宇宙の重力波を初検出、米チームが確認 アインシュタインが100年前に予言
更新 sty1602120003宇宙から届く「重力波」を世界で初めて検出したと米国の研究チームが11日(日本時間12日)、発表した。アインシュタインが100年前に存在を予言しながら未確認だった現象で、新たな天文学や物理学に道を開く歴史的な発見となった。今後の検証で正しさが揺るがなければ、ノーベル賞の受賞は確実だ。
検出したのはカリフォルニア工科大とマサチューセッツ工科大などの共同研究チーム。米国の2カ所に設置した大型観測装置「LIGO」(ライゴ)の昨年9月以降のデータを解析。同月14日に重力波をキャッチしたことを確認した。
チームは会見で「重力波を検出した。われわれはやった」と喜びを表した。
重力波は重い天体同士が合体するなど激しく動いた際、その重力の影響で周囲の空間にゆがみが生じ、さざ波のように遠くまでゆがみが伝わっていく現象。アインシュタインが1916年、一般相対性理論でその存在を示したが、地球に届く空間のゆがみは極めて微弱なため検出が難しく、物理学上の大きな課題になっていた。
チームは一辺の長さが4キロに及ぶL字形のLIGOで空間のゆがみを観測。太陽と比べ質量が29倍と36倍のブラックホール同士が13億年前に合体し、太陽質量の3倍に相当するエネルギーが重力波に変換されたのをとらえた。信頼度は99.999999%と非常に高い。研究は欧州チームも共同で行った。
重力波の観測装置を望遠鏡として使えば、光さえのみ込んでしまうブラックホールなど、光や電波では見えない天体を直接とらえることができる。また、重力波は減衰せずに遠くまで伝わる性質があるため、はるか遠くを探ることで宇宙誕生の謎に迫れると期待されており、宇宙の研究に飛躍的な進展をもたらす。
重力波の検出は1990年代以降、日米欧が一番乗りを目指して激しく競ってきた。米国は装置の感度を従来の数倍に高める工事を行い、昨年9月から5カ月間、観測を再開したばかりだった。関係者によると、この期間中に重力波をとらえられる確率は10%と低かったという。
日本は東大宇宙線研究所が昨年11月、岐阜県飛騨市神岡町に大型観測装置「かぐら」を建設したが、米国と同水準の高感度で観測を始めるのは早くても約1年後の予定で、一歩出遅れた形となった。