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豊郷小旧校舎に“聖地巡礼” 滋賀県豊郷町

遺跡・建造物

豊郷小旧校舎に“聖地巡礼” 滋賀県豊郷町

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酬徳記念館内に並べられた、ファンから寄贈されたキャラクター使用モデルの楽器。中には琴吹紬がアニメオープニングで使用していたショルダーキーボード「KORG RK-100」(写真左)などすでに生産中止となっており入手困難なものも =滋賀県豊郷町(古厩正樹撮影) 酬徳記念館内に並べられた、ファンから寄贈されたキャラクター使用モデルの楽器。中には琴吹紬がアニメオープニングで使用していたショルダーキーボード「KORG RK-100」(写真左)などすでに生産中止となっており入手困難なものも =滋賀県豊郷町(古厩正樹撮影)
旧豊郷小学校の正面玄関 =滋賀県豊郷町(古厩正樹撮影)
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旧豊郷小学校の正面玄関 =滋賀県豊郷町(古厩正樹撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 青空を背景に鎮座する“白亜の殿堂”の前に立つと思わず感嘆の声を上げてしまった。玄関の前の噴水。白壁に規則正しく並んだ窓枠。左右対称に広がる校舎。テレビで何度も見てきた姿とうりふたつだ。

 滋賀県豊郷町の「豊郷小学校旧校舎群」。製作サイドから公式なアナウンスはないが、軽音部に所属する女子高校生の日常を描いたアニメ「けいおん!」(第1期2009年4月から6月、第2期2010年4月~9月)の主人公らが通う高校に酷似しており、ファンの間ではモデルになった場所、いわゆる“聖地”とされている。

豊郷小学校旧校舎群の酬徳記念館(旧図書館)=滋賀県豊郷町(古厩正樹撮影)
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豊郷小学校旧校舎群の酬徳記念館(旧図書館)=滋賀県豊郷町(古厩正樹撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 1937年(昭和12年)豊郷尋常高等小学校の校舎として完成し2001(平成13)年まで使用され幾多の児童の成長を見守った。当時60万円(現在の貨幣価値で数十億円に相当)という建設費用は、同校出身で丸紅の専務であった古川鉄治郎が「郷土に対する第1の貢献は初等教育の充実」と考え、私財の3分の2を寄付し、これに充てられた。昭和初期の建物ながら現代的な設計は日本各地に名建築を残したウィリアム・メレル・ヴォーリズによるものだ。校舎の左側にある酬徳記念図書館、右側にある講堂を合わせて「豊郷小学校旧校舎群」と呼ばれている。

「部室」として登場する3階の会議室。アニメの話数が進むにつれ、それにならった小道具がファンによって次々追加されていった =滋賀県豊郷町(古厩正樹撮影)
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「部室」として登場する3階の会議室。アニメの話数が進むにつれ、それにならった小道具がファンによって次々追加されていった =滋賀県豊郷町(古厩正樹撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 1995年の阪神淡路大震災後、国の耐震基準が厳格化し、一時は「旧校舎を解体し新校舎を建設」との方針も示されたが、地元町民の保存運動もあり、新校舎を新築する一方で旧校舎の保存が決まった。2013年には3棟のそれぞれが国の登録有形文化財の指定を受けた。現在、通常非公開とされている貴賓室や理科室、町教区委員会など町が利用している区域を除き、校舎群は一般に無料で公開されている。

「部室」として登場する3階の会議室に置かれたラジカセ。セットされているのは「放課後ティータイム」のカセットテープ。芸が細かい… =滋賀県豊郷町(古厩正樹撮影)
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「部室」として登場する3階の会議室に置かれたラジカセ。セットされているのは「放課後ティータイム」のカセットテープ。芸が細かい… =滋賀県豊郷町(古厩正樹撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 校舎内を歩けば、登場人物がライブを行った講堂、階段にあるウサギとカメのオブジェ。まるで「けいおん!」の世界に迷い込んだ錯覚に襲われる。

 圧巻は校舎3階の会議室。そこは、まさに「軽音部の部室」そのものだ。机が5つ並び、その上にはティーセット。皿の上には作り物のケーキまで並ぶ。机の中には登場人物の進路希望調査票や、講堂使用届などが入っている。ベンチの上にはレトロなラジカセ。セットされているカセットテープには登場人物のバンド名「放課後ティータイム」と入っている。全てファンが寄贈したり、製作したものだ。

