憲法、アベノミクス、地方創生…両候補の違い鮮明に

自民党総裁選

 7日告示の自民党総裁選に立候補した安倍晋三首相(党総裁)と石破茂元幹事長は、憲法改正やアベノミクス、地方創生など主要政策で主張の違いが鮮明となった。(水内茂幸)

安倍首相…臨時国会に党の改憲案提出

 【憲法改正】安倍首相は、3月の党大会で条文素案を定めた「改憲4項目」について、秋の臨時国会に自民党の憲法改正案として提出を目指す。

 特に、戦争放棄の9条1項と戦力不保持の同2項を維持した上で「9条の2」を新設して、自衛隊の存在を明記する改憲案の実現に意欲をみせる。石破氏が主張する2項削除は、公明党が難色を示すため、国会発議に必要な衆参3分の2以上の賛成が得られにくいとみている。

 首相は「すべての自衛官が誇りを持って任務を全うできる環境を整えることは、今を生きる政治家の責任だ」と訴えてきた。

 【アベノミクス】首相は、政権に返り咲いた平成24年末以来「日本を覆っていた重く暗い空気は、アベノミクスによって完全に一掃できた」と成果を強調してきた。総裁選では、4~6月期の名目国内総生産(GDP)が551兆円と過去最高となったことや、就業者数が安倍政権下で251万人増えたことなど、経済指標の改善をアピールする。

 党に提出した総裁選の所見には、デフレの完全脱却を実現し、ロボットや人工知能(AI)で生産性革命を起こすことなどを通じ「戦後最大のGDP600兆円を実現」と明記した。

 来年10月の消費税率10%への引き上げは予定通り行う方針を示しつつも「増税分の使い道を変える」として、国の借金(国債)返済に充てる予定だった一部を教育・子育て政策に振り分ける。

 【地方創生】首相は、47都道府県すべてで有効求人倍率が1倍を超え、地方税の税収が過去最高になったことなどを挙げて「景気回復の温かい風が地方にも及び始めている」と強調する。

 農林水産品の輸出を1兆円まで増やす目標達成時期を32年から1年前倒すことや、訪日外国人旅行者を32年までに4千万人に増やし、地方経済のさらなる活性化を目指す。災害の多発も受け、防災・減災、国土強靱(きょうじん)化のための緊急対策を3年間で集中的に行う。

 【政治姿勢】学校法人「森友学園」「加計学園」に関係する問題が内閣支持率を一時下落させたことを踏まえ、「行政への信頼を揺るがす事態になっていることに対し、行政の長として深く反省し、お詫(わ)び申しあげる」などと謝罪してきた。公文書管理の厳格化などを図る。

石破氏…地方活性化へ「日本創生会議」

 【憲法改正】立候補にあたり党に提出した「所見」や、一般向けに配る総裁選の政策ビラには、憲法改正に関する記述がない。

 石破氏はもともと憲法改正を主張してきたが、戦力不保持を定めた9条2項を維持して自衛隊を明記する安倍首相案は「緊要性があるとは考えない」と批判する。9条2項を削除し、自衛隊を軍隊と位置づけ、捕虜の扱いなど隊員が国際法上認められる権利を重視するよう求める立場だ。

 ただ、9条改正は議論が煮詰まっていないとして「国民の理解なき改正をスケジュールありきで行うべきでない」と先送りするよう要求。参院選「合区」解消と大規模災害などに備える緊急事態条項の創設を優先するよう訴える。特に合区の解消は、平成34年の参院選までに改憲を行うべきだと主張する。

 【アベノミクス】株価上昇などアベノミクスの成果は認めつつ「異次元の金融緩和は効果を上げたがカンフル剤はいつまでも続かない」と指摘。社会保障制度改革と地方経済の活性化などで持続可能な経済成長を目指す「日本創生戦略 石破ビジョン」を提唱する。

 具体的には、経済政策の司令塔となる「日本創生会議」を創設し、62(2050)年を見据えて医療・年金・介護・子育て政策を一元的に検討する国民会議を立ち上げる。地方創生の徹底と合わせ、現役世代が将来への不安を払拭することで消費を喚起する考えだ。

 【地方創生】「大都市や大企業の経済成長の果実を波及させるという考え方は取らない」として、地方経済や中小企業の持続的発展が少子高齢化対策や経済成長につながると訴える。

 中央省庁や大企業の本社機能などを地方に移転させることで、東京への人口一極集中を是正したいと主張する。地方経済を活性化させて若者が地方で子育てしやすい環境をつくるプランを練る。

 【政治姿勢】政策ビラでは、学校法人「森友学園」「加計学園」問題を念頭に「国民の政治・行政への信頼が大きく揺らぐ今、私は取り戻す」と安倍政権の政治姿勢への批判をにじませ、迅速な党風刷新▽官邸の信頼回復▽国会運営の改善▽行政改革-を進める方針を示した。

 スローガンの「正直、公正」については首相をあてこする表現だと批判されたが、石破氏は「自分がそうありたいと思うだけ」として封印しない方針だ。