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北方領土不法占拠から75年 袋小路の交渉 コロナ直撃、迫る首相任期

ロシアのプーチン大統領(左)と安倍晋三首相(斎藤良雄撮影)
ロシアのプーチン大統領(左)と安倍晋三首相(斎藤良雄撮影)

 北方領土がソ連(現ロシア)に不法占拠されて今年で75年となる。ソ連軍は75年前の8月28日に北方四島に侵攻、以来ロシアは日本固有の領土を実効支配する。この間、日露(日ソ)両首脳は領土問題解決に向けて交渉を続けているが、具体的進展は見られない。

 安倍晋三首相はロシアのプーチン大統領との信頼関係を推進力に北方領土交渉に臨んできた。しかし、新型コロナウイルスの影響で直接会談は昨年9月以来行われておらず、今後の見通しも立たない。首相の自民党総裁任期は残り1年に迫り、ロシア側も領土への態度を硬化させている。袋小路を抜け出す手立ては見当たらないのが実情だ。

 平成24年の再登板以降、首相は北方領土問題の解決を最重要課題の一つに掲げ、プーチン氏と通算27回の会談を重ねてきた。28年には地元の山口県長門市に招き、北方四島での共同経済活動や元島民による墓参の円滑化で合意。30年のシンガポール会談では、日ソ共同宣言を基礎にした交渉の加速化を確認するなど機運を高めた。

 しかし、「領土割譲」に対するロシア国内の世論は厳しく、昨年からはプーチン政権の消極姿勢も目立ち始めた。新型コロナの直撃で、日露交渉の勢いはさらに低下した。

 「とにかく新型コロナウイルスを早く収束させて次の首脳会談を考えたい」

 7月21日、首相は官邸を訪れた日本維新の会の鈴木宗男参院議員にこう語った。対面での日露首脳会談は、昨年9月のロシア極東ウラジオストクが最後だ。

 首相は今年5月にモスクワで開催予定だったロシアの対独戦勝75周年記念式典に出席し、プーチン氏との会談を検討していたが、新型コロナの感染拡大を受け見送った。9月にウラジオストクで予定されていた東方経済フォーラムも中止。米ニューヨークでの国連総会もテレビ会議形式で、首脳外交の場は失われた。

 5月にはプーチン氏と電話会談を行い、北方領土問題を含む平和条約交渉の継続で一致したが、機微な領土交渉を電話で進められる余地は極めて小さい。首相は鈴木氏に「日露関係をしっかりしたものにしたい。領土問題を解決して平和条約締結に向けて全力を尽くしたい」と変わらない決意を示したが、元島民による船舶での墓参やビザなし交流なども延期になるなど取り巻く環境は厳しい。

 タイムリミットも迫る。首相の自民党総裁任期は来年9月まで。総裁4選の観測も残るが、最近の支持率低迷や首相の健康不安説などで急速にしぼんでいるのが実情だ。任期が短くなるほど交渉の推進力が失われていくのは避けられない。

 ロシア側の事情もある。7月に承認されたロシアの改正憲法には領土の割譲を原則として禁じる条項が盛り込まれた。「隣国との国境画定作業を除く」との例外規定があることから、日本政府は「北方領土交渉は引き続き行われる」との立場を堅持するが、国後島では領土割譲禁止条項が記載された記念碑が住民によって設置された。

 日露交渉にとって、好材料は見当たらないのが実情だ。それでも、日本政府関係者は「領土交渉が動くときは一気呵成(かせい)だ。首相とプーチン氏の関係が続く限り可能性はある」と、わずかな期待を寄せている。(石鍋圭)

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