産経フォト

【東日本大震災 10年へ】待ち続ける「思い出の品」 陸前高田市「三陸アーカイブ減災センター」

東日本大震災

【東日本大震災 10年へ】待ち続ける「思い出の品」 陸前高田市「三陸アーカイブ減災センター」

更新 sty2010270001
「野菜コンテナ」をつなぎ合わせた棚にアルバムが並ぶ。秋山代表は「人によっては心の中の悲しみの蓋を開けてしまうこともある。『見つかってよかったね』と、気軽に声をかけることはできない」と話す =岩手県陸前高田市(川口良介撮影) 「野菜コンテナ」をつなぎ合わせた棚にアルバムが並ぶ。秋山代表は「人によっては心の中の悲しみの蓋を開けてしまうこともある。『見つかってよかったね』と、気軽に声をかけることはできない」と話す =岩手県陸前高田市(川口良介撮影)
「まさか9年ぶりに戻ってくるとは思いも寄らなかった」。今月中旬、千葉県柏市の山口正一さん(64)に写真が返却された。酒屋でアルバイトをしていた19歳当時の写真だという。「陸前高田市内の実家は流され、思い出の品は何ひとつ残っていなかった。本当にうれしい」とほほ笑んだ =千葉県柏市(川口良介撮影)
画像を拡大する
「まさか9年ぶりに戻ってくるとは思いも寄らなかった」。今月中旬、千葉県柏市の山口正一さん(64)に写真が返却された。酒屋でアルバイトをしていた19歳当時の写真だという。「陸前高田市内の実家は流され、思い出の品は何ひとつ残っていなかった。本当にうれしい」とほほ笑んだ =千葉県柏市(川口良介撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 母親の腕の中で静かに眠る赤ん坊、緊張した面持ちの新郎新婦…。何げない日常や人生の節目で撮影された写真。「負けるながんばれ」と書かれた野球用手袋や海水に浸りさびついたカメラもある。

 東日本大震災の津波で流された「思い出の品」が現在も持ち主のもとに帰る日を待っている。

「三陸アーカイブ減災センター」の常設返却会場には、今も約6万9千枚の写真、約2700点の物品が並ぶ =岩手県陸前高田市(川口良介撮影)
画像を拡大する
「三陸アーカイブ減災センター」の常設返却会場には、今も約6万9千枚の写真、約2700点の物品が並ぶ =岩手県陸前高田市(川口良介撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 岩手県陸前高田市の「三陸アーカイブ減災センター」は、市内で見つかった写真や物品を持ち主に返却する活動を続けている。常設の返却会場には、写真約6万9千枚、物品約2700点が並ぶ。

「三陸アーカイブ減災センター」の常設返却会場には、今も約6万9千枚の写真、約2700点の物品が並ぶ =岩手県陸前高田市(川口良介撮影)
画像を拡大する
「三陸アーカイブ減災センター」の常設返却会場には、今も約6万9千枚の写真、約2700点の物品が並ぶ =岩手県陸前高田市(川口良介撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 同センターの秋山真理代表は「病院の診察券1枚が形見の品という人もいる。残された物の価値判断を私たちでは下せない」と、活動の難しさを話す。定期的に開かれる返却会は、震災直後から始まり、仙台や東京などでも開催している。全国どこからでも閲覧できるよう、データベース化も進む。

「三陸アーカイブ減災センター」の常設返却会場には、今も約6万9千枚の写真、約2700点の物品が並ぶ =岩手県陸前高田市(川口良介撮影)
画像を拡大する
「三陸アーカイブ減災センター」の常設返却会場には、今も約6万9千枚の写真、約2700点の物品が並ぶ =岩手県陸前高田市(川口良介撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 来年3月には震災から10年を迎えるが今もなお、精神的に立ち直れない人は数多くいる。報道で活動を知った男性から先日、「まだ1人で見に行くことができない」と電話があった。秋山代表は「外から見る10年は節目かもしれない。けれど被災者に明確な節目はない」と、人それぞれのタイミングを待つことの必要性を訴える。

 「心の復興」事業による国の支援は今年度で終了する見通しだ。同センターでは寄付を募るなどして、今後も返却活動を継続させていく方針だが、先行きは不透明だ。震災を風化させないためにも、在りし日の思い出を残す活動が続いてほしい。(写真報道局 川口良介)

スゴい!もっと見る

瞬間ランキングもっと見る

話題のランキング