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【安倍政権を振り返る】日米安保の「障害」越えられず 露アガニョーク誌編集長 セルゲイ・アガフォノフ氏

アガニョーク誌編集長、元イズベスチヤ紙日本特派員のセルゲイ・アガフォノフ氏(同氏提供)
アガニョーク誌編集長、元イズベスチヤ紙日本特派員のセルゲイ・アガフォノフ氏(同氏提供)

 安倍晋三首相の退任表明を受け、専門家やメディアから日本とロシアの領土問題解決に向けた「窓」が閉じられたとの見方が出ている。これは部分的に正しい。しかし、本質的な部分を問う必要がある。「そもそも窓は本当に最初から開いていたのか」ということだ。

 日本は北方四島の主権を主張し、島の帰属問題を提起した。ロシアも島に対する(露側の)主権は疑いようがないとする。双方は表向き積極的に交渉してきたが、両国の原則的な立場には影響しなかった。「平和条約締結後にソ連は歯舞(はぼまい)群島と色丹(しこたん)島を日本に引き渡す」と定めた1956年の(日ソ)共同宣言でさえ、双方の立場を変えるものではない。

 日本が「四島は不法占拠されている」との立場を守る限り、ロシアとの対話で決定的な前進はありえない。ロシアは決して「第二次世界大戦の結果の見直し」を容認しないためだ。

 安倍首相は疑いなく戦後日本で最も卓越した指導者の一人だが、領土問題を解決するために必要な政治的条件が整っていなかった。安倍首相を侮辱するつもりはない。つまり、日米安全保障条約という障害があった。

 ロシアは引き渡し後の島に米国が戦力を配備しない保証を日本に求め、日本は「保証はできないが、そうならないよう努力する」という形で回答してきた。日本は日米安保条約に手を縛られており、安倍首相はそれを乗り越えられなかった。日米安保条約に手を加えることは、日米の外交関係の全面的な見直しになるためだ。

 安倍首相には、ある目的の達成のために自民党内や野党との対立を恐れることなく、決定と結果の責任を自身で負う覚悟があった。しかし私の見方では、安倍首相は完全にそうすることはできなかった。党内や官僚機構に蓄積されてきた秩序を壊さないよう、しばしば自制せざるを得なかった。この意味で保守主義と伝統主義的な価値観、教育が彼の障害となった。

 安倍政権を経た現時点も、日本は外交の輪郭を描けておらず、現代国際社会の中で自身の居場所を見いだせていない。日本は非常に巨大な潜在能力を持っているが、それを外交面で実現できていないのだ。(聞き手 モスクワ・小野田雄一)

セルゲイ・アガフォノフ ロシアのジャーナリスト。モスクワ国立大学卒業後、イズベスチヤ紙で記者を務め、1985~96年に日本特派員。2005年、120年の歴史を持つ総合週刊誌「アガニョーク」副編集長に就任。12年から編集長

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