産経フォト

【活写2019】「創る劇場」目指して 神戸アートビレッジセンター 

エンタメ

【活写2019】「創る劇場」目指して 神戸アートビレッジセンター 

更新 sty1907190001
タクシーに現れた珍客に車内が同化していくワークショップでの即興演技。陽気な女性が踊りながら乗り込んできた設定を表情豊かに演じ、会場には笑いがあふれていた =6月29日神戸市兵庫区(南雲都撮影) タクシーに現れた珍客に車内が同化していくワークショップでの即興演技。陽気な女性が踊りながら乗り込んできた設定を表情豊かに演じ、会場には笑いがあふれていた =6月29日神戸市兵庫区(南雲都撮影)
「KAVC FLAG COMPANY」の第1弾となった劇団「匿名劇壇」の「大暴力」。体への直接的な暴力だけでなく、言葉や精神、日常に潜むさまざまな形の暴力をテーマにした短編30本を70分に盛り込んだ意欲作。衣装替えもその場で行い、めまぐるしく展開する芝居で観客を魅了した =6月6日、神戸市兵庫区(南雲都撮影)
画像を拡大する
「KAVC FLAG COMPANY」の第1弾となった劇団「匿名劇壇」の「大暴力」。体への直接的な暴力だけでなく、言葉や精神、日常に潜むさまざまな形の暴力をテーマにした短編30本を70分に盛り込んだ意欲作。衣装替えもその場で行い、めまぐるしく展開する芝居で観客を魅了した =6月6日、神戸市兵庫区(南雲都撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 酔っ払い、号泣、笑いが止まらない…。次々に現れるタクシーの珍客に車内が同化していく。

 90分の演劇体験ワークショップ。最初は緊張していた人が次第に“役者”になっていく。会場からわき上がる笑い声。私もカメラを構えながら一緒に笑ってしまう。そして気付いた。ファインダー越しの参加者の表情がどんどん「いい顔」に変わっていくことに。

劇団「匿名劇壇」の「大暴力」のワンシーン =6月6日、神戸市兵庫区(南雲都撮影)
画像を拡大する
劇団「匿名劇壇」の「大暴力」のワンシーン =6月6日、神戸市兵庫区(南雲都撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 神戸市兵庫区の神戸アートビレッジセンター(KAVC<かぶっく>)で6月、関西を拠点とする若手7劇団を紹介する企画「KAVC FLAG COMPANY」が開幕した。来年2月まで順次公演する。

 特徴は公演以外にも、ワークショップや公演後の演出家らのトークなど、さまざまな角度から演劇を楽しめるよう工夫した点だ。

劇団「匿名劇壇」の「大暴力」のワンシーン =6月6日、神戸市兵庫区(南雲都撮影)
画像を拡大する
劇団「匿名劇壇」の「大暴力」のワンシーン =6月6日、神戸市兵庫区(南雲都撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 「熱心なファンはたくさんいるけれど、一般的に演劇は敷居が高いと思われている」とKAVC演劇事業担当の竹下士敦(ひとのぶ)さん(35)。まず劇場に足を運んでもらいたい。そんな思いから企画は生まれた。

 関西では1980年代~90年代に小劇場を中心とした演劇ブームがあった。だが、ブームが去り、劇場は次々に閉館。舞台芸術は東京一極集中の傾向が強い。

匿名劇壇の公演後に行われたアフタートーク。ゲストと演出家による作品解説や劇団の裏話に観客たちが熱心に耳を傾けていた =6月8日、神戸市兵庫区(南雲都撮影)
画像を拡大する
匿名劇壇の公演後に行われたアフタートーク。ゲストと演出家による作品解説や劇団の裏話に観客たちが熱心に耳を傾けていた =6月8日、神戸市兵庫区(南雲都撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 しかし、近年は6月に京都市南区に小劇場「THEATRE E9 KYOTO」がオープン。9月には兵庫県豊岡市で演劇祭が予定されるなど、関西拠点の劇団や劇場に再び注目が集まっている。

 「台詞(せりふ)を言ってみよう」という演劇体験を見た。参加者の半数は初心者。他の人のタイミングを見ながら脚本を読み合う。

言葉一つ一つを大切に初見の長文を読み上げる、ワークショップに参加した小学生。彼の声を通して広がる世界に参加者たちは聞き入っていた =6月8日午後、神戸市兵庫区(南雲都撮影)
画像を拡大する
言葉一つ一つを大切に初見の長文を読み上げる、ワークショップに参加した小学生。彼の声を通して広がる世界に参加者たちは聞き入っていた =6月8日午後、神戸市兵庫区(南雲都撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 タイミングがつかめない男の子に、身振りで合図を送る男性がいた。神戸市東灘区の教員、中辻義和さん(51)。「児童とのコミュニケーションのヒントになるかも」と参加したという。合図を受け、男の子は、真剣な表情を浮かべながら台本を読み上げた。

 相手を意識して発することで「言葉」は「台詞」になっていく。そして台詞をしゃべることで、人は新たな個性を手にしていく。

 「どんな役でも、演じることを楽しんでいる人は魅力的」。ワークショップの体験と合わせ、講師の劇作家、後藤ひろひとさんの言葉にうなずかされた。

シリーズ公演の第一弾となった匿名劇壇「大暴力」の1シーン =6月6日、神戸市兵庫区(南雲都撮影)
画像を拡大する
シリーズ公演の第一弾となった匿名劇壇「大暴力」の1シーン =6月6日、神戸市兵庫区(南雲都撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 今回の企画は「神戸以外の劇団にも、新開地のこのハコ(劇場)を知ってもらうのも目的」という。

 役者と劇場、観客が時を共にすることで劇空間を作り上げ、一緒に多彩な舞台表現を生み出す。KAVCが目指すのはそんな「創(つく)る劇場」だ。演劇を通じて“自分らしさ”に目覚めた人々を巻き込み、ここにしか作れない作品が生まれてくれたら。一ファンとして今後が楽しみだ。(写真報道局 南雲都) 

スゴい!もっと見る

瞬間ランキングもっと見る

話題のランキング