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【活写2019】「途絶えさせない」それが使命 文化財修復、職人の技と誇り

伝統・文化

【活写2019】「途絶えさせない」それが使命 文化財修復、職人の技と誇り

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掛け軸などを修復時に乾燥させる板「仮張り」に囲まれて作業する堀井さん。仮張りの表面には修復する作品を固定するための和紙の跡が縦横幾重にも残り、積み重ねてきた歴史の厚みを物語る =京都市下京区の宇佐美松鶴堂(寺口純平撮影) 掛け軸などを修復時に乾燥させる板「仮張り」に囲まれて作業する堀井さん。仮張りの表面には修復する作品を固定するための和紙の跡が縦横幾重にも残り、積み重ねてきた歴史の厚みを物語る =京都市下京区の宇佐美松鶴堂(寺口純平撮影)
昨年の台風で被害のあった社殿の屋根を直す屋根葺き職人の西堀さん。伝統的な技法で次々と檜皮を葺いていく =京都市伏見区の醍醐寺(寺口純平撮影)
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昨年の台風で被害のあった社殿の屋根を直す屋根葺き職人の西堀さん。伝統的な技法で次々と檜皮を葺いていく =京都市伏見区の醍醐寺(寺口純平撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 文化財は先人の残した歴史的な遺産だ。だが、その価値は長い時の流れだけでなく、災害や事件・事故で損なわれることもある。

 世界文化遺産に登録されている醍醐寺(京都市伏見区)。鋭いまなざしの金剛力士像を見ながら西大門をくぐると、参道脇に無数の切り株が目に入った。昨年9月の台風21号でスギやヒノキが倒された跡だ。以前訪れた際の緑豊かな景色は一変していた。

 室町時代に建てられた清瀧宮(せいりゅうぐう)本殿(重要文化財)は屋根の檜皮(ひわだ)がめくれ、倒木で回廊の欄干も損壊。近くのほこら2つも倒壊した。

檜皮を少しずつずらして重ねるため修復した屋根にタイルのような模様が浮かび上がった =京都市伏見区の醍醐寺(寺口純平撮影)
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檜皮を少しずつずらして重ねるため修復した屋根にタイルのような模様が浮かび上がった =京都市伏見区の醍醐寺(寺口純平撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 この本殿で4月から国の補助事業の認可を得て修復工事が始まった。屋根を受け持つ岸田工業(京都市山科区)の西堀大樹さん(29)は、キャリア10年の屋根葺(ふ)き職人だ。

 厚さ1.5ミリに剥いだヒノキの皮を、足場の上で少しずつずらしながら何枚も重ねていく。雨漏りにつながる隙間は許されない。スピードも必要なため、数十本の釘を口に含み、1本ずつはき出して特殊な金づちで打ち付ける。

講師が行う成分分析の様子を真剣な表情で学ぶ京都造形芸術大学「歴史遺産学科」の学生たち =京都市左京区(寺口純平撮影)
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講師が行う成分分析の様子を真剣な表情で学ぶ京都造形芸術大学「歴史遺産学科」の学生たち =京都市左京区(寺口純平撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 「昔から材料も技法も変わっていない」と説明する西堀さん。「先人の技が積み重なってきたものを残したい」と思いを語った。

 宇佐美松鶴堂(京都市下京区)の堀井邦人さん(46)は台風21号で被害を受けた西本願寺の対面所(国宝)の障子の補修を手がけた。

平等院で庭園の再整備にむけて石の調査を行う京都造形芸術大学の学生たち =宇治市(寺口純平撮影)
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平等院で庭園の再整備にむけて石の調査を行う京都造形芸術大学の学生たち =宇治市(寺口純平撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 「台風の翌日に被害調査に行ったときは、土塀が倒れ、変わり果てた光景にあぜんとしました」

 表具師として20年の経験を持つ堀井さんは、普段は掛け軸や屏風(びょうぶ)などの修復を行っている。受け継がれてきた財産を「どうにか早くもとの状態に戻したい」。そんな思いで、強風で剥がれるなどした障子計18枚の補修を終えたという。

 フランスを代表する歴史的建造物、パリのノートルダム大聖堂で4月に起きた火災は記憶に新しい。国内でも、昭和24年の法隆寺の火災、地震による平成28年の熊本城の損傷など、人災や天災で多くの文化財は被害を受けている。

成分分析の授業を受ける学生のまなざしは真剣そのもの =京都市左京区の京都造形芸術大学(寺口純平撮影)
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成分分析の授業を受ける学生のまなざしは真剣そのもの =京都市左京区の京都造形芸術大学(寺口純平撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 それだけに修復にかかわる職人や研究者を目指す若者の存在は大きい。京都造形芸術大学(京都市左京区)の「歴史遺産学科」で工芸品の技法や復元制作、材料分析などを学ぶ近藤眞音(まお)さん(20)は「現物は一つしかない。誰かが残してきたものを途絶えさせたくない」と話す。

屏風を修復する表具師 =京都市下京区の宇佐美松鶴堂(寺口純平撮影)
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屏風を修復する表具師 =京都市下京区の宇佐美松鶴堂(寺口純平撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 文化財を次世代に引き継ぐことは、今を生きる世代の使命でもある。それを支えるのは、磨いた技術とプライドだ。

 西堀さんの言葉が印象に残った。「ここを次に葺き替えするときの職人が、この仕上がりを見たときに、恥ずかしくないものを手がけていきたい」(写真報道局 寺口純平) 

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