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【活写2020】脱「エサ場」、農家の闘い 鳥獣被害

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【活写2020】脱「エサ場」、農家の闘い 鳥獣被害

更新 sty2003190001
猟師の有賀さん(右)からライフル銃について教わる芝池さん。先人の知識や経験を受け継ぎ、農作物の被害食い止めへとつないでいく =1日、兵庫県南あわじ市(寺口純平撮影) 猟師の有賀さん(右)からライフル銃について教わる芝池さん。先人の知識や経験を受け継ぎ、農作物の被害食い止めへとつないでいく =1日、兵庫県南あわじ市(寺口純平撮影)
収穫間近のデコポンをイノシシに食べられ肩を落とす高橋さん。大切に育てた作物を失うのは何とも切なく、農家にとっては死活問題だ =2月11日、愛媛県今治市の大三島(寺口純平撮影)
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収穫間近のデコポンをイノシシに食べられ肩を落とす高橋さん。大切に育てた作物を失うのは何とも切なく、農家にとっては死活問題だ =2月11日、愛媛県今治市の大三島(寺口純平撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 わしらが柵の中で暮らしてるようなもんじゃ-。

 瀬戸内海に浮かぶ大三島(おおみしま)(愛媛県今治市)。柑橘(かんきつ)農業を営む高橋盛正さん(64)が、かじられて散乱したデコポンを手にうめくような声をもらした。

 “犯人”はイノシシ。約20年前から海を泳いで渡ってきて大繁殖した。集落の山側一帯に柵を設置しているが、侵入して土を掘り返したうえ、実を取り枝を折る。収穫間近の被害は農家にとって死活問題だ。

県からの捕獲報奨金を得るために箱なわにかかったイノシシを撮影する学生 =南あわじ市(寺口純平撮影)
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県からの捕獲報奨金を得るために箱なわにかかったイノシシを撮影する学生 =南あわじ市(寺口純平撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 各地で深刻な鳥獣被害が加速している。農家の高齢化、耕作放棄地の増加…。エサ場と化した集落で自由に行動する野生動物と生活を圧迫される農家。その構図を変えようとする取り組みもまた始まっている。

 「ターン」

イノシシの肉や革は加工され有効利用されている。キーホルダーや財布は、しなやかで通気性が良いのが特徴だ =2月12日、愛媛県今治市の大三島(寺口純平撮影)
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イノシシの肉や革は加工され有効利用されている。キーホルダーや財布は、しなやかで通気性が良いのが特徴だ =2月12日、愛媛県今治市の大三島(寺口純平撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 犬の声に続いて乾いた銃声が響いた。山の中腹のやぶで耳を澄ましていた猟師の有賀正修さん(74)は「今のは仕留めたやろうな」と、横にいた大学生の芝池宏明さん(20)に話しかけた。

 猟犬や銃を使い、多人数でシカやイノシシを包囲する「巻狩り」。兵庫県・淡路島の猟友会が今月行った巻狩りに、地元の吉備国際大学南あわじ志知(しち)キャンパスの学生の姿があった。

イノシシの肉や革は加工され有効利用されている。ジビエ特有のうま味が口に広がる「デミオムライス ハンバーグ乗せ」 =2月11日、愛媛県今治市の大三島(寺口純平撮影)
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イノシシの肉や革は加工され有効利用されている。ジビエ特有のうま味が口に広がる「デミオムライス ハンバーグ乗せ」 =2月11日、愛媛県今治市の大三島(寺口純平撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 淡路島の全周は約203キロ。一方、島内の田畑の周囲に張られた防護柵の延長は10倍の約1960キロに及ぶ。名産の玉ネギやレタスなどを獣害から守るためだが被害は収まらない。

 巻狩りは野生動物が犬を怖がって、山の奥に半月近く逃げ込むため、効果が高い。一方で猟友会は60代でも「若手」の状況。ライフルや散弾銃を扱う「第1種銃猟免許」の取得や所持も容易ではない。地域農業を守る猟を続けるための取り組みの一つが若者へのアプローチだった。

大阪市住之江区で行われたイベント「獣をさばく」では、くくりわなについて説明する猟師の話に老若男女が聞き入った
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大阪市住之江区で行われたイベント「獣をさばく」では、くくりわなについて説明する猟師の話に老若男女が聞き入ったフルスクリーンで見る 閉じる

 「あと5年もしたら俺ももう山に入れなくなる。若い人にはいろいろと伝えたい」と有賀さん。大学で狩猟部の副部長を務める芝池さんは「歩きながら足跡などを見つけたり、自然に対する意識がすごく高い。自分もいつか有賀さんのようになりたい」と話した。

「しまなみイノシシ活用隊」の定例会でメンバーと話し合う代表の渡辺秀典さん(左奥)。右端はレザークラフト作家でもある重信幹広さん =2月10日、愛媛県今治市の大三島(寺口純平撮影)
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「しまなみイノシシ活用隊」の定例会でメンバーと話し合う代表の渡辺秀典さん(左奥)。右端はレザークラフト作家でもある重信幹広さん =2月10日、愛媛県今治市の大三島(寺口純平撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 駆除を「資源」にまで進める動きも活発になってきている。大三島では「しまなみイノシシ活用隊」が発足。ジビエ肉の加工販売、皮や骨を商品として有効利用し、被害額以上の価値を生み出し始めた。

巻狩りを共にする猟犬と山に入る有賀正修さん(右)と大学生の芝池宏明さん =兵庫県南あわじ市(寺口純平撮影)
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巻狩りを共にする猟犬と山に入る有賀正修さん(右)と大学生の芝池宏明さん =兵庫県南あわじ市(寺口純平撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 シカやイノシシは近年、都心近郊の住宅地や観光地にも出没している。そんな状況を受けて、大阪市内ではシカを解体し、調理まで行うイベントが行われ、都市部の若者や家族らが、自然とのかかわりを学ぶ場になっている。

 抱える問題は深い。解決する術(すべ)はあるだろうか。世代やエリアを超えた懸命の手探りが続く。(写真報道局 寺口純平) 

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