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【活写2020】特別な夏 万感の大輪 コロナと花火(兵庫県豊岡市・城崎温泉)

伝統・文化

【活写2020】特別な夏 万感の大輪 コロナと花火(兵庫県豊岡市・城崎温泉)

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城崎温泉街を彩る打ち上げ花火。例年なら周辺は混雑するが、今年は観覧者同士が距離をとって夜空を眺めた =8月30日、兵庫県豊岡市(寺口純平撮影) 城崎温泉街を彩る打ち上げ花火。例年なら周辺は混雑するが、今年は観覧者同士が距離をとって夜空を眺めた =8月30日、兵庫県豊岡市(寺口純平撮影)
温泉街を背に200発の花火を準備する段さん(左)ら =8月21日、兵庫県豊岡市(寺口純平撮影)
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温泉街を背に200発の花火を準備する段さん(左)ら =8月21日、兵庫県豊岡市(寺口純平撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 橋の上に陣取った浴衣姿の宿泊客から歓声があがった。8月30日、兵庫県豊岡市の城崎温泉で色とりどりの花火が夜空を焦がした。温泉街を流れる大谿(おおたに)川のゆるやかな水面に赤や緑の光が反射するのは例年と同じ「夢花火」。だが、打ち上げ時間は5分間と短く、見守る人も“鈴なり”というわけではない。

 京都府木津川市から訪れた戸練こころさん(20)は、いつもより少ない打ち上げ花火に「もう少し見たかった」。しかし、「目の前で見ることができて、いい思い出になりました」と笑顔を見せ、宿へ戻っていった。

倉庫に眠ったままの花火を手にする三木さん =8月27日、兵庫県太子町(寺口純平撮影)
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倉庫に眠ったままの花火を手にする三木さん =8月27日、兵庫県太子町(寺口純平撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 城崎温泉は、コロナ禍で4月下旬から5月末まで全旅館が休業に。感染防止策を実施し、ようやく6月1日に営業を再開した。しかし、夏の一大イベント・夢花火は野外イベントだが「密」は避けられない。開催の是非をめぐり議論が続いた。

 城崎温泉観光協会の高宮浩之会長(58)は「浴衣姿で花火を眺めてもらうのは、この街の文化であり、伝統でもある。中止するのは簡単だが…」と考えた。

 結局、歩行者天国のエリアを拡大し、警備も例年の3倍に増やすなどして、約3週間遅れで開催することにした。打ち上げ担当のD‐JK株式会社の段克史代表(44)は「こんな状況でも打ち上げの依頼があったときは本当にうれしかった」と明かした。

打ち上げ最終日に行われたた灯籠流しで、自分の灯籠を探す女の子 =8月30日、兵庫県豊岡市(寺口純平撮影)
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打ち上げ最終日に行われたた灯籠流しで、自分の灯籠を探す女の子 =8月30日、兵庫県豊岡市(寺口純平撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 花火を取り巻く状況は厳しい。兵庫県唯一の花火製造会社「三光煙火製造所」(本社・姫路市)の倉庫は、本来は使われるはずだった花火玉で半ば埋まっていた。

 同社では、今夏、100件近く予定していた現場の9割以上が新型コロナ感染拡大の影響で中止に。花火玉の中には完成までに3カ月かかるものもある。しかし、長期間保管すると発色や開き方が変わるため、ほとんどを処分せざるを得ない。同社の三木章稔さん(35)は「僕らは作って打ち上げるまでが仕事。(この状況は)ありえない」と嘆いた。

外湯の「鴻の湯」で手指を消毒する入浴客 =8月28日(寺口純平撮影)
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外湯の「鴻の湯」で手指を消毒する入浴客 =8月28日(寺口純平撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 例年なら来年の花火の打ち合わせや製造にとりかかるころだが、今は何も動いていない。会社は持続化給付金や雇用調整助成金で持ちこたえているが、「来年も同じならゾッとする」という。

 さまざまな人がかつてない苦境に直面した今年の夏。いつもの風景がどれだけ貴重だったかも思い知らされた。来年の夏は、花火師たちの思いの詰まった光の大輪が日本中の夜空を彩る日が戻ってくることを願ってやまない。(写真報道局 寺口純平)

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