北の猫はBARに(も)いる 北海道・函館【肉球マニアに捧ぐ猫の日SPL.】
更新 sty2102220002 今年もこの日がやってきました。2月22日。そう「ニャンニャンニャン」で「猫の日」です。
今日が「竹島の日」であることは先刻承知の上ですが、産経の猫カメラマンとして、敢えて!緊急事態宣言前に出会った看板猫の記事をご紹介させていただきます
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30年ぶりの函館。まさか猫を探しに来るとは、夢にも思わなかった。一面銀世界の駅前から、サラサラの新雪を踏みしめながら歩くこと数分。蔦に覆われたおしゃれなバーのドアを開けた。「いらっしゃい」の声と同時に、一匹の猫と目が合う。
ふ、福々しい!見るからに健康そうな、その猫の名は「あんこ(雌2歳)」。生まれて間もない頃、この店「おくとーばー28」のママ、中村有美さんに引き取られた。ご主人でマスターの薫さんは「自分、元々は犬派だよ」。以前は大型犬の「ラブラドールレトリバー」を飼っており、看板犬のいる店だったのだとか。
そんな薫さんだが、ひとたび猫を迎えるや「猫かわいがり」を地で行く溺愛ぶり。あんこちゃんもパパが大好きで顔を近づけと必ず鼻キッスを交わすのだ。
「強いて言うなら“生き物派”。動物はみんな可愛いし大切」と有美さん。買い物や散歩の途中でも、猫の姿を見かけると「ご飯足りているかな、寝床はあるかな」と気になってしまう。
店の二階は自宅になっており、もう一匹の猫がいるが「今は体調崩していて接客はお休み中」とのこと。
45年前の1975年10月28日、薫さんはこの地に店を構えた。店名の由来は“創業日”にちなんだものだ。
結婚後も「夫婦であまり無理せずマイペースにやってきました」有美さんはとびきりの笑顔で話す。カウンターに立つ二人の温かい人柄が、店内を最高の空間に作り上げる。
下戸を白状した肉球マニアカメラマンに「こんなのはどう?」と勧められたウイスキーのロックは香りや後味がスッキリ。プロの助言に感服した。
「自家製の生ハムだよ」自信有りげなマスターがナイフでスライスしながらニヤリ。「約25年前から作っている。自分で納得できる味を求めてスペインまで修行に行った」という。そんな“自信作”を口にして驚かされた。曲がりなりにも五輪やサッカーW杯などの欧州取材時、何度となく「本場の味」を口にして来たが、そのどれよりも旨い。ウイスキーに合う。“口福(こうふく)”の極みだ。
店内の「函館競馬場馬主役員室A」のプレートが気になり尋ねると、函館競馬場が改修の際、関係者から贈られたものだった。競馬ファンの薫さん、毎年夏の函館開催では店の常連らと団体で競馬場に繰り出すそうだ。店を訪れる競馬関係者も多く、有名ジョッキーや調教師の名前も耳にした。きっと皆さん、この店のカウンターの居心地の良さを知って常連になるのだろう。
自分もその一人だ。800キロ離れた“行きつけの店”で心休まる時間を過ごす…そのために日々を頑張る気にさせてくれる。
北海道新幹線の開通で東京-函館間に鉄道という新たな選択肢ができた。
「コロナ禍で外国人観光客が減った」という声が取材中もあちこちで聞かれたが、この難局を乗り越え、新しい日常を受け入れ、日本の、そして猫たちの更なる魅力を探求していきたい。(写真報道局 尾崎修二)