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【活写2020】水を見守り 次代へつなぐ 多発する水道管トラブル、AIが劣化診断 

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【活写2020】水を見守り 次代へつなぐ 多発する水道管トラブル、AIが劣化診断 

更新 sty2004220002
画面に表示されたAIが判断した米国オークランドの水道管の劣化度。漏水の可能性を赤や青で示す =東京都渋谷区(沢野貴信撮影) 画面に表示されたAIが判断した米国オークランドの水道管の劣化度。漏水の可能性を赤や青で示す =東京都渋谷区(沢野貴信撮影)
兵庫県尼崎市で行われる水道管の交換工事。耐震性の高い水道管(左)に交換する(沢野貴信撮影)
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兵庫県尼崎市で行われる水道管の交換工事。耐震性の高い水道管(左)に交換する(沢野貴信撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 赤や青、オレンジなどで塗り分けられた葉脈のような模様が映し出される。赤い線を選ぶと「漏水可能性37%」の通知が現れた。

 パソコンが表示しているのは水道管の劣化度。米・カリフォルニア州のシリコンバレーで日本人が2015年にスタートしたITベンチャー「Fracta(フラクタ)」が開発したシステムが、いま注目を集めている。

 近年、各地の自治体を悩ませているのが、多発する水道管の破裂や漏水などのトラブルだ。全国の水道管は、50~60年前の高度経済成長期に張り巡らされたものが多い。「古さ」と「広範囲」が重なり、工事のネックとなっている。

兵庫県尼崎市で行われた水道管を交換する工事。昭和36年に敷設された水道管が重機を使って取り出された (沢野貴信撮影)
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兵庫県尼崎市で行われた水道管を交換する工事。昭和36年に敷設された水道管が重機を使って取り出された (沢野貴信撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 兵庫県尼崎市の幹線道路で行われていた水道管の交換工事現場を訪れた。埋設は昭和36年。地震などで破損する恐れがあったという。約450メートルの区間を少しずつ掘り進めるため、1日に約12メートルしか進めない。周辺で大規模な渋滞が発生し天候や地質によっては工期が延びることもある。

耐震性を強化した新しい水道管 =神戸市須磨区(沢野貴信撮影)
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耐震性を強化した新しい水道管 =神戸市須磨区(沢野貴信撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 市が管理する水道は約1030キロに及ぶ、生活への影響を最小限にするため、優先順位を決め、工事を効果的に進めることが、尼崎市だけでなく全国の自治体の課題となっている。

 こうした解決につながるとして期待が寄せられるのが冒頭のシステムだ。特徴は使用するデータの多様性。埋設状況を示した図面や漏水事故の履歴など、自治体などが持つ情報をもとに、人口や交通量、降水量などを加え、AI(人工知能)が劣化度を診断する。

過疎地域でも水道は欠かせず、職員が1日かけて山あいの浄水設備を点検する =奈良県東吉野村(沢野貴信撮影)
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過疎地域でも水道は欠かせず、職員が1日かけて山あいの浄水設備を点検する =奈良県東吉野村(沢野貴信撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 同社の日本事業開発責任者の樋口宣人さん(53)は「(システムは)劣化度の低い場所の判定に強みを発揮します」と説明する。古い管でも状況次第では漏水の危険性は少ないと判断。「古い=要交換」という“固定観念”にとらわれず、優先度の低い工事を削減、限られた予算を有効に使うことが可能となる。

 水道の維持は都市部だけの問題ではない。人口減少に悩む山間部など、周辺の自治体にとっても課題となっている。奈良県東吉野村では、地域振興課の職員2人が現場を目視して水道を点検。点在する浄水設備を毎日、1日かけて車で巡回する。システムの入る余地はないように見えるが、こうした自治体は都市部より少ない人と予算をさらに有効に使うことが求められる。将来はデータを工夫し、複数の自治体が合同でAIを取り入れる動きがあるのでは-そんな可能性も感じた。

 まだ私たちにとってなじみが薄い気がするAI。だが、最も身近で必要不可欠な「水」を支える日は、そこまで来ているようだ。(写真報道局 沢野貴信)

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