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【歴史の転換点から】江戸無血開城の「点と線」(3)西郷と勝 裏切りに見えた「誠」

勝の「誠」とは

 「あてにもならない後世の歴史が、狂といはうが、賊といはうが、そんな事は構ふものか。要するに、処世の秘訣(ひけつ)は誠の一字だ」

 晩年に至った勝の談話集『氷川清話』にはこんな発言がみえる。

 「誠の一字」。勝日記の「沈黙」を考えると皮肉な響きがしないでもない。が、渡辺は会談のさいの勝に「誠」をみたという。

 「以上申し上げたことについて諸君は疑念を抱くだろうが、拙者は同時に旧幕臣からも疑念を受けてその間に挟まっている。わが君も同様の逆境のなか誠意を尽くそうとしておられる。いまではわが君といえども、号令一下に家臣を従わせることはできない。そこにきて明日、江戸城を攻撃するならば、わが君の精神が水泡に帰すばかりか江戸はもちろん、天下の大争乱になるのは目に見えている。ともかく明日の戦争は中止いただきたい」

 そう口上を締めくくった勝について渡辺は「実に見事と敵ながら感じ入った」と語っている。

 教条主義者や主戦派は「狂」や「賊」と非難するかもしれない。だが、会談での勝は西郷に対して驚くほど直截(ちょくさい)であり、日本人として江戸と徳川家を戦火から救いたいという思いに満ちている。そんな彼の「誠」が西郷に通じなければ、明治維新はよほど違ったかたちになったはずだ。(編集委員 関厚夫)

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