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国は苦肉の救済策 援護行政の根幹維持 黒い雨訴訟で控訴

記者団の質問に答える加藤勝信厚労相=12日午前、東京・霞が関の厚労省(酒巻俊介撮影)
記者団の質問に答える加藤勝信厚労相=12日午前、東京・霞が関の厚労省(酒巻俊介撮影)

 広島市への原爆投下直後に降った放射性物質を含む「黒い雨」をめぐり、国の援護対象区域外にいた原告全員を被爆者と認めた広島地裁判決に対し、政府は12日、区域拡大を視野に検証を行うことを決め、救済に踏み出した。ただ、広島県や市が求めた控訴断念は受け入れなかった。科学的知見を基礎とした被爆者援護行政の根幹は崩さないという強い意思を示す必要があったためで、苦肉の対応を迫られたといえる。(坂井広志)

 加藤勝信厚生労働相は12日、地裁判決について「これまでの科学的知見からかけ離れたものだ。認めることはできない」と重ねて記者団に述べた。

 県と市は長年、区域の見直しを国に求めてきた。原爆投下から75年を迎えて被害者が高齢化する中、政府が救済の必要性を痛感していたのは間違いない。ただ、区域指定は科学的知見に基づいて進めてきた経緯があり、これを否定するわけにはいかなかった。

 橋本龍太郎厚相(当時)が昭和54年6月に設置した私的諮問機関「原爆被爆者対策基本問題懇談会」は55年12月に、援護行政を方向付けることになった報告書をまとめている。

 ここでは、放射線被害を「特別の犠牲」として救済措置を求める一方、「他の戦争被害者と著しい不均衡が生じるようでは国民的合意は得られない」とも明記。「被爆地域の指定は科学的・合理的な根拠のある場合に限定すべきだ」とした。救済に税金を投入し、国民の理解を得るには、後ろ盾として科学的根拠が必要という考えだ。

 厚労省は平成24年までの2年間に、黒い雨の降雨域に関する有識者検討会を9回開いた。科学的に検証した結果「降雨域の確定は困難」と結論付け、区域拡大を認めなかった。

 援護行政の基本方針を維持しつつ、原告にも向き合う-。控訴と区域の検証という一見矛盾するような行動は、そんな考えに基づいて導き出された悩んだ末の策ともいえる。加藤氏は今月12日、「最新の科学的技術を用いて可能な限り検証する」とも語った。

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