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【はたらくいきもの】雪原に刻む信頼の轍 そり犬(北海道・遠軽町)

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【はたらくいきもの】雪原に刻む信頼の轍 そり犬(北海道・遠軽町)

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「ハイク(行け)!」。朝日を浴びて雪原を疾走する10頭引きの犬ぞり =北海道遠軽町白滝(恵守乾撮影) 「ハイク(行け)!」。朝日を浴びて雪原を疾走する10頭引きの犬ぞり =北海道遠軽町白滝(恵守乾撮影)
スピードを上げ楽しそうに駆け抜けるそり犬たち =北海道遠軽町白滝(恵守乾撮影)
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スピードを上げ楽しそうに駆け抜けるそり犬たち =北海道遠軽町白滝(恵守乾撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 凍てつく北の大地。一切の無駄を削ぎ落とすような厳しい環境で、ともに生きる人と動物がいる。そこで芽生え、育まれるものは何だろう。植村直己ら冒険家たちの極地探検行でも知られる犬ぞりを引く犬たちとマッシャー(犬ぞり使い)を北海道に訪ねた。(写真報道局 恵守乾)

この日の犬ぞりチームから漏れた犬たちの、悲しいそうな鳴き声が雪原に響いた =北海道遠軽町白滝(恵守乾撮影)
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この日の犬ぞりチームから漏れた犬たちの、悲しいそうな鳴き声が雪原に響いた =北海道遠軽町白滝(恵守乾撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 真冬には気温がマイナス20度を下回る日もある北海道の遠軽町白滝。犬ぞり体験ツアーを運営する「アウトライダー」では、アラスカンハスキーを中心にオオカミ犬など42頭のそり犬が暮らしている。

 カヤック作家で代表の村林秀尚さん(55)は約30年前、そり製作を依頼されたことがきっかけで、犬ぞりと出会った。「興味がわきシベリアンハスキーで始めたが、ピリッとした走りではなかった」

 転機は犬ぞりで南極横断に成功した冒険家の舟津圭三さんから譲り受けた2頭のアラスカンハスキー。一線を退いていたが、アラスカでのレース経験もある実力犬はひと味違った。

「犬に生まれてよかったと思わせるのは人間の役目」。そり犬に愛情を注ぐ村林秀尚さん =北海道遠軽町白滝(恵守乾撮影)
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「犬に生まれてよかったと思わせるのは人間の役目」。そり犬に愛情を注ぐ村林秀尚さん =北海道遠軽町白滝(恵守乾撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 「犬には犬の先生が必要だと分かった。草野球チームにメジャーリーガーが加わったようなもの」。新たなリーダーを手本に、チームは統率が取れた一体感のある走りに変化した。

 大切なのは「チーム」には、犬だけではなく人も含まれているということだ。

 村林さんは、冬の厳しい環境について「言葉が通じなくても、(人と動物が)お互いを必要と感じる場面がある」と説明する。そんなとき、「人と動物が、気持ちのやりとりだけで助け合い、達成感を分かち合える」ことが、犬ぞりの最大の魅力だという。

雪でも素足でへっちゃら。そり犬は驚異の耐寒性を誇る =北海道遠軽町白滝(恵守乾撮影)
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雪でも素足でへっちゃら。そり犬は驚異の耐寒性を誇る =北海道遠軽町白滝(恵守乾撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 昼前の気温はマイナス7度。寒さのなか、片道8キロのコースを犬ぞりで往復する体験に挑戦した。

 出発前から、何度もジャンプし、興奮が抑えきれない様子の犬たち。「早く行こうぜ!」と言わんばかりの吠え声と、選ばれなかった犬たちの嫉妬にも似た鳴き声が雪原に響く。

 「ハイク(行け)!」。号令をかけた瞬間、そりは勢いよく滑り出す。粉雪を巻き上げ軽快に駆ける犬たちの後ろ姿が頼もしい。

凍ったエゾシカの肉に食らいつくそり犬 =北海道遠軽町白滝(恵守乾撮影)
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凍ったエゾシカの肉に食らいつくそり犬 =北海道遠軽町白滝(恵守乾撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 マッシャーは、ただそりに乗っていればよいわけではない。坂道ではそりを降りて雪を蹴り、犬たちとともに乗り越える。休憩の度に抱擁し、ねぎらいの言葉をかけてゴールを目指す。

 頬を刺す冷気と心地よい疲労。その先に、犬との言葉を超えた信頼の手応えが確かに感じられた。



 ■犬ぞり オオカミ犬やアラスカンハスキーと呼ばれる、犬ぞり向けに特化した犬がそりを引く冬の移動手段。そり犬は人懐っこく従順で温和な性格だが、厳しい寒さに強く、1日1~2キロ程度のエサで数十キロもの距離を走る強靱(きょうじん)な体力を兼ね備えている。米アラスカでは州技と呼ばれるほど長距離犬ぞりレースが盛んだ。

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