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春 たなびく虹色エール 島根県・隠岐ノ島

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春 たなびく虹色エール 島根県・隠岐ノ島

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 出港するフェリーから伸びる色とりどりの紙テープ=島根県隠岐の島町(彦野公太朗撮影)  出港するフェリーから伸びる色とりどりの紙テープ=島根県隠岐の島町(彦野公太朗撮影)

 春は別れの季節だ。そして新たな旅立ちの季節でもある。

 「先生、ありがとうございました」

 生徒たちの声が響く。出港のアナウンスが聞こえると集まった人たちが大きく手を振った。フェリーから幾重にも下がった無数のカラフルな紙テープがふわりとゆれる。

 見送りに応える学校職員=島根県隠岐の島町(彦野公太朗撮影)
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 見送りに応える学校職員=島根県隠岐の島町(彦野公太朗撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 島根県・隠岐ノ島。3月末、県立隠岐高校から離任する先生を見送るため、西郷港に、生徒や教員が集まった。吹奏楽部が校歌やご当地ソングの「隠岐の風」を演奏する。「お元気で」「お世話になりました」などのメッセージが書かれた横断幕も掲げられた。船のデッキ部分に赤や黄、緑、青、白などの紙テープがくくりつけられ、約8メートルの高さから岸壁までのびる。

 異動で島を離れる教員を紙テープを使って多くの人が見送る光景は、3月の島の風物詩だ。

 離れていくフェリーが見えなくなるまで見送りは続いた=島根県隠岐の島町(彦野公太朗撮影)
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 離れていくフェリーが見えなくなるまで見送りは続いた=島根県隠岐の島町(彦野公太朗撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 同校の田根衛教頭(57)は3年間の任期を終えて、県立出雲高校に異動になった。「2度目の赴任でしたが、また泣いてしまうでしょうね。船上から見ると生徒と目が合ってしまうんですよ」

 隠岐高校を3月に卒業した村井克未さん(18)は吹奏楽部のOBとして、港でトランペットを吹いた。4月から自身も進学のため島外に出る。だが、この日は見送る側として、先生に、感謝の気持ちを込めて演奏でエールを送った。

 岸を離れると「ボーッ」と汽笛が鳴った。フェリーは島根県の七類港に向って進んでいく。

 「多くの教え子たちが見送りに来てくれ、港に着いてから船が出るまで1秒1秒が貴重な時間でした。名残惜しい気持ちもいっぱいだが、島の子たちから貰ったあったかい心を、本土の子たちにお裾分けできれば」。隠岐高校で物理を教えていた田中志宜さん(33)が船内で話してくれた。

 人生のひとときをともに歩み、今、別の道を踏み出そうとする人々の優しい思いが織りなす光景。港で取材中、思わず温かいものが頬を伝った。にじむファインダーをのぞきながらシャッターを切る。送る側と送られる側、お互いの気持ちをつなぐテープが、海風を受けて虹のように大きく膨らんだ。(彦野公太朗 柿平博文)

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