都民ファーストがどう転んでも維新になれない3つの理由…「小池新党」と「橋下新党」はこれだけ違った!

野党ウオッチ
東京都議選で当選確実となった候補者の名前の上に花を付ける小池百合子都知事=7月2日、東京都新宿区(大西正純撮影)

 東京都議選は小池百合子都知事(65)が率いた地域政党「都民ファーストの会」の圧勝に終わった。地域政党が既存政党を押さえ込むという構図は、日本維新の会の母体である「大阪維新の会」が躍進した6年前の統一地方選と重なる。地方選での勝利を機に国政進出の観測がまことしやかに出回り始めた点まで共通しているが、ちょっと待った! 両者は似て非なるものだと断じる「3つの理由」がある。「次の選挙が危ないから都民ファーストに移ろうかな…」と思案中の国会議員のセンセイ方は、ぜひご一考を-。

 候補者名がずらりと記されたボードが、当選を示す「百合子グリーン」の造花でまたたく間に埋め尽くされた。

 「都民が新しい議会を求めた!」

 都議選が開票された7月2日夜、小池氏は、都庁近くのホテル内に設けられた都民ファーストの会の開票センターで満面の笑みを見せた。

 都議会定数の127に対し、追加公認した無所属を含め55議席、公明党なども含む支持勢力でみれば過半数の79議席-。地滑り的勝利ともいえる都民ファーストの会の戦果は、平成23年4月、大阪府知事だった橋下徹氏(48)率いる大阪維新の会が「大阪春の陣」と位置づけて臨んだ統一地方選での快進撃を思い起こさせた。

 大阪維新の会はこの選挙で、大阪府議会で改選前の29議席から57議席に大きく勢力を伸ばし、定数109(当時)の過半数を獲得した。大阪、堺の府内2政令市議選でも第一党の座を得た。

 確かに「有権者と既存政党の戦い」(橋下氏)を演出した選挙戦には都民ファーストの会と通底する部分もあった。

 それでも両者は異なると言い切る理由は何か。1点目は「看板」の有無である。

 大阪維新の会は「大阪都構想」という具体的な政策の実現のために結成された地域政党だ。日本維新の会として国政に進出したのも、都構想実現という大眼目のためだった。

 その後、都構想は27年5月の住民投票で否決されたが、新たな制度設計を行う法定協議会が今年6月に再設置され、松井一郎大阪府知事(53)=日本維新の会代表、大阪維新の会代表=は30年秋の住民投票実施を目指している。現在も都構想は維新のレゾンデートル(存在意義)であり続けているわけだ。

 ひるがえって、小池氏や都民ファーストの会が都議選で掲げていたものは「古い議会を新しく」「改革を進める」といった漠然としたお題目ばかりだった。少なくとも、大阪市を廃止して特別区に再編する都構想に匹敵するほどの具体的な政策は示していなかった。焦点の市場移転問題をめぐって小池氏が選挙直前になって示した「市場両立案」も、選挙向けの結論先送りの方便という性格が色濃かった。

 結局のところ、都民ファーストの会とは「何となく新しいことをしてくれそうだ」というぼんやりとした期待の受け皿でしかなかったのだと私は理解する。

 統一地方選の投開票後、橋下氏は次のように選挙戦を総括している。

 「大阪都構想は支持されなかった」

 「府議会では支持を受けたが、それでもぎりぎり」

 橋下氏は、大阪市議選で半数に達しなかったことから都構想への賛同が十分でなかったと判断し、選挙結果を「敗北」と断じたわけだ。第一党になったにもかかわらず、である。

 対照的に小池氏は、都議会で半数に届かない状況でも「第一党の座を確保することができた」と喜んだ。無理もない。具体的な「やりたいこと」がないのだから「議席を積み増しさえすれば万々歳」なのである。

 2点目の違いは「人材」だ。

 追加公認を含む都民ファーストの会の都議選当選者55人のうち、現職はわずか11人しかおらず、39人が新人で占められている。しかも、このうち25人は議員経験が全くない。どれだけ多数の勢力を構成しようとも、他会派との折衝もこなせず議案も満足に作成できないようではオモチャの兵隊も同然である。

 大阪維新の会の場合、23年4月の府議選で当選した57人のうち約半数の28人は現職だった。

 もちろん、現職の頭数だけを単純に比べようというわけではない。政務活動費の不適切支出など、大阪維新の会の地方議員に相次いだ不祥事を不問に付すつもりもない。

 ただ、現職28人の中に、前出の松井氏や、現・日本維新の会政調会長の浅田均参院議員(66)ら、当時府議として中堅クラスの期数に達していたメンバーが多く含まれていたことは、都民ファーストの会との違いとして強調しておきたい。

 松井氏はその後、橋下氏が大阪市長選にくら替え当選した23年11月の「大阪ダブル選」で府知事に就き、橋下氏の右腕として存在感を発揮した。浅田氏は、国政進出に向けて打ち出した政策集「維新八策」を中心になってとりまとめた。「発信力の橋下」「武闘派の松井」「頭脳の浅田」のトロイカ体制は、初期の大阪維新の会の牽引力だった。

 都民ファーストの会の当選者を見渡してみても、残念ながらこうしたポテンシャルを感じさせる人物は見当たらない。

 3点目は「ガバナンス(統治)」である。

 都議選後、小池氏は都民ファーストの会の代表を退き、後任に知事特別秘書の野田数氏(43)を充てた。

 都民から選ばれた議員の集団のトップに、選挙の洗礼を受けてもいない秘書が就く-。こんな有権者を愚弄し切った政党はない。人事は、小池氏と野田氏の2人だけの「臨時役員会」なる会合で決まったそうだが、いくら橋下個人商店と揶揄された維新でも、ここまでムチャな意思決定を断行したことはなかった。

 この珍妙な人事は、2点目として挙げた「人材」の不足の証左でもある。都議選当選者の中に党を束ねる力量のある人物がいないことの裏返しなのだ。

 産経新聞が東京都議選の出口調査データを衆院選の東京25選挙区に当てはめて獲得議席シミュレーションを実施したところ、都民ファーストの会が国政に進出した場合、24議席を獲得するという結果が出た。

 しかし、この試算は「今すぐ衆院選があれば」という前提である。前述した「看板なし」「人材なし」「ガバナンスなし」という3つの理由から、都民ファーストの会への有権者の期待感は、次期衆院選までに確実にしぼんでいると予想できる。

 あえて都民ファーストの会の存在意義を見いだすとするなら、受け皿さえあれば自民党1強はたやすく崩れるということを、どんな「論」よりも力強く実証してみせたことだろう。野党第一党・民進党の迷走が続く中、消極的に自民党を支持してきた有権者にとっては、「非自民勢力結集」への期待感を再び抱く好機になったのではないか。(政治部 松本学)