【主張】露の対日姿勢 疑念を募らす軍事演習だ - 産経ニュース

【主張】露の対日姿勢 疑念を募らす軍事演習だ

 安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領が、ロシア極東地方のウラジオストクで通算22回目の会談を行った。だが今回も北方領土をめぐる実質的進展はなかった。
 プーチン氏は北方領土問題について「短期間で解決できると考えるのは稚拙だが、双方が受け入れ可能な解決策を模索する用意がある」と述べた。
 思わせぶりな発言でまたごまかすのか。早期の解決を「稚拙」と語ること自体が、問題を先送りしたい本音を示している。
 首相が、交渉の突破口と期待する四島での共同経済活動については、温室野菜の栽培や観光など5項目の実施に向けてのロードマップ(行程表)で合意した。
 日本は四島を不法占拠したロシアの法制度の下で活動できない。四島への「特別な制度」の導入を求めているが、ロシアは拒んでいる。活動の基盤が整わないまま行程表を作ってどうする。
 そもそも、温室栽培や観光などがなぜ四島返還に結びつくのか。明確に返還を要求し、2年前に途絶えた平和条約締結の実務交渉の再開を促すことが先決だ。
 プーチン氏に不信が募る理由はほかにもある。10日から択捉島で予定されていた元島民の墓参は、ロシア側の「調整がつかない」という理由で中止された。
 そのうえ、軍事演習という露骨な力の誇示をぶつけてきた。
 安倍首相のウラジオストク訪問は、11日からの「東方経済フォーラム」出席のためだ。だが、ロシアは同日から、日本海やオホーツク海も含む極東で兵力30万人を動員し、1981年以来、最大規模の軍事演習「ボストーク(東方)2018」を始めた。中国、モンゴル両軍も初参加した。露中両国の軍事的接近は極めて危うい。
 この演習が対抗勢力に想定するのは、日米同盟や北大西洋条約機構(NATO)しかあり得ない。ロシアが露骨に牙をむいてきたといえよう。北方領土と千島列島は演習域外としたが、これは対日配慮に値しない。首相は会談で、北方領土や周辺でのロシア軍の動向に「注視している」と伝えた。もっと、はっきりとした言葉で抗議すべきだった。
 北方領土の不法占拠やクリミア併合は旧ソ連・ロシアによる「力による現状変更」だ。これを不問に付して経済協力に走っては「法と正義」を損なうことになる。