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【防災最前線】命がけ 白い魔物との闘い 長野県警山岳遭難救助隊

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【防災最前線】命がけ 白い魔物との闘い 長野県警山岳遭難救助隊

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雪に埋められた筆者を救助する長野県山岳遭難救助隊。雪の恐ろしさを実感するとともに、隊員が頼もしくみえた =長野県信濃町(宮沢宗士郎撮影) 雪に埋められた筆者を救助する長野県山岳遭難救助隊。雪の恐ろしさを実感するとともに、隊員が頼もしくみえた =長野県信濃町(宮沢宗士郎撮影)
救助した遭難者を手際よく保温シートでくるみ低体温症を防ぐ =長野県信濃町(宮沢宗士郎)
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救助した遭難者を手際よく保温シートでくるみ低体温症を防ぐ =長野県信濃町(宮沢宗士郎)フルスクリーンで見る 閉じる

 「雪の中に埋まってみますか?」

 長野県警山岳遭難救助隊の岸本俊朗統括班長(39)の問いかけに、遭難者を体感できると軽い気持ちでOKしたのが失敗だった。

 「助けてください!」

 雪の中から叫ぶ声は、どこにも届かない。体を覆うのは水分を含んだ湿雪。普通なら重さなど感じることのない雪が鎧(よろい)のように体にまとわりつく。身動きもできず、声を限りに助けを呼ぶしかない。視界は闇に包まれ、恐怖でパニックをおこしそうだ。

 「やめとけばよかった」と後悔していると「ザクッ、ザクッ」という音とともに視界が開け、スコップを持つ救助隊が姿をあらわした。

 わずか数分の雪中だったが、雪山の怖さを思い知らされた。

ピッケルを使い崖を登る隊員。訓練といえど気が休まるときはない =長野市(宮沢宗士郎撮影)
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ピッケルを使い崖を登る隊員。訓練といえど気が休まるときはない =長野市(宮沢宗士郎撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 山岳遭難救助隊は隊長以下、航空隊員や機動隊員ら35人で構成され、遭難者の救助にあたる。

 昭和35年に結成された「山岳パトロール隊」が前身。以来、およそ7000人の登山者の命を救ってきた。

 櫛引(くしびき)知弘隊長(43)は「入念な訓練のもと、隊員たちの意思を統一し、技術や道具はベストなものが受け継がれています。長い歴史の中で殉職者はひとりもいません」と胸を張る。

背中に要救助者を背負い険しい岩場を登る =長野市(宮沢宗士郎撮影)
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背中に要救助者を背負い険しい岩場を登る =長野市(宮沢宗士郎撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 1月中旬、長野市郊外の「物見(ものみ)の岩」で滑落救助訓練を取材した。崖から落ち宙づりになった人を救助する設定。要救助者を背負った隊員を、ロープで崖の上に引き上げていく。

 一刻を争う中、機材選択の不備などがあり途中で作業が滞った。「誰も気づかないのか!」、チームワークの乱れを察した岸本統括班長の檄(げき)が飛ぶ。救助方法を再検討して、任務を完了させたが、隊員の表情には悔しさが浮かんでいた。

 翌日は長野市と信濃町にまたがる黒姫山で雪崩捜索・救助訓練だ。ビーコンと呼ばれる位置特定装置を使い、雪に埋もれた遭難者を捜しだす。この時期には珍しい雨の中、湿った雪を掘り起こして救助、搬送を終えた。

垂直の壁を素手で登る。隊員は登山家顔負けの技術を持つ =長野市(宮沢宗士郎)
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垂直の壁を素手で登る。隊員は登山家顔負けの技術を持つ =長野市(宮沢宗士郎)フルスクリーンで見る 閉じる

 入山者の過信や準備不足などで、遭難者は年々増え続ける。櫛引隊長は「われわれは命がけで遭難者の救出に尽力しているが、自分の技量と体力を熟考し、万全な装備のもとで山に臨んでほしい」と話す。

 生々しい“生き埋め”体験の直後だっただけに、隊長の言葉が身にしみた。(写真報道局 宮沢宗士郎)

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