日韓外相、慰安婦合意議題に触れず 韓国版「微笑外交」に懸念

 
日韓外相会談について記者団に説明する河野太郎外相=17日、米首都ワシントンのホテル(加納宏幸撮影)

 米国を訪問していた河野太郎外相は17日午前(日本時間同日夜)、韓国の康京和外相とワシントンのホテルで会談し、拉致問題の解決に向け日韓で連携することを確認した。しかし、慰安婦問題に関する日韓合意には触れなかった。文在寅政権は首脳、外相会談で「未来志向の日韓関係」を強調する裏で合意を覆すかのような言動を繰り返している。対北朝鮮で日米韓の連携を重視するあまり、韓国版「微笑外交」の術中にはまる懸念もある。

 「ICBM(大陸間弾道ミサイル)だけでなく、中短距離ミサイルの廃棄を実現させる必要がある。日米韓が緊密にやり取りをしていこうということだ」

 河野氏は康氏との会談後、記者団にこう強調した。米朝が米国に届くICBM廃棄だけで合意に達すれば、中短距離ミサイルの射程内にある日韓の安全保障は取り残される。こうした「デカップリング(離間)」の懸念を払拭するためにも日韓の連携が重要であることを河野氏は訴えた。

 両外相は日韓関係に関し「ともに困難な問題を適切にマネージしつつ、未来志向の関係構築に向けて協力していく」ことも確認した。一方で、慰安婦に関する平成27年12月の日韓合意については、両外相とも言及しなかった。特に河野氏が着実な履行を迫らなかったことは疑問が残る。

 河野氏は「北朝鮮問題にほぼ時間を費やし、個別の案件に入る時間はなかった」と釈明したが、会談時間は約45分間で、決して短かったとはいえない。

 河野、康両氏はいずれも英語が得意で国際経験豊かな経歴が共通し、頻繁に電話でやり取りする。その姿は「やっと日韓も欧州諸国の外相並みになってきた」(外務省幹部)とも評される。文大統領も安倍晋三首相との会談ではソフトな物腰で、首脳会談に同席した日本政府高官は「文氏は面と向かって相手の嫌がることを言うことはない」と明かす。

 しかし、文氏は今月1日に行われた独立運動記念式典演説で「加害者である日本政府が『終わった』と言ってはならない」と、名指しで批判した。康氏も2月に国連人権理事会での演説で、元慰安婦の救済を図る上で日韓合意は十分でないと主張した。

 文政権が見せる硬軟両様の顔は、核・ミサイル開発を続けながら、経済援助欲しさに非核化に言及する北朝鮮の「微笑外交」と重なる。北朝鮮情勢が差し迫った問題であることは確かだが、日韓合意の履行を韓国政府に求めることを怠れば、誤ったメッセージを送ることにもなりかねない。(杉本康士、小川真由美)