「改修工事が終わった直後は何もない部屋だったんですけどね」と当時を懐かしむのは豊郷町産業振興課の清水純一郎さん。2009年、旧校舎群の全面改修工事が完了したのが「けいおん!」の放映が始まった直後だった。

アニメ劇中で学園祭や新入生歓迎イベントで様々なライブが行われた「講堂」 =滋賀県豊郷町(古厩正樹撮影)
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アニメ劇中で学園祭や新入生歓迎イベントで様々なライブが行われた「講堂」 =滋賀県豊郷町(古厩正樹撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 間もなくアニメと同じ映像を実写で撮りたい、とコスプレしたファンが校舎を訪れるようになった。「そういうことなら(アニメに出てくる通り)机ぐらいあった方がいいだろう」と清水さんは、近くの中学校から余っていた机と椅子を融通してもらい、会議室に置いた。そこから会議室の“部室化”が本格的に始まった。

「部室」として登場する3階会議室 机の中には主人公・平沢唯の進路調査票が… =滋賀県豊郷町(古厩正樹撮影)
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「部室」として登場する3階会議室 机の中には主人公・平沢唯の進路調査票が… =滋賀県豊郷町(古厩正樹撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 いつの間にか机の上にティーセットが置かれ、登場人物の上履きやサインが並び…。新しい小道具が作中に出てくれば時を置かずに再現された。他の自治体職員には「よくそのままにしておきますね」と清水さんは言われるが「危険物を置いていくわけでも人に迷惑もかけているわけでもない。何より彼らの楽しみを奪うことになる。落とし物をちょっとそのままにしておく感じ」と笑顔を見せる。

旧校舎群の周辺に設置されたキャラクターを模した「とび出し坊や」。写真は平沢唯 =滋賀県豊郷町(古厩正樹撮影)
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旧校舎群の周辺に設置されたキャラクターを模した「とび出し坊や」。写真は平沢唯 =滋賀県豊郷町(古厩正樹撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 「けいおん!」の部室が“実在”する-。アニメ放映時期には、全国から年間5万人が訪れた。2010年9月末でテレビアニメシリーズは終了し、数は減ったもののいまだに“巡礼者”は後を絶たない。清水さんは「小さな町だが、今インターネットで『豊郷』と検索をかければ何十万件とヒットする。ファンが紹介してくれたおかげだ」と感謝している。

 「地元の子供たちに教育を」。そんな思いで建設されてから70年余り。「豊郷小学校旧後者群」は、地元の人々の誇りとして、アニメファンの“聖地”として愛され続けている。(写真報道局 古厩正樹)

■360°パノラマで見る「豊郷小旧校舎」■

80年前の豊郷小建設映像復元 19日に上映会

 滋賀県豊郷町は、約80年前に旧豊郷小学校校舎の建設風景などを撮影した16ミリフィルムを復元した。校舎の建設当時の様子や町の風景をうかがい知ることができる貴重な資料として注目される。町は初の上映会を12月19日午後6時から同小の旧講堂で開く。

 フィルムは約23分。校舎の建設作業風景や昭和12年の竣工式の様子などが映っている。

 竣工式では、校舎を設計した米国出身の建築家、ウィリアム・メレル・ヴォーリズに、校舎を寄贈した実業家の古川鉄治郎が感謝状を贈るシーンが記録されている。また、校舎内の授業風景などもある。

 フィルムは町職員が昨年夏に旧校舎の理科準備室で偶然発見し、傷みが激しいため町が立命館大映像学部を通じて東京の専門業者に復元を依頼していた。復元費用は約200万円。

 旧校舎はコンクリート製の箱形ビルで、国登録有形文化財。当時としては珍しい鉄筋コンクリート3階建てで、最先端の設備を備え「東洋一の小学校」と呼ばれた。

 耐震性に問題があるとして解体計画が持ち上がったこともあったが、町民の反対運動などで保存が決定。近年は人気アニメ「けいおん!」に登場する学校のモデルとして注目を集め、高校生バンドによる「とよさと軽音楽甲子園」(町商工会主催)が毎年開かれている。毎週日曜日には町商工会有志が喫茶店も開く。

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