産経フォト

名物看板猫が〝卒業〟 そば屋の「ピンク」   

生き物

名物看板猫が〝卒業〟 そば屋の「ピンク」   

更新 sty1703300007
そば屋「やぶ」のピンク。3月をもって看板猫を“卒業”した。今後はのんびりと自宅警備の業務に就くという=荒川区町屋(尾崎修二撮影) そば屋「やぶ」のピンク。3月をもって看板猫を“卒業”した。今後はのんびりと自宅警備の業務に就くという=荒川区町屋(尾崎修二撮影)
2016年の取材時、ショーケースでくつろぐ看板猫のピンク。お店の休憩時間限定の光景だった=荒川区町屋(尾崎修二撮影)
画像を拡大する
2016年の取材時、ショーケースでくつろぐ看板猫のピンク。お店の休憩時間限定の光景だった=荒川区町屋(尾崎修二撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 桜前線の知らせが届き始めた3月末、商店街の名物看板猫が〝卒業〟した。
 一昨年9月に、小欄にて紹介させて頂いた「ピンク」が看板猫を務めるそば屋「やぶ」は、野平啓一さん・和子さん夫妻と啓一さんの弟・仁さんの3人で切り盛りする地元で人気の店だ。昭和38年5月に父親が創業、約54年の歴史を当地で刻んできたが、建物の老朽化などの理由で移転することとなった。
 新たな店舗でもこれまで通り…と思っていたがテナントの契約上叶わず、ピンクはひとまず〝自宅警備猫〟の業務に就くこととなった。

店の休憩時間に、ショーケースの中から「人間観察」を楽しむ?看板猫のピンク=荒川区町屋(尾崎修二撮影)
画像を拡大する
店の休憩時間に、ショーケースの中から「人間観察」を楽しむ?看板猫のピンク=荒川区町屋(尾崎修二撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 そば屋のショーケースに鎮座する看板猫として、近隣住民はもちろん、全国各地、さらには海外にまで、大勢のファンに愛されてきたピンク。彼がここまで有名になったきっかけのひとつに、一人の男性との出会いがあった。フリーランスの写真家として活躍するケニア・ドイさんがその人だ。
 荒川区在住のドイさんが、6年ほど前のある日、ショーケースの中に鎮座するピンクを見た時に「これは!」と思い、大急ぎで仕事用のカメラを取りに自宅へ戻ったのだそう。
 以後、ドイさんの写真をきっかけにテレビや雑誌の取材も数多く舞い込んだ。

ショーケース内でくつろぐ看板猫ピンクと(左から)野平和子さん、啓一さん、仁さん=荒川区町屋(尾崎修二撮影)
画像を拡大する
ショーケース内でくつろぐ看板猫ピンクと(左から)野平和子さん、啓一さん、仁さん=荒川区町屋(尾崎修二撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 小欄「肉球マニアに捧ぐ」もその中の一件だ。ところが生き物が相手の取材ゆえ、思うような写真がすぐに撮れるわけではなかった。おとなしいピンクだが、本人(猫)の意にそぐわないポーズを強いても、決して良い写真にはならない。何度となく通い詰めてピンクにとっての「一見さん」を脱し、どうにか納得のいくカットの撮影に成功した時には、ピンクがいとおしくてたまらなくなっている自分に気付いた。

そば屋「やぶ」のピンク。3月をもって看板猫を“卒業”した。今後はのんびりと自宅警備の業務に就くという=荒川区町屋(尾崎修二撮影)
画像を拡大する
そば屋「やぶ」のピンク。3月をもって看板猫を“卒業”した。今後はのんびりと自宅警備の業務に就くという=荒川区町屋(尾崎修二撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 メディアでの露出にともない、地元で親しまれてきたそば屋には、個性的な看板猫に一目会いたいと遠方から通うファンも増え、それがSNSで拡散し、ピンクの人気は国境を越えた。
 そんなスター猫の卒業を、店からのメールで知らされた時、一抹の寂しさを感じはしたものの、推定11歳になるピンクの負担も考えて、環境の変化を最小限にとどめる意味でも正しい判断なのだと腑に落ちた。

看板猫ピンクを中心に笑顔を見せる(左から)野平仁さん、和子さん、啓一さん=荒川区町屋(尾崎修二撮影)
画像を拡大する
看板猫ピンクを中心に笑顔を見せる(左から)野平仁さん、和子さん、啓一さん=荒川区町屋(尾崎修二撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 移転前最後の営業となった3月25・26日の二日間は全ての出前を断って、ピンクの〝最後の看板猫姿(仮)〟を見ようと集まった常連やファンに対応した。
 ご主人に有給休暇をとらせて夫婦で来た女性や、開店から閉店まで一日中いた人など、二日間とも店内に空きができる事は無かった。野平さん一家もピンクの人気に改めて驚かされたという。

看板猫ピンクを中心に笑顔を見せる(左から)野平和子さん、仁さん、啓一さん=荒川区町屋(尾崎修二撮影)
画像を拡大する
看板猫ピンクを中心に笑顔を見せる(左から)野平和子さん、仁さん、啓一さん=荒川区町屋(尾崎修二撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 4月中に移転を済ませ、5月上旬のリニューアルオープンを目指す「やぶ」。今後については「詳細はまだあまり考えてないんですが、『ピンクの気配』を皆さんに感じて頂ける方法を模索しています」と仁さん。「お客さんが撮影したこれまでのピンクの写真を飾るのもいいかも」など、早くもアイデアを語る。
 そう、ピンクは卒業するけれども、地元で親しまれてきた老舗の伝統はこれまでと変わらない。「手打ちそば」はもちろん、そば屋ならではの「丼物」もオススメ。看板猫の近況伺いも兼ねて、町屋に足を運んでみてはいかがだろう?
 猫がつないだ人と人の絆が、これからもずっと続くと信じている私自身、5月が楽しみで仕方がない。(写真報道局 尾崎修二)

☆昨年のピンクの記事→【ガラス越しに〝人間観察〟】

→【肉球マニアに捧ぐ】これまでの記事←

▼こちらの記事は英文でもお読み頂けます(JAPAN Forward)

スゴい!もっと見る

瞬間ランキングもっと見る

話題のランキング