PR

ニュース 政治

【転換への挑戦】元首相 中曽根康弘 場当たり的な「政治決断」

前のニュース

 菅直人首相は、6日に中部電力浜岡原子力発電所の全面停止を求め、中部電力も3日後に応じた。10日にはエネルギー政策を白紙に戻すとも表明した。菅首相の「政治決断」に一応の支持と評価はするが、関係機関や与党の了解を取る手続きは取ったのか。原子力を含むエネルギー問題は手続きを慎重にすべき対象だ。

 浜岡原発の停止については、エネルギー政策上の原子力発電の意義を明確にさせないままの応急手当て的な処置だったのではないか。政府・与党の基本的姿勢が問われるだけに、「決断」は疑問を持たせたと言わざるを得ない。

 東京電力福島第1原子力発電所の事故においても同様で、事故をどう反省し、是正していくかという立場で関係者間で協議していくべきものだ。このままだと、政治史の上でみても、場当たり的な人気取りのエネルギー政策に終始したとの批判は免れないだろう。

 私の科学技術や原子力問題への関心のきっかけは、義父の地質学者から日本のウラニウム埋蔵の可能性や核分裂理論を聞かされたことと、広島に投下された原爆の雲を高松から見たことだった。

 昭和?年、ハーバード大のゼミに出席するため訪米した。当時の米国は、アイゼンハワー大統領が「アトム・フォー・ピース」を提唱して、原子力を軍用から平和利用に移行させる動きが出てきた。日本が敗戦から立ち直るのにエネルギー問題は避けられない課題であり、日本で原子力の平和利用を急ぎ進めなければならないと判断した。

 炉の見学などを通じて、このようにやれば原子力も安全だという確信を持つと、帰国後に同志を募って推進を始めた。その後、社会党左派まで賛同する超党派の動きになり、議員立法で出した原子力基本法は昭和?年に成立の運びとなった。

 日本のエネルギーは今後、風や波や太陽光など自然力への比重を増していくだろうし、それは推進すべきだ。しかし、効率性や日本の科学技術力などを考えると、代わりのものを入手しない限りは原子力に頼らざるを得ないのではないか。

 今回の原発事故は、津波と地震による複合的な災難であり、今までの想定を超えた問題だった。ここで反省すべきは、「想定」を設定していいのかということだ。人智による想定に自然は従わないとの立場から、想定を超えた対策を練り直していく必要がある。新設の原発を海辺に築くのは、もはや難しい。いかに防潮堤を高くしても、津波が乗り越えることはないという保証はないからだ。いかなる津波も届かないという安全な場所に設置するくらいの基準を作らないといけないだろう。ある程度のコストをかけても、安全運転のためにはやむを得ない。

 ここにきて、菅政権は長期化するとの見方が出ているが、私は続いても2、3カ月くらいだろうと思う。原発の騒ぎが収まれば、政権には外交や他の内政の課題が山積していることがわかり、菅首相の政治力への不信が再び噴き出すからだ。「ポスト菅がいない」のを理由にした延命にはくみしない。野党の政権を倒す決心と、民主党内に鬱積している不満が、内閣の延命を阻止するとみている。(なかそね やすひろ)

<2011/05/13(金) 東京本紙朝刊 朝1面掲載>

次のニュース

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