相の辞任表明以降に急ぎ組み込んだとおぼしき企画は2編、計4ページのみ。その一つである政治学者の御厨(みくりや)貴「史上最長政権の功と罪」は、安倍政権のレガシー(遺産)について、功績としてよく言われる経済と外交は「やってる感」を出していたにすぎないと評した上で、「私は安倍首相が残した最大のインパクトは、政治家と国民の政治観を変えたことにあると思う。つまり、『選挙で勝たなければダメだ』という政治観だ」と指摘。そのことが権力行使の在り方への緊張感を極端に失わせたことを罪として挙げ、「結局、安倍首相がこの国をどうしたいのか見えなかった八年弱だった」と辛口に結ぶ。

 平成の政治改革が目指した政治主導は、セットで実現するはずだった政権交代可能な二大政党制が非自民党勢力の分裂で頓挫し続けたために、平成末から令和の初めにかけて、一強の長期安定政権とともにさまざまな政治的弛緩(しかん)を生んだ。来月号の論壇誌に多数並ぶと予想される安倍政権総括の主な論点の一つは、おそらくそのあたりになるだろう。

 今回、政変に応じて短期間で大幅に企画を組み替えた文芸春秋のような月刊誌は例外で、多くの論壇誌では安倍前首相の辞任表明前に企画、入稿した原稿を基本的にそのまま使ったはずである。そしてそれは別に否定すべきことではない。論壇誌はジャーナリズムとアカデミズムの中継地点としての機能も持つ。ジャーナリスティックな速報性が弱いタイムラグのある媒体ならば、個々の論考の賞味期限の長さで勝負するしかない。主にアカデミズムから来る書き手に、どんなテーマで原稿を頼めば短期間で古びない内容になるのか。編集者の企画力がカギになっている。

 その点、レベルが高かったのがVoice。巻頭特集は中国もので、「中国が、経済的・政治的に世界で存在感を高めるに従い、人権抑圧と権威主義に傾く中国内の問題が世界に投射されていく」として、経済的相互依存関係を利用し中国的スタンダードを相手国に半ば強要していくありさまを「切り下げの帝国」と卓抜に概念化した政治学者の遠藤乾(けん)「『切り下げの帝国』が世界を劣化させる」、また「『一国二制度』の形骸化は、日本の安全保障に直結した問題である」と警鐘を鳴らす中国研究者の阿南友亮「香港の陥落と日本の安全保障」など、粒ぞろいの論考が並ぶ。

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