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防衛大綱全文(3)(完)

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 3 防衛力の中心的な構成要素の強化における優先事項

 (1)人的基盤の強化

 防衛力の中核は自衛隊員であり、自衛隊員の人材確保と能力・士気の向上は防衛力の強化に不可欠である。これらは人口減少と少子高齢化の急速な進展によって喫緊の課題となっており、防衛力の持続性・強靱(きょうじん)性の観点からも、自衛隊員を支える人的基盤の強化をこれまで以上に推進していく必要がある。

 このため、地方公共団体等との連携を含む募集施策の推進、大卒者等を含む採用層の拡大や女性の活躍推進のための取組、自衛官の定年年齢の適切な引き上げや退職自衛官の活用、予備自衛官等の活用や充足向上のための取組といった、より幅広い層から多様かつ優秀な人材を確保するための制度面を含む取組に加え、人工知能等の技術革新の成果を活用した無人化・省人化を推進する。

 また、全ての自衛隊員が高い士気を維持し自らの能力を十分に発揮し続けられるよう、生活・勤務環境の改善を図るとともに、ワークライフバランスの確保のため、防衛省・自衛隊における働き方改革を推進する。

 さらに、統合教育・研究の強化等、自衛隊の能力およびその一体性を高めるための教育・研究の充実を促進するほか、防衛省・自衛隊の組織マネジメント能力に関する教育の強化を図る。これらに加え、栄典・礼遇に関する施策の推進、任務の特殊性等を踏まえた給与面の改善といった処遇の向上や、若年定年退職制度の下にある自衛官の生活基盤の確保が国の責務であることを踏まえた再就職支援の一層の充実を図る。

 (2)装備体系の見直し

 現有の装備体系を統合運用の観点も踏まえて検証し、合理的な装備体系を構築する。その際、各自衛隊の運用に必要な能力等を踏まえつつ、装備品のファミリー化、装備品の仕様の最適化・共通化、各自衛隊が共通して保有する装備品の共同調達等を行うとともに、航空機等の種類の削減、重要度の低下した装備品の運用停止、費用対効果の低いプロジェクトの見直しや中止等を行う。

 (3)技術基盤の強化

 軍事技術の進展を背景に戦闘様相が大きく変化する中、わが国の優れた科学技術を活かし、政府全体として、防衛装備に繋がる技術基盤を強化することがこれまで以上に重要となっている。

 このため、新たな領域に関する技術や、人工知能等のゲーム・チェンジャーとなり得る最先端技術を始めとする重要技術に対して選択と集中による重点的な投資を行うとともに、研究開発のプロセスの合理化等により研究開発期間の大幅な短縮を図る。この際、企画提案方式の積極的な活用や、今後のわが国の防衛に必要な能力に関する研究開発ビジョンの策定等による予見可能性の向上により、企業の先行投資の促進を図るとともに、その力を最大限に引き出す。

 さらに、国内外の関係機関との技術交流や関係府省との連携の強化、安全保障技術研究推進制度の活用等を通じ、防衛にも応用可能な先進的な民生技術の積極的な活用に努める。

 国内外の先端技術動向について調査・分析等を行うシンクタンクの活用や創設等により、革新的・萌芽(ほうが)的な技術の早期発掘やその育成に向けた体制を強化する。

 (4)装備調達の最適化

 自衛隊の装備品の質および量を必要かつ十分に確保するためには、高性能の装備品を可能な限り安価に取得する必要があり、予算の計上のみならず執行に際しても、徹底したコスト管理・抑制を行う必要がある。

 このため、長期契約を含め、装備品の効率的な調達に資する計画的な取得方法の活用や維持整備の効率化を推進する。また、国内外の企業間競争の促進を図るとともに、国際共同開発・生産や海外移転も念頭に置いた装備品の開発等を推進する。さらに、米国の高性能な装備品を効率的に調達するため、FMS調達の合理化を推進するとともに、米軍等との調達時期・仕様の整合に努める。これらに際しては、ライフサイクル全体を通じたプロジェクト管理の取組をさらに強化する。

