海外で慰安婦問題の理解が進まない理由は日本政府の「ダブルスタンダード」にあった

目良浩一の米東海岸レポート(3)
米カリフォルニア州グレンデール市にある慰安婦像=2014年1月

 ■グレンデール慰安婦像設置5周年記念行事

 7月30日、米カリフォルニア州グレンデール市で慰安婦像の設置5周年を記念する式典が行われた。市の協力を得て、「韓国系米国人フォーラム」(KAFC)が開催した。

 式典には元市長で慰安婦像設置の推進者だったフランク・クインテロ氏、元市会議員で現在はカリフォルニア州議のローラ・フリードマン氏、現市長のザレ・シナンヤン氏らが参加した。

 KAFCによると、最近、千葉明・駐ロサンゼルス総領事とみられる日本政府関係者が複数の市議会の有力者に像撤去を要請している。しかし、市議らは記念式典で、慰安婦像の保存・維持する決意を表明した。

 グレンデール市の慰安婦像をめぐっては、私が理事長を務める「歴史の真実を求める世界連合会(GAHT-US)」が2014年に撤去を求めて市を提訴した。最高裁判所にまで上訴した際には、日本政府がわれわれを加勢する意見書を提出したが、17年3月に敗訴が決定した。

 その後、千葉総領事の活動が活発になった。同年夏には、日本の学者が総領事と共にシナンヤン市長を訪れ、「性奴隷」説が捏造であることを解説した。また、その後、同市内にある東大阪市が寄贈した日本庭園を政府のプログラムで日本の造園技師を派遣して大幅に改修・改善した。今年4月には桜祭りを開催し、総領事が市長と共に桜の木の植樹祭を行った。

 市側は、もらえるものは全てもらおうとする態度のようである。

 ■国連人種差別撤廃委員会の対中審査

 一方、GAHTの主要メンバーは、8月にスイス・ジュネーブの国連欧州本部で開かれた人種差別撤廃委員会に出席した。

 8月10日と13日は中国に対する審査が行われた。多くの非政府組織(NGO)から中国による新疆やチベットの住民への差別的扱いや、臓器販売のための犯罪人への非人道的な扱いなどを非難する報告書などが提出された。

 こうした非難を受けた中国政府代表団の反応は、近年の少数民族に対する扱いの改善点に焦点を当て、事態が改善してきていることを強調するものだった。しかし、多くの委員はそれに満足せず、批判的な発言が多く出た。

 批判の的になったのは、新疆で建設されている収容所である。一説によると、百万人を収容する「強制収容所」という。イスラム教徒であるウイグル人に対する強制再教育機関ではないかというのが一般的な見解のようである。

 この収容所について、複数の委員の鋭い批判に対して、中国政府代表団は審査最終日の最後に次のような説明をした。

 「中国政府は宗教について何の制約も課していない。イスラム教徒であっても支障はない。しかし、中国政府は国の統合を非常に重要であると認識している。従って、宗教的な過激主義は許せないのである」と述べた上で「その施設は犯罪を犯した者のための再教育施設である」

 定義の不明確な宗教的な過激主義だけが問題との発言に、会場内では薄笑いが起こった。そして、なおも批判が収まらなかったので、中国政府代表団は「多くの委員は、中国の統一を妨げようとしている人たちの間違った情報に毒されている」と苦し紛れの発言をして自分たちの正当性を主張していた。

 ■対日審査

 8月16日と17日には、日本の審査が行われた。日本に対してはアイヌ問題、沖縄問題、部落問題、在日朝鮮人問題、慰安婦問題などが提起された。外務省総合外交政策局審議官の大鷹正人氏を団長とする日本政府代表団は、これらの問題に丁寧に回答し、委員たちからはかなり高い評価を受けた。

 しかし、部落問題と慰安婦問題には問題が残る。

 部落問題は、日本ではすでに解決された問題であると認識されているようであるが、委員の中には異常と思われるほどの興味を持ち、追及をやめない人がいた。確かに部落問題は複雑な問題であるが、今までに政府が対策を実施したためにそれが利権化して、かえって問題の解決を妨げている面があるのではないか。追及している委員たちにはそこまでの知識はないようであった。

 慰安婦問題について、日本側は多数の女性の名誉と尊厳が損なわれたので、政府は何度も謝罪の意を表明してきていると述べていた。批判の圧力をかわす狙いがあったと思われる。しかし、委員たちは「女性たちを『性奴隷』にした罪悪に対する政府の正式の謝罪がない」「加害者が糾弾されていない」「被害者への補償が不備である」などの従来の批判を繰り返した。

 こうした指摘に対して日本側は、「慰安婦が性奴隷であったというのは間違い」であると主張したが、日本政府の真摯(しんし)な努力にかかわらず、委員たちを説得することはできなかった。

 その根本原因は、政府が採る「ダブルスタンダード」にある。日本側が謝罪し金銭を支払ったというので、委員たちは、日本政府も罪を認めたので「有罪」と考えるのである。加えて、性奴隷ではなかったといえば、「免罪」を意味するようであるが、委員たちは矛盾するこの説明をどのように解釈すればよいか判断できなくなるのである。つまり、謝罪と金銭の支払いは罪を認めたことを意味するが、その罪を認めた側が同時に「性奴隷ではないから罪ではない」というのは理屈が通らないのだ。

 日本政府は、国連および国際社会に対して一貫性のある説明をする必要がある。それは、今までの謝罪が認識の過ちに基づいたものであったと公言し、慰安婦は民間業者による売春活動の一環であること。さらに当時の社会ではそれが合法的な商業活動であったと主張することで、日本政府をとがめる根拠はないとするものだ。「日本無罪論」を首尾一貫主張することが必要である。