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【主張】
北方領土の日 返還交渉の前提取り戻せ
ロシアが交渉の前提を覆し、極めて厳しい状況の中で「北方領土の日」を迎えた。
安倍晋三首相は北方領土返還要求全国大会で、「最終的な解決に向けて、粘り強く交渉に臨んでいく」と語った。
日本の首相として当然の決意表明ではあるが、問われているのは、聞く耳を持たない相手の態度をどう変えさせるかである。従来通りの対応で、今後の領土交渉に展望を抱くことはできない。
ロシアのラブロフ外相は、日本との平和条約締結交渉を北方領土返還交渉と切り離す考えを表明している。これは、領土問題の存在すら認めないに等しい。
北方領土は第二次大戦の結果、ソ連領になったので、日本はそれを受け入れるべきだ-と繰り返し主張しているのは、まったく受け入れられない。
北方領土は大戦終結前後の混乱に乗じ、ソ連が当時有効だった日ソ中立条約を破り、武力で不法占拠した。過去に日露首脳が署名した合意にも、北方四島の帰属問題を解決し、平和条約を早期に締結すると明記された。
外交部門のトップが、歴史の歪曲(わいきょく)をはばからない発言を重ねている。日本政府は今月の外務次官級協議を予定通り開くというが、そうした発言について撤回を得られる算段はあるのか。