「生前退位」実現に特別措置法 政府検討、皇室典範の付則に「特別の場合に限る」と明記へ

天皇陛下「お気持ち」
天皇陛下がビデオメッセージでお気持ちを表明され、産経新聞が号外を発行。号外を手に取る人ら=8月8日午後、JR東京駅前(古厩正樹撮影)

年内の有識者会議設置は見送り

 政府が、天皇陛下の「生前退位」について、特別措置法制定で可能にする検討に入ったことが4日、分かった。ただ、憲法は皇位継承について「皇室典範の定めるところによる」と規定していることから、皇室典範の付則に「特別の場合」に限定して特措法で対応できる旨を追加する。複数の政府関係者が明らかにした。また、皇室に関する問題は慎重な上にも慎重な協議を必要とすることから、年内に有識者会議を設けることは見送る。

 政府は当面、内閣官房の皇室典範改正準備室を中心に、識者などから幅広い意見を聴取し、特措法案の内容を詰める。提出は年明け以降になる見通しだ。

 今回、特措法を制定するのは、陛下のご意向について国内の各種世論が高い割合で理解を示していることから、政府としてはあまり時間をかけずに対応する必要があるためだ。また、皇位継承のあり方への影響を最低限に抑える狙いもあるとみられる。

 政府は当初、特措法単体の制定による対応も検討したが、憲法は「皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する」(2条)と定めていることから、単独では憲法違反になると判断した。

 そのため、皇室典範の付則を追加する方法での調整を進めている。この場合、皇室典範の本則部分の改正に当たらないことから、典範改正に慎重な世論にも配慮できるとみている。

 一方、政府は安定的な皇室制度のあり方に関しても今後対応する必要があるとみている。安倍晋三首相や菅義偉官房長官は皇位が例外なく父方の系統に天皇を持つ男系で引き継がれてきた歴史的な重みを指摘しており、それを踏まえた上で女性皇族の身分や「女性宮家」などについて引き続き検討していく。

 天皇陛下は先月8日、高齢となった象徴天皇のあり方について、約11分間にわたるビデオメッセージで表明し、「生前退位」の実現への強い思いをにじませられた。皇室典範で規定された「摂政」にも否定的な考えを示された。

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 生前退位 天皇が存命中に、その地位を皇太子に譲ること。江戸時代後期の光格天皇を最後に約200年間、例がない。憲法は皇位継承について「皇室典範の定めるところによる」としている。皇室典範は、皇位の継承を「皇統に属する男系の男子が、これを継承する」と規定。順位を(1)皇長子(天皇の長男)(2)皇長孫(天皇の長男の子)(3)その他の皇長子の子孫-などと定めている。「天皇が崩じたときは、皇嗣(皇位継承権第1位)が、直ちに即位する」と規定しているため、現行では生前退位は認められていない。