【はたらくいきもの】嗅覚生かして密輸防げ 大阪税関・麻薬探知犬管理センター
更新 sty1805030001 「ファインド・イット!(さがせ)」
ハンドラー(訓練士)のかけ声が響くと、クリーム色の毛を光らせてラブラドルレトリバーが駆けだした。
大阪税関・麻薬探知犬管理センターが誇る違法薬物発見の切り札「麻薬探知犬」だ。人間の1億倍ともいわれる嗅覚を生かし、空港や港の税関、国際郵便局で、麻薬や覚醒剤など違法に持ち込まれる薬物の発見にあたる。(写真報道局 志儀駒貴)
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探知犬はシェパードやラブラドルレトリバーが一般的で、一人前になるには、麻薬探知犬訓練センター(千葉県成田市)で約4カ月の厳しい訓練と、税関が定める認定試験をクリアしないといけない。
試験をクリアすると全国の9つの税関に併設される麻薬探知犬管理センターに配備される。全国で約130頭が活躍中で、大阪府泉佐野市のセンターには20頭近くが暮らす。
ハンドラー1人につき担当は1頭。訓練や検査はもちろん、朝の排便から毛づくろい、夕方の食事まで、日々一緒に過ごし信頼関係を築いていく。
大勢の来日客でにぎわう関西国際空港は、探知犬の活躍の場でもある。ひっきりなしに到着する荷物を一度に調べるスピードは、高価な麻薬探知機にも引けを取らない。
混雑する空港の手荷物受取所でターンテーブルから次々に引き取られていくスーツケース。人と荷物であふれる場内を、素早く検査していく姿は生き生きとして、どこか楽しそうに見える。
オスのラブラドルレトリバーのユート号(4)を担当する藤野みさきさん(26)は、「犬たちにとっては仕事でなく、きっと遊んでいるつもりです」と話す。
麻薬の入った袋を探し当てるとその場にお座り。ご褒美に「ダミー」と呼ばれるタオルを丸めたおもちゃを与えて一緒に遊ぶ。
探知犬は犬の本能である獲得欲に加え、ハンドラーと遊びたい一心で仕事に励むという。
主に関空で働くユート号は、好奇心旺盛で何事も楽しむ性格。訓練で力を使い果たして、本番の検査では仕事に熱が入らない、なんて失敗談もあるなど、なかなか憎めないやつ。
探知犬の所属部署を聞くと「あくまで検査機器として配備されているので、所属はありません」とのこと。しかし藤野さんにとってユート号は単なる「装置」ではなく「互いの足りない部分をフォローし合う相棒」と、笑顔を見せる。
ゴールデンウイークを迎え、関空はインバウンドや帰省客で混雑が予想され探知犬も大活躍。空港で働く姿を見かけたら手荷物検査にご協力を。
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【麻薬探知犬】 昭和54年、増大する麻薬などの違法薬物の密輸入を防止する目的で導入された。その他にも爆発物探知犬や銃器探知犬が配備され、水際での密輸を防いでいる。