貯雪庫で冷房する新庁舎を建設 山形県尾花沢市

 
新庁舎建設が進む山形県尾花沢市。1階の市民ホールを冷房する新雪冷房システムとなるエネルギー棟を指さす高橋隆新庁舎建設課長(柏崎幸三撮影)

 日本有数の豪雪地の一つ、山形県尾花沢市で電気を使わずに冷暖房を行う新庁舎の建設が進んでいる。冬は、灯油と固形燃料で庁舎を温め、夏は、冬の雪を貯蔵して冷気をつくる雪冷房システムを応用したものだ。来年5月竣工の新庁舎は「災害時に防災拠点となる庁舎を」と東日本大震災を経験した市民の要望に応えたものになる。

 昭和34年開所した現庁舎は、暖房施設はあったが、山形の暑い夏を過ごす時期でも冷房施設はなく、平成24年度まで扇風機のみだった。平成14年、小野紀男市長(当時)が「豪雪地・尾花沢市で。この雪を逆に利用する方法を考えてほしい」と、「雪係」を新設。初代「雪係」係長となった菅野他人男(すがのたにお)氏と市民団体「尾花沢市雪研究会」と考案したのが、貯蔵した雪で庁舎の空気を冷房する「雪山簡便冷房システム」だった。独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成を受け、29年度まで実証実験として現庁舎の一部を冷房してきた。

 この雪山簡便冷房システムは、市庁舎敷地に降った雪をブルドーザーで掻き集め、高さ約8メートルの雪山を作る。その上を太陽光線を反射するシルバーシートを含む3重の断熱シートで被覆。外気温で雪山を溶けるの防ぎ、庁舎内の空気を融雪水と雪の冷気で冷やして庁舎に送る循環システムだ。庁舎内の30度の空気は、貯蔵した雪の約5度の冷気で約15度に冷やされ、庁舎の一部(約480平方メートル)を冷やしていく。この雪山簡便冷房システムを体験した市新庁舎建設課長で財政課長の高橋隆氏(58)は「夏の間、扇風機しかなく、職員は汗だくだくで仕事をしてきましたが、それが一気に変わった」と振り返る。

 実証実験として始まったこの雪山簡便冷房システムは29年夏まで使われ、現庁舎の一部を冷やした。建設中の新庁舎には、この雪山簡便冷房システムの精神をいかし、雪を貯蔵するエネルギー棟(貯雪庫)を約3億9000万円かけ建設中だ。

 エネルギー棟は、3重の断熱シートで被覆した雪山簡便冷房システムと異なり、地上2階1部平屋建ての鉄骨造りで高さ約9メートル。1300トン必要だった雪もわずか180トンで、新庁舎1階の市民ホール部を冷房する計画だ。

 来年5月に開所する新庁舎の熱源は、貯雪庫に貯めた雪と固形燃料、灯油の3方式で、電気を使わずに冷房していくが、この新冷房システムで新市庁舎全館を冷房すると、エアコンだけの場合の1・47倍のコストがかかる。市では、「『市庁舎は防災拠点としての機能を最優先してほしい』という市民要望を生かすことに決まった」と同市新庁舎建設課の鈴木学係長(41)は「市民には、熱源を電気だけに頼ることに不安がありました。その不安を解消するため、停電になったとしても市役所が防災拠点になるよう、熱源を雪、固形燃料、灯油にし、電気は一切使わない冷暖房システムにしたんです」と話す。

 岐阜県の高山市、新潟県の高田市とならび、日本でも有数の豪雪地として知られる山形県尾花沢市。高橋氏は言う。「以前、使用していた現庁舎の遺伝子を新庁舎にも引き継いでいくんです」。

 現庁舎の“遺伝子”を引き継ぐ尾花沢市の電気に頼らない新庁舎は来年5月にお披露目となる。