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【活写2019】歩く。当たり前の未来に向かって 乙武洋匡さん「義足プロジェクト」

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【活写2019】歩く。当たり前の未来に向かって 乙武洋匡さん「義足プロジェクト」

更新 sty1908210001
遠藤謙さん(左)や理学療法士の内田直生さん(右から2人目)のサポートのもと、義足で立つ乙武洋匡さん。「車いすより上ということではなく、二足歩行という選択肢があることを示したい」と話す =3日、東京都新宿区(安元雄太撮影) 遠藤謙さん(左)や理学療法士の内田直生さん(右から2人目)のサポートのもと、義足で立つ乙武洋匡さん。「車いすより上ということではなく、二足歩行という選択肢があることを示したい」と話す =3日、東京都新宿区(安元雄太撮影)
モーターやバッテリーを組み込んだ特注の義足「シュービル・オトタケモデル」。太腿部にカーボン繊維の特徴的な織り目模様が浮き上がっている。改良を重ね最初のモデルより数百グラム軽量化を図っているが、遠藤さんは「まだ完成ではありません」と話す =3日、東京都新宿区(安元雄太撮影)
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モーターやバッテリーを組み込んだ特注の義足「シュービル・オトタケモデル」。太腿部にカーボン繊維の特徴的な織り目模様が浮き上がっている。改良を重ね最初のモデルより数百グラム軽量化を図っているが、遠藤さんは「まだ完成ではありません」と話す =3日、東京都新宿区(安元雄太撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 「1、2、1、2」。かけ声に、義足が立てる乾いた音が重なった。カタン、カタン、カタン…。ファインダーの向こうで“あの人”が歩いている。

 東京都新宿区のマンションの一室、7メートルほどの距離を1分弱かけて歩き切った乙武洋匡(おとたけ・ひろただ)さん(43)は少し息を切らしながら話した。「義足の方が、車いすより10センチ低いんですよ。けど怖いですね。いつ倒れるか分からない」

義足を取り付けるのは、マネジャーの北村公一さん(右)が一番手際がいいという =3日、東京都新宿区(安元雄太撮影)
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義足を取り付けるのは、マネジャーの北村公一さん(右)が一番手際がいいという =3日、東京都新宿区(安元雄太撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 乙武さんは一昨年10月から、ソニーコンピュータサイエンス研究所(同品川区)の遠藤謙さん(41)と「義足プロジェクト」と名付けた計画をスタートさせた。義肢装具士や理学療法士など専門家ら約10人のチームで取り組んでいる。

義手を取り付けた乙武さん。「うまく使えたらいいんですけど、もし倒れたときに手をついたとしたら、多分肩を脱臼します」 =3日、東京都新宿区(安元雄太撮影)
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義手を取り付けた乙武さん。「うまく使えたらいいんですけど、もし倒れたときに手をついたとしたら、多分肩を脱臼します」 =3日、東京都新宿区(安元雄太撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 四肢欠損で生まれた乙武さんは、大学3年の時に著書『五体不満足』で有名になった。スポーツライターや小学校教諭など活躍の場を広げたが、3年前にスキャンダルが発覚。

 「社会の役に立つことは二度とないのか」。海外移住すら考えていた乙武さんにとって、時間と思いを向けた先が、以前から遠藤さんに依頼を受けていたこの取り組みだった。

 遠藤さんはまた、平成26年に義足開発ベンチャー「Xiborg( サ イ ボ ー グ )」を設立した。パラアスリートのための競技用義足を開発し、リオ・デジャネイロパラリンピックで陸上の佐藤圭太選手に提供。400メートルリレーで銅メダル獲得の原動力となった。

乙武洋匡さん(中央) =3日、東京都新宿区(安元雄太撮影)
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乙武洋匡さん(中央) =3日、東京都新宿区(安元雄太撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 「エンジニアだからテクノロジーを世の中に広めたいんですよ。誰がやったら注目されるかと考えたら、乙武さん以外いない。虎視眈々(たんたん)と狙っていました」

 インスタグラムやテレビ番組で義足姿を披露するなど、プロジェクトは一見派手に思えてしまうが、乙武さんは「筋トレなんか『何やっているんだろう』と思うくらい地味」と笑う。

 「40歳過ぎたらアスリートは引退するのに、デビューしちゃった。この年齢で体をいじめるのはめっちゃしんどいけど、めっちゃ楽しいです」

乙武洋匡さん(中央) =3日、東京都新宿区(安元雄太撮影)
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乙武洋匡さん(中央) =3日、東京都新宿区(安元雄太撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 遠藤さんは「テクノロジーの発展で、障害が障害ではなくなる」と分析。乙武さんも「健常者と同じスタイルで歩きたいんです。日本は他人と違うことに敏感な社会ですから。最終的には、街中で『乙武』と気づかれないのが理想」と声をそろえる。

乙武洋匡さん(中央) =3日、東京都新宿区(安元雄太撮影)
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乙武洋匡さん(中央) =3日、東京都新宿区(安元雄太撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 2人が目指すゴールは「四肢欠損でも歩くのが当たり前になる」未来だという。車いすに乗った「乙武君」を初めて目にしてから20年以上。現在の「プロジェクトの起爆剤」(遠藤さん)としての乙武さんの姿は、当たり前だが、あの頃と大きく変わっていた。

 トレーニングで一歩ずつ歩く乙武さんに、遠藤さんたちが一緒になって声をかける。「ペースを守っていきましょう」「あと少し」(写真報道局 安元雄太)

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