 (5)産業基盤の強靱化

 我が国の防衛産業は、装備品の生産・運用・維持整備に必要不可欠の基盤である。高性能な装備品の生産と高い可動率を確保するため、少量多種生産による高コスト化、国際競争力の不足等の課題を克服し、変化する安全保障環境に的確に対応できるよう、産業基盤を強靱化する必要がある。

 このため、装備体系、技術基盤および装備調達に係る各種施策に加え、企業へのインセンティブの付与も含め、企業間の競争環境の創出に向けた契約制度の見直しを行う。また、装備品のサプライチェーンのリスク管理を強化するとともに、輸入装備品等の維持整備等にわが国の防衛産業がさらに参画できるよう努める。さらに、わが国の安全保障に資する場合等に装備移転を認め得るとする防衛装備移転三原則の下、装備品の適切な海外移転を政府一体となって推進するため、必要な運用改善に努める。同時に、装備品に係る重要技術の流出を防ぐため、知的財産管理、技術管理および情報保全の強化を進める。以上の各種施策を通じて、コストダウンと企業競争力の向上を図ることにより、強靱な産業基盤の構築を目指すとともに、そのための更なる方策についても検討していく。

 (6)情報機能の強化

 政策判断や部隊運用に資する情報支援を適時・適切に実施するため、情報機能を強化する。特に、各種事態等の兆候を早期に察知し迅速に対応するとともに、中長期的な軍事動向等を踏まえた各種対応を行うため、情報の収集・処理、分析・共有、保全の各段階における機能を強化する。

 その際、情報処理分野における技術動向にも留意しつつ、新たな領域に係るものも含め、電波情報、画像情報、人的情報、公開情報等に関する収集能力・態勢を強化するとともに、情報収集衛星を運用する内閣衛星情報センター等の国内の関係機関や同盟国等との連携を強化する。また、情報収集・分析要員の確保・育成や、情報共有のためのシステムの整備・連接等を進める。さらに、より強固な情報保全体制を確立するとともに、カウンターインテリジェンスに係る機能を強化する。

 V 自衛隊の体制等

 宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域を含め、領域横断作戦を実現するため、1のとおり統合運用を強化するとともに、各自衛隊の体制を2から4までのとおり整備することとする。また、将来の主要な編成、装備等の具体的規模については、別表のとおりとする。

 1 領域横断作戦の実現のための統合運用

 (1)あらゆる分野で陸海空自衛隊の統合を一層推進するため、自衛隊全体の効果的な能力発揮を迅速に実現し得る効率的な部隊運用態勢や新たな領域に係る態勢を統合幕僚監部において強化するとともに、将来的な統合運用の在り方について検討する。また、各自衛隊間の相互協力の観点を踏まえた警備および被害復旧に係る態勢を構築するなど、各自衛隊の要員の柔軟な活用を図る。

 (2)宇宙空間の状況を常時継続的に監視するとともに、機能保証や相手方の指揮統制・情報通信を妨げることを含め、平時から有事までのあらゆる段階において宇宙利用の優位を確保し得るよう、航空自衛隊において宇宙領域専門部隊を保持するとともに、統合運用に係る態勢を強化する。

 (3)自衛隊の情報通信ネットワークを常時継続的に監視するとともに、わが国への攻撃に際して当該攻撃に用いられる相手方によるサイバー空間の利用を妨げる能力等、サイバー防衛能力を抜本的に強化し得るよう、共同の部隊としてサイバー防衛部隊を保持する。

 (4)電磁波の利用を統合運用の観点から適切に管理・調整し得るよう、統合幕僚監部における態勢を強化する。また、電磁波領域に係る情報収集・分析や、侵攻を企図する相手方のレーダーや通信等の無力化を行い得るよう、各自衛隊における態勢を強化する。

 (5)平素から常時持続的にわが国全土を防護するとともに、多数の複合的な経空脅威に同時対処し得るよう、陸上自衛隊において地対空誘導弾部隊および弾道ミサイル防衛部隊、海上自衛隊においてイージス・システム搭載護衛艦、航空自衛隊において地対空誘導弾部隊を保持し、これらを含む総合ミサイル防空能力を構築する。

