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【記者発】「社モノ」でなくなりますように 政治部・田中一世

尖閣諸島。手前から南小島、北小島、魚釣島=沖縄県石垣市(鈴木健児撮影)
尖閣諸島。手前から南小島、北小島、魚釣島=沖縄県石垣市(鈴木健児撮影)

 ある自衛隊員がわざわざ電話で、2週間ほど前に書いた記事について心中を語ってくれた。

 「一個人としては、わが国の領土なのだからぜひ大臣に行ってほしいと思う。でも、この組織にいれば難しいというのもよく分かる」

 記事は尖閣諸島(沖縄県石垣市)について「河野太郎防衛相が上空視察を検討したが、結局見送られた」という内容だった。8月上旬に自衛隊機で視察に訪れていた宮古島から200キロ余り、数十分程度の距離に尖閣諸島はある。だが、防衛相が表立って視察に赴けば日中関係の火種になりうるため、これまでタブー視されてきた。

 自国の島を見に行くだけなのに他国に批判されるいわれはない。ただ、中国に多くの日本企業と日本人が進出する現状において複雑な事情も分からないわけではない。自衛隊員の言葉にも葛藤がにじむ。「そうですよね」と応じるしかなかった。

 記事に対する読者の反応を見ると賛否両論、とりわけ不満の声が目立つ。ともあれ、尖閣諸島を取り巻く状況への世の中の関心が少しずつ高まっていると感じる。

 中国は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大のさなか、尖閣諸島周辺でも挑発活動を続けており、折に触れて報じてきた。この間、「“社モノ”だから力が入っていますね」というような、お褒めの言葉をいただいた。ある同業他社の記者と自民党議員からである。

 社モノとは、社の方針として重点的に取り組んでいる案件をいう。別に社の方針にのっとっているつもりはなく、いやが応でも目につく話を書いているだけなのだが、その種の誤解はよくある。尖閣諸島は日本固有の領土であり、私の知る限り、国内のどの報道機関であれ、どの政党の国会議員であれ、異を唱えてはいない。中国の動向は本来、右も左も別ない問題であろう。

 「毎日毎日、中国が尖閣周辺に来るのは、日本国民に慣れさせ、当たり前の状態だと認識させ、関心をなくさせることが狙いでしょう」というのは以前に幹部自衛官に聞いた言葉である。

 現実には世の中全体の関心ごとにはなっていない。どうか尖閣問題が社モノでなくなりますように。

【プロフィル】田中一世

 平成16年入社。広島総局、大阪社会部、九州総局などを経て政治部で首相官邸や自民党、国会を取材し、現在は防衛省を担当。

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