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【活写2019】「最後の別れ」寄り添うために 「納棺師」の作法と心得

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【活写2019】「最後の別れ」寄り添うために 「納棺師」の作法と心得

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授業で着せ替えを行う砂田さん。「ご遺族から信頼される納棺師になりたい」と意気込む =東京都港区 授業で着せ替えを行う砂田さん。「ご遺族から信頼される納棺師になりたい」と意気込む =東京都港区
木村社長(左手前)から学ぶ学生たち。10代から50代の男女が肩を並べた
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木村社長(左手前)から学ぶ学生たち。10代から50代の男女が肩を並べたフルスクリーンで見る 閉じる

 死の訪れはただ一度。だからこそ遺族にとって、故人との「最後の別れ」は、かけがえのない時間だ。そこに寄り添い、支える人がいる。

 東京都心にある納骨堂の一角。10代から50代の男女11人が集まり、死装束に着せ替える「納棺師」の作法と心得を学んでいた。

死化粧の試験では技術だけでなく、遺族とのコミュニケーションが重視された
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 着物を扱う手は、指先まですっと力が張り詰めているのがわかる。流れるように進む所作の中で、横になった故人役の肌を見せることは一切ない。美しく不思議な約20分間の舞台を見ているようだった。

 納棺師は、故人を死装束や化粧などで整え、棺に納める仕事だ。東京都港区の「おくりびとアカデミー」では、生徒は納棺の儀式に必要な着せ替えや化粧などの実技から「グリーフサポート」と呼ばれる遺族の気持ちの支え方、宗教学などを約半年間をかけて学ぶ。

遺族の目の前で行われる故人の着せ替えは、ひとつひとつの所作を丁寧に行う
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 「故人を見送る時間のあり方で、ご遺族のその後の人生が変わってきます。両者にきちんと寄り添える納棺師を養成したかった」とアカデミーの木村光希社長(31)は話す。

 学ぶ生徒の理由はさまざまだ。現役看護師の高田直美さん(46)は、「看護師としてご遺体の処置方法や葬祭の知識などを学びたかった」と打ち明ける。

卒業式では笑顔があふれた=9月27日
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 身近な人の死がきっかけとなることも多い。10代の時に兄を含む家族や知人4人を亡くした駒田烈也さん(21)は、自身の体験から「よりきれいな姿にしてあげたかった」と納棺師を目指すことを決めたという。

 9月下旬、実技と筆記の卒業試験が行われた。約1時間の実技は、遺族役の講師へのあいさつから始まり故人役を棺に納めるまでを現役納棺師の前で行う。技術だけでなく、装束や化粧の意向を聞き、質問に答えるコミュニケーション能力も重視される。

縫合の授業
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 試験を経て11人は全員が卒業した。みんなは今、どうしているのだろう。卒業式で「大切な方を亡くされたご遺族に、それ相応の覚悟を持って対面しなくてはならない」と答辞を読んだ砂田玲さん(19)に連絡した。現在は新人納棺師として会社に勤務し、先輩に同行する毎日という。

卒業試験
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 「先輩の立ち回りはてきぱきしているけれど、ご遺族とのコミュニケーションは丁寧。見習いたいです」

 納棺師は、時に遺族の心の乱れを受け止め、気遣うことが必要となる。そんなとき、アカデミーの日々が支えになるのだろう。

 砂田さんの答辞ににじんだ強い意志と、着せ替えを練習していたときの優しいまなざしを思い出した。(写真報道局 鳥越瑞絵) 

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