 (6)平時から有事までのあらゆる段階において、統合運用の下、自衛隊の部隊等の迅速な機動・展開を行い得るよう、共同の部隊として海上輸送部隊を保持する。

 2 陸上自衛隊の体制

 (1)各種事態に即応し得るよう、高い機動力や警戒監視能力を備え、機動運用を基本とする作戦基本部隊(機動師団、機動旅団および機甲師団)のほか、サイバー領域や電磁波領域における各種作戦、空挺、水陸両用作戦、特殊作戦、航空輸送、特殊武器防護、各国等との安全保障協力等を有効に実施し得るよう、専門的機能を備えた部隊を、機動運用部隊として保持する。

 この際、良好な訓練環境を踏まえ、統合輸送能力により迅速に展開・移動させることを前提として、高い練度を維持した機動運用を基本とする作戦基本部隊の半数を北海道に保持する。

 また、水陸機動団等の機動運用部隊による艦艇と連携した活動や各種の訓練・演習といった平素からの常時継続的な機動、自衛隊配備の空白地域となっている島嶼(とうしょ)部への部隊配備、海上自衛隊および航空自衛隊とのネットワーク化の確立等により、抑止力・対処力の強化を図る。

 (2)島嶼部等に対する侵攻に対処し得るよう、地対艦誘導弾部隊および島嶼防衛用高速滑空弾部隊を保持する。

 (3)(1)に示す機動運用を基本とする部隊以外の作戦基本部隊(師団・旅団)について、戦車および火砲を中心として部隊の編成・装備を見直すほか、各方面隊直轄部隊についても航空火力に係る部隊の編成・装備を見直し、効率化・合理化を徹底した上で、地域の特性に応じて適切に配置する。

 3 海上自衛隊の体制

 (1)常続監視や対潜戦・対機雷戦等の各種作戦の効果的な遂行による周辺海域の防衛や海上交通の安全確保、各国等との安全保障協力等を機動的に実施し得るよう、多様な任務への対応能力を向上させた護衛艦等を含む増強された護衛艦部隊、掃海艦艇部隊および艦載回転翼哨戒機部隊を保持し、これら護衛艦部隊および掃海艦艇部隊から構成される水上艦艇部隊を編成する。また、わが国周辺海域における平素からの警戒監視を強化し得るよう、哨戒艦部隊を保持する。

 その際、多様な任務への対応能力を向上させた護衛艦について、複数クルーでの交替勤務の導入や、警戒監視能力に優れた哨戒艦との連携により、常続監視のための態勢を強化する。

 (2)水中における情報収集・警戒監視を平素からわが国周辺海域で広域にわたり実施するとともに、周辺海域の哨戒および防衛を有効に行い得るよう、増強された潜水艦部隊を保持する。

 その際、試験潜水艦の導入により、潜水艦部隊の運用効率化と能力向上の加速を図り、常続監視のための態勢を強化する。

 (3)洋上における情報収集・警戒監視を平素からわが国周辺海域で広域にわたり実施するとともに、周辺海域の哨戒および防衛を有効に行い得るよう、固定翼哨戒機部隊を保持する。

 4 航空自衛隊の体制

 (1)太平洋側の広大な空域を含むわが国周辺空域の常時継続的な警戒監視等を行い得る警戒管制部隊のほか、グレーゾーンの事態等の情勢緊迫時において、長期間にわたり空中における警戒監視・管制を有効に行い得る増強された警戒航空部隊からなる航空警戒管制部隊を保持する。

 (2)太平洋側の広大な空域を含むわが国周辺空域において、戦闘機とその支援機能が一体となってわが国の防空等を総合的な態勢で行い得るよう、能力の高い戦闘機で増強された戦闘機部隊を保持する。また、戦闘機部隊、警戒航空部隊等が各種作戦を広域かつ持続的に遂行し得るよう、増強された空中給油・輸送部隊を保持する。

