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【廃炉へ~福島第1原発は今】(下)役目を終えた汚染タンクと最新技術で走る自動運転バス

東日本大震災

【廃炉へ~福島第1原発は今】(下)役目を終えた汚染タンクと最新技術で走る自動運転バス

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処分方法が決まらず行き場を失ったタンクの横を通り過ぎる自動運転の電気バス =東京電力福島第1原発(芹沢伸生撮影) 処分方法が決まらず行き場を失ったタンクの横を通り過ぎる自動運転の電気バス =東京電力福島第1原発(芹沢伸生撮影)

 異様な風景が広がる東京電力福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)の作業現場で、道路わきに2段重ねでズラリと並ぶタンクが目に入った。

 取材ポイントに向かう車を止めてもらい、車を降りてシャッターを切る。「事故発生当時、汚染水を入れていたタンクです」と広報担当者。事故で溶け落ちた燃料は冷やし続けなければいけない。しかし、冷却に使った水は核物質で汚染される。事故直後、大量の汚染水をためるタンクはなかった。

汚染水を溜める現在のタンク(後方)と比べると、横置きのタンクは明らかに小さい =東京電力福島第1原発(芹沢伸生撮影)
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汚染水を溜める現在のタンク(後方)と比べると、横置きのタンクは明らかに小さい =東京電力福島第1原発(芹沢伸生撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 一刻を争う緊急事態。融通が利く一般的な工業用のタンク約360基を全国からかき集めた。現在、敷地内に並ぶ処理水が入ったタンクと比べると、容量は10分の1程度の100トン。それでも、当時は現場になくてはならないものだった。

 事故から9年以上が経過した今、汚染水は移され、タンクは空になっている。しかし、内部は汚染されたまま。巨大な放射性廃棄物に行き場はなく、しばらくはこのまま放置するしかないという。

 古びたタンクを撮影中、その横を小さなバスが、音もたてずにゆっくりと通り過ぎた。ナンバープレートの部分には「はまかぜe」の表示。丸みを帯びたおしゃれなデザインは、廃炉作業の現場で少しミスマッチに思えた。

 かつて汚染水を溜めたタンクには、さびが浮いていた =東京電力福島第1原発(芹沢伸生撮影)
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 かつて汚染水を溜めたタンクには、さびが浮いていた =東京電力福島第1原発(芹沢伸生撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 これは、国内で初めて実用化された自動運転の電気バス。福島第1原発の敷地は東京ドーム約75個分、350万平方メートルもあり、構内の移動に車は欠かせない。電気バスは一昨年4月に導入され、作業員らの移送を担っている。フランス製で全長4.75メートル、幅2.11メートル。高さが2.65メートルあるため見た目は大きく感じる。15人乗りでハンドルはもちろん、運転席もない。

 GPS(衛星利用測位システム)で自分の位置を確かめながら、プログラムされたルートを走る。ルートは「入退域管理施設」と「登録センター」を結ぶ往復約2キロの系統など複数ある。このバスには自動運転交通の実用化に向け、実績を積み重ねてノウハウを蓄積するという使命もある。

 事故から10年目を迎えた廃炉の現場には、時間が止まったままの場所がある一方で、真新しい技術が日々投入されている。行き場を失った汚染水を保管したタンクの横を、最新技術を詰め込んだ自動運転の電気バスが行き交う-。こんな風景も日常になっている。(福島支局 芹沢伸生)

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