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【経済インサイド】中国は融資対象から“卒業”すべき 日本とADBにズレ

フィジー・ナンディで記者会見するアジア開発銀行の中尾武彦総裁(共同)
フィジー・ナンディで記者会見するアジア開発銀行の中尾武彦総裁(共同)
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 アジア開発銀行(ADB)の中国向け融資をめぐり、ここにきてADBと日本政府の間で方針の“ズレ”が浮き彫りになった。政府が、日本と並ぶADBの最大出資国・米国と歩調を合わせ、経済成長を遂げた中国を融資対象から“卒業”させたい考えであるのに対し、ADBの中尾武彦総裁は東京都内で開いた記者会見で、中国への融資の規模を当面維持していくと話したのだ。

 「ADBは対中融資を量的にも比率的にも今の水準を維持しながら、気候変動などの投資案件を中心にやっていく」。中尾総裁は4月15日の記者会見でこう述べ、環境分野を融資の中心に据えれば、「近隣国に良い影響を与えることができる」と指摘した。

 同じ国際金融機関である世界銀行総裁に、対中強硬派であるデービッド・マルパス前米財務次官が就任したことに絡んでは、「(ADBでも中国が)早く卒業すべきだという議論はある」としつつ、「中国からはしっかり金利を取って、貧しい国への融資に活用している」と述べ、中国向け融資の“正当性”を説明した。

 このほかにも中尾総裁は、中国から巨額の融資を受け、返済できず港湾などのインフラを借金のカタにとられる途上国が出ているなどの問題に関し、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)が「貸し付けを十分に管理できていない」と指摘。一方、ADBはAIIBと競うつもりはなく、今後も協調融資を進めていくともした。

 会見での発言からうかがえるのは、中国をアジアでの事業パートナーなどとして尊重する、中尾総裁の融和的な姿勢だ。昨年4月の記者会見でも、ADBとAIIBの協調融資を増やしていく方針を表明。当時4件の実績があった協調融資事業に関し、「(今後は)年数件の協調融資を実施していきたい」と述べた。

 だが、日本政府は中国が融資基準上の「卒業国」にあたることや、AIIBを通じて世界で影響力を強めてきたことを踏まえ、ADBの中国への新規融資を終わらせたい考えだ。

 ADBの2018年の新規融資対象国のうち、最も額が多いのがインドで、全体の16・2%を占める。次いでバングラデシュ(13・2%)、インドネシア(12・6%)となり、中国は12%で4位につけている。

 ただ、ADBの融資対象基準では、1人当たりの国民総所得(GNI)の上限が6795ドル(約75万円)以下となっている。すでに米国に次ぐ世界第2位の経済大国になっている中国のGNIは約8700ドルに達しており、もう融資しなくてもいいのではないかというわけだ。

 麻生太郎財務相も5月4日にフィジーで開かれたADB総会で、中国を念頭に、「卒業所得基準に達した国々については、支援の対象を卒業につながる分野に重点化しながら、卒業につながる具体的道筋をしっかり議論していくべきだ」と各国に訴えた。

 政府には、米国の意向に配慮し、歩調を合わせなければならない事情もある。トランプ米政権は現在、中国と貿易戦争を繰り広げており、4月に世銀の総裁に就任したマルパス氏は就任後の記者会見で、「中国は大きな借り手から小さな借り手に役割を変えるべきだ」とし、世銀の中国向け融資を縮小する考えを明言した。

 政府も「中国は日本と、経済的にほぼ一体化しており、非常に重要な存在」(幹部)と考えているが、巨大経済経済圏「一帯一路」構想を掲げてアジアなどでの覇権を目指す中国への警戒は強い。安全保障上、最大の同盟国の米国の機嫌を損ねるわけにはいかず、米国の考えを尊重し、ADBの対中融資も世銀と足並みをそろえる必要があるのだ。

 ADBは21年以降も対中融資を続けるかどうか、20年夏をめどに決める予定となっている。財務省幹部は「ADBも政府の方針は分かってくれるはずだ」と話すが、政府とADBの今後の水面下での話し合いは、波乱含みといえそうだ。(経済本部 山口暢彦)

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