火災から2年半 大阪・十三の飲食店街が復活
更新 sty1609300010平成26年3月に大阪市淀川区の阪急十三駅前の飲食店街「しょんべん横丁」で、39店舗が全焼した火災から2年半あまり。跡地では店舗の再建が進み、10月1日には10店舗がオープンする。戦後の闇市からスタートし、仕事帰りのサラリーマンが狭い店内で身を寄せ合って酒を楽しんだ昭和風情を残す酒場は、クリーム色の壁の建物に生まれ変わった。「外観は変わったけど、あの頃の十三を目指してまたがんばります」と店主らは意気込んでいる。
駅西口から通じる「しょんべん横丁」と、1本西の「なかすじ」の二つの路地に挟まれた一帯に、建設中を含め、真新しい23棟の建物が並ぶ。路地をはさんだ反対側で焼失を免れ、昭和の風情をなお色濃く残す店舗群とは対照的だ。復興にあたり、横丁東側の私道は2・5メートルから4メートルに拡張された。10店舗のうち、以前も営業していたのは2店で8店は新規開業する。今後も段階的に営業店舗は増えていくとみられ、戻ってくる店もあるという。
「この店をおじさんにも見せたかったな」。居酒屋「十三屋大光」のオーナー、大野修史さん(43)は開店準備をしていた手を止め、つぶやいた。「十三屋」は、修史さんの父、滋さんが約50年前に創業。約25年前に滋さんが亡くなってからは、弟の浩さんがのれんを守ってきた。火災にショックを受けた浩さんは、「とにかく十三を離れるのは嫌」と言い、翌月には駅東口に仮店舗をオープン。「一日でも早くしょんべん横丁に帰りたい」と話していたという。しかし、復興の最中の昨年4月、浩さんに末期の肺がんが見つかり翌月他界した。「この場所に帰ってくることができず、おじさんも悔しかったと思う」。以前、滋さんが経営していた居酒屋「大光」を店名に加えて“3代目”となった大野さん。「父とおじさんが残してくれた物をこれからも大切に守っていく」と宣言する。
火災発生から2年半の間には、土地を所有する大阪市、土地の借地権者、店舗側と三者の交渉が難航しことから、新天地を求めた店舗も少なくなかった。
居酒屋「大瓶小町十三本店」を経営する丸木隆弘さん(47)はこの間、大阪市内に4店舗をオープンしたが、さらに新店を開き、十三に戻ることを選択した。「『戻って来る必要あんの?』と聞かれるともあるけど、十三の街が好きだから最初から帰ると決めていた」と笑顔を見せる。
復興に携わった一般社団法人「J・S・Y」の吉川俊哉代表理事(56)は「やっとここまでたどり着くことができた。戦後から歴史を積み重ねてきたしょんべん横丁にすぐには戻らないが、これから時間をかけて歴史を作っていけばいい」と話した。