受動喫煙対策 

ニッポンの議論
三原じゅん子氏(左)と鈴木俊一氏

 他人のたばこの煙を吸い込む受動喫煙の対策を強化する健康増進法改正案は先の通常国会に提出されず、対応は秋の臨時国会に先送りされた。飲食店について厚生労働省案は原則屋内禁煙にした上で喫煙専用室の設置を認め、30平方メートル以下のバーなどは規制対象外にした。自民党案は150平方メートル以下の飲食店が規制対象外だ。厚労省案を支持する規制推進派の三原じゅん子参院議員と、党たばこ特別委員長で規制慎重派の鈴木俊一衆院議員に話を聞いた。(坂井広志)

三原じゅん子氏 防止策に政治生命かける

 --飲食店に関し30平方メートル以下のバーやスナックなどを規制対象外とした厚生労働省案をどう思うか

 「厚労省案より緩くなることはあり得ない。喫煙専用室の設置は最小限にすべきだ。政府は2020年東京五輪・パラリンピックに向けて受動喫煙を徹底させる方針だが、五輪とは関係なく今すぐにやるべきだ。受動喫煙を受けなければ、1万5000人ががんなどで死亡せずに済んだとの推計がある。政府が本気でやれば1万5000人が助かったと思わなければだめだ」

 --受動喫煙防止に熱心に取り組んでいる動機は何か

 「命を守ることに理由はない。先の通常国会で防止強化策を盛り込んだ健康増進法改正案を提出することができなかった。この法律すら作れなかったことに憤りを感じている」

 --自民党案は飲食店の業態を分けずに、客室面積100平方メートル以下、厨房50平方メートル以下の計150平方メートル以下は、「禁煙」「分煙」と表示すれば喫煙を認めるとしている

 「論外だ。そもそも店の広さで決めるのはちょっと違うと思う。規制推進派の中にはこの案で了承した議員がいるが、折れていいことと悪いことがある。客室面積100平方メートル以下のレストランなどの飲食店は東京都の場合、85・7%を占める。『うちは吸える』と堂々と言っていいことになる。それは喫煙に対しお墨付きを与えることにほかならない。現状の後退だ」

 --自民党と塩崎恭久厚労相との間で合意できなかった原因は何か

 「『塩崎氏が歩み寄らなかったからだ』とよく言われているが、決してそうではないと思う。党側は規制推進派に対し『法案を提出して一歩でも進めたほうがいい』という言い方をしてくるが、自民党案は恒久措置だ。一歩でも前に進めようという話ではない。矛盾している」

 --三原氏は子宮頸がんのサバイバー(生存者)だが、受動喫煙に対し恐怖感はあるか

 「ものすごく怖い」

 --受動喫煙規制を訴えると選挙への影響があるのでは

 「支援者から怒られることもあるし、嫌がられることもあるが、関係ない。私は『命を守る』と主張して投票してもらった。政治生命をかけている。それで私を認めないというなら、致し方ない話で、何の迷いもない。声を上げたいが上げられない子供や病気の人など、そういう人たちにどれだけ寄り添った法律を作れるかが政治家に問われていると思う」

 --秋の臨時国会に向けてお考えを

 「通常国会では国会対策委員会も首相官邸も健康増進法改正案の優先順位は低かったのではないか。臨時国会では必ず厚労省案を成立させたい」

 〈みはら・じゅんこ〉昭和39年、東京都生まれ。52歳。女優を経て平成22年7月の参院選全国比例代表で初当選。28年7月の参院選では神奈川選挙区から出馬し2期目の当選。厚労委員会委員などを務める。

鈴木俊一氏 日本は最低レベルにあらず

 --自ら所属する自民党たばこ議員連盟の受動喫煙に対するスタンスは

 「欲せざる受動喫煙はしっかり対応しなければならない。そのために徹底した分煙を行うべきだ。厚生労働省案とは立脚点が違う。厚労省は健康増進、われわれは健康に加えて葉タバコ生産者や販売業者、飲食店などの影響を最小限に抑えたいと思っている」

 --世界保健機関(WHO)は日本を4段階のうち世界最低レベルに分類している

 「そもそも『世界最低レベル』という言葉はWHOではなく、厚労省の造語でレッテル貼りだ。WHOのカテゴリーで日本と同じ分類に入るのは70カ国で最多。G7のうち5カ国が含まれている。『世界最低レベル』という言葉に多くの国民は『日本はごく少数派でよほど遅れているんだな。2020年東京五輪・パラリンピックに向けて規制を強化しなければ』と思うだろう。これは厚労省による印象操作だ。WHOの分類は法規制の対象がいくつかあるかという外形的なものにすぎず、実態で評価しなければならない」

 --その実態とは

 「屋外のたばこ規制は東京23区中22区で行われている。政令指定都市などを含めると、約6千万人、つまり国民の50%以上が居住するエリアで規制されている。屋内でも自主的な禁煙が進んでいる。実態から言えば、日本の喫煙環境は世界最低レベルどころか世界水準をいっている。産経新聞社とFNNが3月に実施した合同世論調査では、飲食店を原則禁煙とする厚労省案がよいと回答したのは37・6%で、店側が『喫煙』『分煙』『禁煙』を表示で義務づけるたばこ議連の案を支持する声は60・3%だった」

 --客室面積100平方メートル以下、厨房(ちゅうぼう)50平方メートル以下の計150平方メートル以下は規制対象外にする自民党案にたばこ議連は了承した

 「神奈川、兵庫両県の例に準じた。合理的なところではないか」

 --自民党と塩崎恭久厚労相が合意できなかったのはなぜか

 「この問題は長い経緯がある。規制推進派と慎重派の双方の議連がおのおの議員立法を作って調整しようとしたが、できなかった。両派の溝を埋めるのは大変なこと。それを乗り越えて茂木敏充政調会長のイニシアチブで両派がギリギリ歩み寄って自民党案が作られた。この案でいくしかない」

 -塩崎氏は激変緩和措置を入れる妥協案を出してきたが

 「何年間か猶予して、その後厚労省案にするというのは論外だ。何年か後に必要があれば再検討する。それなら、同床異夢かもしれないが、両派は受け入れられる。そういうのが政治だと思う。それが分からないなら、まとまるものもまとまらない」

 〈すずき・しゅんいち〉昭和28年生まれ。岩手県出身。64歳。早大教育学部卒。平成2年2月の衆院選で旧岩手1区から出馬し初当選。現在8期目。厚生政務次官、厚生労働委員長、環境相などを歴任。