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【美しきにっぽん】風から集落守る 先人の知恵 石垣の里(愛媛県愛南町外泊)

自然・風景

【美しきにっぽん】風から集落守る 先人の知恵 石垣の里(愛媛県愛南町外泊)

更新 sty2010070002
家屋を風から守る石垣が連なる「石垣の里」。山の中腹には段々畑が広がる =愛媛県愛南町(沢野貴信撮影) 家屋を風から守る石垣が連なる「石垣の里」。山の中腹には段々畑が広がる =愛媛県愛南町(沢野貴信撮影)
宇和海に面した山間にある集落。斜面に歩道が続き、車は途中までしか入ることができない =愛媛県愛南町(沢野貴信撮影)
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宇和海に面した山間にある集落。斜面に歩道が続き、車は途中までしか入ることができない =愛媛県愛南町(沢野貴信撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 木造の日本家屋を囲む高い石垣が日の光を反射し、濃い陰影をつくっていた。漁港から集落を仰ぐと堅固な城砦(じょうさい)に見えた。

 四国の南西に位置する「石垣の里」、愛媛県愛南町外泊(そとどまり)地区を訪れた。海に面した急斜面に家屋が集まり、それぞれの区画に石が高く積まれていた。

海を見渡せるように石垣の一部が切り抜かれている =愛媛県愛南町(沢野貴信撮影)
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海を見渡せるように石垣の一部が切り抜かれている =愛媛県愛南町(沢野貴信撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 なぜ石垣が積まれたのか。この地区は江戸期末から明治初期にかけ形成された入植地だ。近隣の集落で人口が増え、十数年かけて山を切り開き、50世帯が入った。しかし、この地域は冬は北西から吹き付ける強い季節風があり、夏から秋にかけ台風が来る。防風のために石垣が必要だった。

空からみた石垣の里 =愛媛県愛南町(ドローン使用、沢野貴信撮影)
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空からみた石垣の里 =愛媛県愛南町(ドローン使用、沢野貴信撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 石垣の材料は山を切り崩した際に出た石を使った。基礎部分に大きめの石を積み、その上に風を防ぐための小石を積んだ。高いもので約7メートルになり、家屋を覆ったという。当時は漁業が地区の人々の生活を支え、明治から150年以上にわたり、石垣と共に暮らしてきた。

明かりがともった「石垣の里」 =愛媛県愛南町(沢野貴信撮影)
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明かりがともった「石垣の里」 =愛媛県愛南町(沢野貴信撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 外泊地区が成立した時期には、周辺の海沿いの地域にも同様の石垣があったが、現在まで残る地区はほとんどない。こうした点から外泊地区は平成19年に財団法人古都保存財団(現・古都飛鳥保存財団)が選ぶ「美しい日本の歴史的風土100選」に選ばれた。

空からみた石垣の里 =愛媛県愛南町(ドローン使用、沢野貴信撮影)
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空からみた石垣の里 =愛媛県愛南町(ドローン使用、沢野貴信撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 最後の「石垣の里」にも存続の危機が忍び寄っている。昭和29年には地区の人口が379人いたという記録も残るが、現在の居住者は33世帯61人。半分以上が65歳以上の高齢者だ。厳しい気候に加え、急な斜面にある集落には車が入ることができない。このままでは生活を維持していくのも厳しい。

集落で民宿を営む吉田清一さん =愛媛県愛南町(沢野貴信撮影)
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集落で民宿を営む吉田清一さん =愛媛県愛南町(沢野貴信撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 こうしたなか、住民は「外泊いしがき守ろう会」を立ち上げた。同地区で民宿を営む吉田清一さん(66)が代表を務める。吉田さんは40年前から独学で石垣を積む手法を研究。たった1人で補修を続ける。「このままだったら、20年後には石垣の集落はなくなってしまう」と現状を話す。

軒先まで積まれた石垣 =愛媛県愛南町(沢野貴信撮影)
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軒先まで積まれた石垣 =愛媛県愛南町(沢野貴信撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 それでも、「先人から受け継いだもので、特別に愛着がある。自分たちのお城という感じ。なんとか残していきたい」。観光客も少しずつ増えているという。

 厳しい自然環境に耐えるための石垣は、約150年間、集落を強風から守り、特異な景観を残した。その景観を残すことが、今度は地区そのものを守ることにつながるのかもしれない。(写真報道局 沢野貴信)

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