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【顔の見えない議員たち】(下)目立つ「非常識」 問われる資質

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 議場の秩序を保持し、議事を整理し、議会の事務を統理し、議会を代表する-。地方自治法がその役割をこう定めている地方議会の「議長」。だがその座をめぐり、沖縄の離島で昨秋、信じがたい光景が繰り広げられていた。

 ◆議長選99回

 日本最西端の地、沖縄・与那国(よなぐに)島(与那国町)。有権者1329人のうち94・8%が投票した昨年9月9日の町議選(定数10)では与野党が5ずつ議席を獲得し同28日、新議員による町議会が開会した。

 まず行われた議長選では、与野党の代表2人が5票で並び、くじ引きで決まっても当選者が辞退し合う状況が続いた。議長は議案の採決に加われないため、議会運営を有利に進めるには議長を出さない方がいいからだ。与党議員の前西原(まえにしはら)武三(65)は「今回こそは議長を『取ってはならない』と結束していた」と話す。

 「くじ引き合戦」は1カ月以上も続いた。議会を1日開くと議員1人に千円が支払われることになっており、空転する議会だけのために計20万円以上が議員に支出された。

 議長が決まらないと、議案審議には入れない。町長の外間守吉(ほかま・しゅきち)はやむなく、補正予算案のうち緊急性の高い防災行政無線デジタル化など約3億9千万円の予算措置を町長権限で決める「専決処分」に踏み切った。

 10月31日、99回目の議長選で与党が折れ、前西原が議長に就任した。「まさに与那国の恥。責任を取り、全員辞職すべきだった」と町役場近くに住む男性(40)は憤る。

 ◆低い信頼度

 実は、同町議会が「多様な民意を取り入れよう」と定数を4増やした直後に起きたのが、この異常事態だった。取り入れるべき「民意」は、多数派工作のために99回もの議長選を繰り返す「内向き」の活動だったのだろうか。

 全国の地方議員は3万2715人(平成29年12月)。だが、その役割は見えにくい。

 早稲田大マニフェスト研究所が昨夏に公表したインターネット調査では、市区町村議会の議員を「あまり信頼できない」「全く信頼できない」と答えた人が38・1%に上った。信頼度で比べても、地方議員は都道府県知事や市区町村の首長より低かった。

 住民に最も身近な存在のはずの地方議員はなぜ、信頼されていないのか。地方議会では確かに、「有権者不在」との批判を招きかねない事態が目立つ。

 ◆報告書手抜き

 岡山県議会では28年に公費で実施した米国視察をめぐり、13人の議員が報告書の大半を同じ内容で提出していたことが判明。感想を除く大半で、同じ文章が使い回されていた。「コレクション」とすべき部分が「これ区書」となっているなど、パソコンの誤変換とみられる部分も共通しており、中には感想がない報告書もあった。

 同年に九州を視察したものでは、6人の報告書で同一の誤表記があったことなども判明。同県議会で使い回しが常態化していることが浮き彫りになった。

 だが、米国視察に参加したある県議は「報告書に関するルールは特にないので、問題にはならない」、別の県議は「誰がやっても同じ部分は、手分けしてやろうと決めていた」と説明する。

 こうした釈明に、岡山県倉敷市の会社経営の男性(47)は「視察には税金が使われており、きちんと取り組むべき仕事なのに、ありえない」。議員側の「常識」は住民にとっては「非常識」であり、不信感は募る一方だ。

 日本大教授(政治学)の岩井奉信(ともあき)は「有権者目線で議会活動を行うという議員本来の役割を失している」と指摘。一方、「有権者側も日頃から政治に関心を持つことが大切。選挙では議員の資質を見極めて選ぶ責任がある」と話している。(敬称略)

 

 江森梓、細田裕也、有年由貴子、地主明世、吉国在が担当しました。

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