 (3)陸上部隊等の機動・展開、各国等との安全保障協力等を効果的に実施し得るよう、航空輸送部隊を保持する。

 (4)わが国から比較的離れた地域での情報収集や事態が緊迫した際の空中での常時継続的な監視を実施し得るよう、無人機部隊を保持する。

 VI 防衛力を支える要素

 防衛力がその真価を発揮するためには、平素から絶えずその能力を維持・向上させるとともに、国民の幅広い理解を得ることが必要である。

 1 訓練・演習

 自衛隊の戦術技量の維持・向上のため、必要に応じて、関係機関、地方公共団体や民間部門とも連携しながら、より実践的で効果的かつ計画的な訓練・演習を実施する。その際、より実践的に訓練を行うため、北海道を始めとした国内の演習場等や国外の良好な訓練環境の整備・活用に加え、米軍施設・区域の共同使用、自衛隊施設や米軍施設・区域以外の場所の利用等を促進するとともに、シミュレーター等をより積極的に導入する。さらに、事態に対処するための各種計画を不断に検証し、見直すため、訓練・演習を積極的に活用する。

 2 衛生

 自衛隊員の壮健性を維持するとともに、各種事態への対処や国内外における多様な任務に対応し得るよう、衛生機能を強化する必要がある。

 このため、隊員の生命を最大限守れるよう、第一線から最終後送先までのシームレスな医療・後送態勢を強化する。その際、地域の特性を踏まえつつ、南西地域における自衛隊の衛生機能の強化を重視する。また、自衛隊病院の拠点化・高機能化等により、効率的で質の高い医療体制を確立する。さらに、自衛隊の部隊の衛生に係る人材確保のため、防衛医科大学校の運営改善を始めとする取組や、戦傷医療対処能力の向上を含む教育・研究を充実・強化する。このほか、能力構築支援を含むさまざまな国際協力に必要な態勢の整備を推進する。

 3 地域コミュニティーとの連携

 一層厳しさと不確実性を増す安全保障環境の下、自衛隊および在日米軍の活動および訓練・演習の多様化、装備品の高度化等が進んでおり、防衛施設周辺の地方公共団体や地元住民の理解および協力を得ることはこれまで以上に重要となっている。

 このため、地方公共団体や地元住民に対し、平素から防衛省・自衛隊の政策や活動に関する積極的な広報を行うとともに、自衛隊および在日米軍の部隊や装備品の配備、訓練・演習等の実施に当たっては、地元に対する説明責任を十分に果たしながら、地元の要望や情勢に応じたきめ細かな調整を実施する。同時に、騒音等への対策を含む防衛施設周辺対策事業を引き続き推進する。

 また、各種事態において自衛隊が迅速かつ確実に活動を行うため、地方公共団体、警察・消防機関といった関係機関との連携を一層強化する。

 地方によっては、自衛隊の部隊の存在が地域コミュニティーの維持・活性化に大きく貢献し、あるいは、自衛隊による急患輸送が地域医療を支えている場合等が存在することを踏まえ、部隊の改編や駐屯地・基地等の配置に当たっては、地方公共団体や地元住民の理解を得られるよう、地域の特性に配慮する。同時に、駐屯地・基地等の運営に当たっては、地元経済への寄与に配慮する。

 4 知的基盤

 安全保障・危機管理に対する国民の理解を促進するため、教育機関等における安全保障教育の推進に取り組む。また、防衛省・自衛隊において、防衛研究所による研究と政策支援を高い水準で両立させるため、政策部門との間の連携を促進するとともに、防衛研究所を中心とする研究体制を一層強化する。その際、政府内の他の研究教育機関や国内外における優れた大学、シンクタンク等との教育・研究に係る組織的な連携を推進する。

 VII 留意事項

 1 本大綱に定める防衛力の在り方は、おおむね10年程度の期間を念頭に置いたものであり、各種施策・計画の実施過程を通じ、国家安全保障会議において定期的に体系的な評価を行う。また、安全保障環境の変化を見据え、真に実効的な防衛力を構築していくため、今後のわが国の防衛に必要な能力に関する検証を実施する。

 2 評価・検証の中で、情勢に重要な変化が見込まれる場合には、その時点における安全保障環境等を勘案して検討を行い、所要の修正を行う。

 3 格段に厳しさを増す財政事情と国民生活に関わる他の予算の重要性等を勘案し、防衛力整備の一層の効率化・合理化を図り、経費の抑制に努めるとともに、国の他の諸施策との調和を図りつつ、防衛力全体として円滑に十全な機能を果たし得るようにする。

 (別表)略

(完)

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