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【美しきにっぽん】にっぽんの色 無二の色 阿波藍・徳島

伝統・文化

【美しきにっぽん】にっぽんの色 無二の色 阿波藍・徳島

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藍の葉を蒅にするために発酵を促す「切り返し」作業。湯気と独特の匂いが立ち上る =徳島県上板町 藍の葉を蒅にするために発酵を促す「切り返し」作業。湯気と独特の匂いが立ち上る =徳島県上板町
古庄紀治さんの手で藍染された綿の布。水で洗うと美しい藍色が現れた =徳島市
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古庄紀治さんの手で藍染された綿の布。水で洗うと美しい藍色が現れた =徳島市フルスクリーンで見る 閉じる

 布が染液から引き上げられると、空気に触れた部分から、茶がかった緑が青みを帯びていく。水で洗い流すと、陽光を浴びた藍が水に浮かび、揺らいだ。「JAPAN BLUE」ともいわれる日本を代表する色が生まれる瞬間だ。

 古くから藍の産地として知られる徳島県。生産が盛んなのは吉野川で頻発した氾濫が、栽培に適した上流の肥沃な土を流域に流入させたことが要因の一つだ。

藍染に浸ける回数などで色の濃さを調整するという
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 藍の葉はそのまま染料として使用することもできるが、この地では保存性を高めるため、堆肥状に加工し「蒅(すくも)」にする。徳島で生産された高品質の蒅は江戸時代に市場を席巻し、旧国名をとり「阿波藍(あわあい)」と呼ばれ広く流通した。

吉野川と日没を迎え闇に沈みゆく山並み。川はかつて氾濫のたび肥沃な土を流域にもたらした =徳島県美馬市
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吉野川と日没を迎え闇に沈みゆく山並み。川はかつて氾濫のたび肥沃な土を流域にもたらした =徳島県美馬市フルスクリーンで見る 閉じる

 蒅を製造、販売するのは今や県内で5軒のみとなった「藍師(あいし)」と呼ばれる職人である。夏に収穫された葉を蒅にするためには乾燥と発酵が必要で、藍師は発酵を促すための「切り返し」と呼ばれる作業を秋から冬にかけて行う。

出来上がった蒅(すくも)
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 底冷えする朝、「寝床」と呼ばれる作業場で台形状に積み上げられた葉の山に水を打ってかき混ぜられると、発酵に伴う湯気と独特の匂いが立ち込め、周囲を満たしていった。

「葉に付いた微生物に水と酸素を十分に与え発酵させる。発酵の進み具合は向こうから匂いでサインを送ってくれます」と藍師で新居(にい)製藍所6代目の新居修さん(72)が教えてくれた。

 阿波藍は、明治以降、合成藍の普及で急速に衰退、昭和40年には藍の栽培面積もピーク時の1万5千ヘクタールから4ヘクタールにまで激減した。「藍作りでは生活できない」。新居さんも一時は家業の傍らで養豚を手がけたこともあった。取引のあった久留米絣(がすり)の職人から「新居さんとこの蒅が必要や」と直に頼まれ、蒅を作り続けた。「数年間は余分に注文してくれた。足を向けて寝れません」

藍葉の発酵を促す「切り返し」作業。湯気と独特の臭気が立ち上る =徳島県上板町
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藍葉の発酵を促す「切り返し」作業。湯気と独特の臭気が立ち上る =徳島県上板町フルスクリーンで見る 閉じる

 できた蒅は藍師から染師へと渡る。古庄染工場(徳島市)の6代目、染師の古庄紀治さん(73)は「藍色の中でも好きな色は薄い秘色(ひそく)と、赤みがかった深縹(こきはなだ)。日光にも擦(す)れにも強い、退色しない色が理想です」と、「藍色48色」ともいわれる多彩な藍の魅力を穏やかに話す。

 自然指向が高まり、改めて注目を集める阿波藍。新居製藍所では年間250~300俵の蒅を全国に出荷している。新居さんは「藍の色は化学染料では出せない。その色を大事に出して染師さんに作品を作ってもらえる。藍師はそれが一番うれしいね」と話した。(写真報道局 恵守乾)

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