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【美しきにっぽん】幾山河 川霧を越えてゆく JR只見線

鉄道

【美しきにっぽん】幾山河 川霧を越えてゆく JR只見線

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川霧煙る第一只見川橋梁。会津若松駅行き一番列車が霧の中に消えていく =福島県三島町(恵守乾撮影) 川霧煙る第一只見川橋梁。会津若松駅行き一番列車が霧の中に消えていく =福島県三島町(恵守乾撮影)
只見川沿いの大志集落を進む只見線の列車。箱庭のように美しい奥会津の風景だ =福島県金山町(恵守乾撮影)
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只見川沿いの大志集落を進む只見線の列車。箱庭のように美しい奥会津の風景だ =福島県金山町(恵守乾撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 昨夜の雨のおかげだろうか。鳥のさえずりが響く早朝の渓谷に、川霧がゆらりと立ちこめた。

 風はない。なのに形は刻々と変化し、木々や赤いトタン屋根が並ぶ小さな集落を覆っては消える眺めが繰り返される。

川霧の中、水鏡に映る第一只見川橋梁と只見線の列車 =福島県三島町(恵守乾撮影)
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川霧の中、水鏡に映る第一只見川橋梁と只見線の列車 =福島県三島町(恵守乾撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 汽笛が鳴った。午前6時過ぎ、会津若松駅(福島県会津若松市)へ向かう一番列車がアーチ型の第一只見川橋梁(同県三島町)にさしかかる。低く重いエンジン音がとどろく。4両編成のディーゼルカーが川霧に包まれながら進み、やがて消えていった。

日暮れ前、川霧に包まれる大志集落と只見線の列車 =福島県金山町(恵守乾撮影)
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日暮れ前、川霧に包まれる大志集落と只見線の列車 =福島県金山町(恵守乾撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 会津若松駅と小出(こいで)駅(新潟県魚沼市)を結ぶJR只見線は全長約135キロのローカル線だ。四季を通して絶景を望むことができる秘境の路線として知られ、近年は台湾を中心とした外国人観光客にも人気が高い。

 6~8月の朝晩は、そばを流れる只見川に頻繁に発生する川霧が、夢の中のような眺めを織り成す。

川霧に包まれながら第一只見川橋梁を進む只見線の1番列車 =福島県三島町(恵守乾撮影)
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川霧に包まれながら第一只見川橋梁を進む只見線の1番列車 =福島県三島町(恵守乾撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 「尾瀬の雪解け水が水源の只見川は夏も冷たい。その冷たい水と夏の暖かい空気の温度差、雨上がりの湿度が川霧を発生させる」

 只見線を25年間撮り続ける地元の郷土写真家・星賢孝さん(70)は話す。

今も災害の痕跡が残る平成23年の豪雨で流出した第七只見川橋梁 =福島県金山町(恵守乾撮影)
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今も災害の痕跡が残る平成23年の豪雨で流出した第七只見川橋梁 =福島県金山町(恵守乾撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 只見線は平成23年7月に発生した新潟・福島豪雨で鉄橋3本が流失、土砂崩れによる線路崩壊などの被害が出た。被害の大きかった会津川口~只見間27.6キロは現在も不通のままだ。

 当初、JR東日本はバスへの転換案を提示した。しかし、地域の再生に取り組む沿線自治体の要望が実り、福島県が不通区間の鉄道施設の保有と管理を担当、JRが列車を運行する取り決めで、復旧工事が昨年6月から始まった。令和3年度中の全線再開を目指している。

手を振って只見線の列車を見送る女児 =福島県柳津町(恵守乾撮影)
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手を振って只見線の列車を見送る女児 =福島県柳津町(恵守乾撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 「行ってらっしゃい。また只見に来てね、という気持ちで手を振りながらお見送りしています」と、只見町観光まちづくり協会の渡部美香さん。乗客へのおもてなしと只見線の応援を目的に、沿線各市町村では「只見線に手をふろう条例」が制定されている。

学習列車がやって来た。弁当を手に乗り込む田村市立常葉小の児童の表情は期待にあふれていた =福島県金山町の会津中川駅(恵守乾撮影)
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学習列車がやって来た。弁当を手に乗り込む田村市立常葉小の児童の表情は期待にあふれていた =福島県金山町の会津中川駅(恵守乾撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 只見線の魅力を広めるため、昨年から県内の小学生を対象に列車内で奥会津の文化や歴史を学ぶ「学習列車」の運行も始まった。今年度は41校が参加予定だ。

 取材を終え、只見川沿いの宿で過ごす夜ふけ前、雨音の向こう側から終列車の汽笛が聞こえた。明日もまた、良い川霧が出そうな予感がした。(写真報道局 恵守乾)

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