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【話の肖像画】前統合幕僚長・河野克俊(64)(2)震災で見えた「同盟の本質」

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被災者を励ますトモダチチャリティーベースボールが日米双方の協力で開催された。イベントには松井秀喜氏とともに参加した=平成27年3月21日(防衛省提供)
被災者を励ますトモダチチャリティーベースボールが日米双方の協力で開催された。イベントには松井秀喜氏とともに参加した=平成27年3月21日(防衛省提供)

 〈防衛大学生の4年間を入れると46年間を自衛隊で過ごした。そのなかでも、大きな教訓を得た出来事は、平成23年の東日本大震災の対応にあたっていたときに起きたという。当時は折木良一(おりき・りょういち)統幕長の下、河野氏は統幕副長として支えるポジションだった〉

 大規模な地震・津波災害への対応に加え、原子力発電所の問題が重なりました。原発の対応は、自衛隊として訓練をしてきたわけではないし、われわれに十分な知識もありませんでした。そもそも、原発事故を押さえ込む役割は、自衛隊に与えられていなかったわけです。

 しかし、あの状況下でやらざるを得なくなりました。そこには、政府からの要請があっただけではなく、米国が日本政府の原発事故対応について、非常にいらだってみていたという要因がありました。

 〈3・11から数日後、福島第1原発の3、4号機について、燃料貯蔵プールの冷却水の不足が深刻視された。水位が下がり燃料がむき出しになれば、被害が甚大となるためだ。警察、消防とともに自衛隊による注水活動が行われた。なかでも注目されたのは、陸上自衛隊のヘリを使った上空からの放水作業だった〉

 米軍制服トップのマイケル・マレン統合参謀本部議長(当時)から折木さんのところに、「原発対応はいったいどうなっているのか。こういうときは自衛隊が動くのではないか」と電話が来ました。

 そこには誤解もあるのですが、ともかく日本の対応について強い不信感といらだちがあった。ある意味、日米同盟が危機に瀕(ひん)していたといえます。これは東日本大震災の裏面史ですね。

 難しい判断と調整を重ねた上で、原発の上空から陸自のヘリコプターによる放水作業を行いました。あの作業によって、実際にどの程度の冷却効果があったかは分かりませんが、とにかく自衛隊が動いた。それを見て、アメリカも動き出したのが印象的でした。そうした段階を経て、大規模な「トモダチ作戦」が展開されたわけです。

 あのとき、同盟の本質を見た感じがします。「まずは自衛隊が後方支援を行いますので、アメリカさんお願いします」なんてことはあり得ない。日本が主体的に行動してこそ、同盟間の協力は成り立つということです。当然の話ではありますがね。

 〈自衛隊は国家存亡の事態に向き合う役割を担った。ただ、それは放射能という見えない敵を相手に作業を強いられた。日本政府の対応にいらだった米軍が、自衛隊のヘリ放水を見て、本気で支援を開始した。同様の話は、折木元統幕長からも聞いたことがある〉

 われわれはそのことを現場で話し合ったわけではありませんが、米国の姿勢を見ていた多くの幕僚たちは、口に出さなくとも同じように感じていたでしょう。同盟の本質を目の当たりにしたわけですから。

 尖閣防衛の問題も同様に考えるべきでしょう。日本の防衛の主体が自衛隊であることに、変わりはありません。(聞き手 石井聡)

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