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【活写2019】役に立てる キミと一緒に 分身ロボット

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【活写2019】役に立てる キミと一緒に 分身ロボット

更新 sty1911200001
東京都内のカフェで楽しげに会話する分身ロボット「OriHime‐D」 =東京都千代田区(渡辺恭晃撮影) 東京都内のカフェで楽しげに会話する分身ロボット「OriHime‐D」 =東京都千代田区(渡辺恭晃撮影)
 東京都内のカフェで客と楽しげに会話するロボット「OriHime‐D」を操作しているのは、大阪府内の病院に入院する坂本さんのように病気などで外出が難しい人たちだ。ロボットはそんな人たちが会いたい人に会ったり働いたりするための“分身”となっている =大阪府内(渡辺恭晃撮影)
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 東京都内のカフェで客と楽しげに会話するロボット「OriHime‐D」を操作しているのは、大阪府内の病院に入院する坂本さんのように病気などで外出が難しい人たちだ。ロボットはそんな人たちが会いたい人に会ったり働いたりするための“分身”となっている =大阪府内(渡辺恭晃撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 病気や事故で外出が困難になったとしたら-。自分の“分身”が行きたいところに行って会いたい人に会い、働くこともできる。そんな未来は、目の前に近づいているかもしれない。

 大阪府内の病院の一室。3年前から入院生活を送る坂本絵美さん(39)がパソコンの画面に楽しそうに話しかける。つながっているのは約375キロ先、東京都内の喫茶スペースだ。

ドリンクを運ぶ「OriHime-D」。スマートフォンのカメラを構える客に手を振って応えた =東京都千代田区(渡辺恭晃撮影)
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ドリンクを運ぶ「OriHime-D」。スマートフォンのカメラを構える客に手を振って応えた =東京都千代田区(渡辺恭晃撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 「ようこそ!分身ロボットカフェへ」。接客するのは、人型ロボット「OriHime-D(オリヒメディー)」。コーヒーのカップを運び「ごゆっくり」と手を振ると、テーブルを囲んだ客に笑顔が広がった。

 都内で10月上旬、実験的に行われた「分身ロボットカフェ」。「OriHime-D」を動かすのは、重い病気や障害などで外出が難しい人たちで「パイロット」と呼ばれている。

「OriHime」の動きを練習する桑原さん。「バンザイやツッコミなど動きがたくさんあって表現豊かだけど操作は簡単。たくさんの人と会い、世界を広げられるのが楽しみだ」と期待に胸を膨らませた =東京都大田区(渡辺恭晃撮影)
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「OriHime」の動きを練習する桑原さん。「バンザイやツッコミなど動きがたくさんあって表現豊かだけど操作は簡単。たくさんの人と会い、世界を広げられるのが楽しみだ」と期待に胸を膨らませた =東京都大田区(渡辺恭晃撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 坂本さんは、心臓の筋肉が硬化し機能低下を招く「拘束型心筋症」を抱えている。大学卒業後、ソーシャルワーカーとして勤務したが、病状が悪化し、入院を余儀なくされた。治療法が確立していない難病に、病院で過ごす変化のない日々。「自分だけ時間が止まってしまったようで孤独だった」と打ち明ける。

 しかし、カフェではロボットを操作し、注文の受け付けや配膳(はいぜん)を担当。多くの人と雑談や記念撮影を通じて交流した。「まだまだできることがある」。生きる希望がわいてきたという。

カフェのオープンを記念し、テープカットする「OriHime‐D」と吉藤さん =10月7日、東京都千代田区(渡辺恭晃撮影)
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カフェのオープンを記念し、テープカットする「OriHime‐D」と吉藤さん =10月7日、東京都千代田区(渡辺恭晃撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 「活躍できる居場所があれば孤独は解消できる」

 ロボットを開発した「オリィ研究所」(東京都港区)の吉藤(よしふじ)健太朗所長(32)は「誰もが生きがいをもって生きられる社会を」と、場所や時間にとらわれない働き方の可能性を模索する。カフェを入り口と位置づけ、2020年には常設化したい考えだ。

 筋力が徐々に衰える「筋ジストロフィー」で闘病中の桑原章太さん(38)もカフェに参加した。

 「誰かの手助けがないと生活ができない不自由さがあるが、社会の役に立ちたいとずっと思ってきた」と訴える。同じ病気で悩む人たちの励みになればと、パイロットに応募した。

にぎわう喫茶スペースで接客する分身ロボット =東京都千代田区(渡辺恭晃撮影)
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にぎわう喫茶スペースで接客する分身ロボット =東京都千代田区(渡辺恭晃撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 閉店時間、坂本さんが動かす「OriHime-D」が手を振って見送りをしていると、客が「ありがとう」と言葉をかけた。自然なやりとりから「人と人」の温かさが伝わってきた。

 「病気で仕事をやめざるをえなかったけど、これからまたできることを頑張ろうと思ってるんです」

 “分身”を通じて意思を伝える。「パイロット」たちはロボットを通じて、新しい世界に私たちを運んでくれるはずだ。もうそこでは、ひとのために役立ちたいという思いをあきらめる必要はない。(写真報道局 渡辺恭晃) 

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